(12) 妖精王のもとへ
ランがアイスベアを一掃し、討伐隊のメンバーたちと笑いあっているところで映像は終わった。
「こんな感じで他の世界の様子も見れるんだよー」
スマホをしまったファタールはにこやかに話し始めた。
「なるほど……それで私達の様子を?」
「そうだよ。あっ! そうだ、これみんなも食べて。ルキアにはもう食べさせたけど」
「「「これは……?」」」
「妖精界に体が適応する飴だよ。君たちの服にも同じ効果はあるみたいだけど、それだけだと不十分だからね」
ファタールが出した缶の中に、星空を閉じ込めたような飴がいくつか入っていた。……私が食べたのはこれか。
「これって毒じゃないわよね?」
「ちょっとルーナ失礼じゃない!」
「逆にリリィと兄さんがすぐに信頼しすぎじゃない?」
そうルーナが不信感を表すと、リリィと聖は伸ばしかけていた手を引っ込めた。それを見たファタールはニヤリと笑って言った。
「へぇー。すぐに信頼しないことは良いことだね」
「えっ!? ちょっと! 私はもう食べちゃったんだけど!?」
「……ぷっ! あはは。大丈夫だよ毒じゃないから。イリオス村のポーションから作ってある飴だよ」
思わず不安を全面に出すと、ファタールは楽しそうにネタバラシをしてくれた。
ポーションならアクアの両親が作ったものかな。それなら大丈夫だな。確かにちょっと馴染んだ味がしたもん。
「なんだ……安心した。みんなも食べて大丈夫だよ。この人イタズラ好きなだけの変な人だから。」
「あれ? 僕、そんなにルキアにイタズラしたかな?」
「……確かに? でもなんかそんな気がするのよね。」
ファタールとは出会って短いが、人をからかうのが好きな印象がある。オババと話していたときに思ったのかな。……いやそれよりもっと前になにか……?
「……覚えていることもあるのかな」
「ん? ファタールなんか言った?」
「いいや何も。それよりみんな食べたかい?」
「「「食べた」」」
「よしっ! それじゃエウロのところへ行こうか。」
小さな声でファタールが何か言ったような気がしたが、聞き取れなかった。ファタールと妖精たちが先導するかのようにエウロのもとへ歩き始めた。
リリィとルーナはファタールに何か話を聞いている。あれ? 聖は……?
「ルキア」
「あぁ、聖! 隣にいたのね。行かないの?」
「いや行くけどちょっと話しながら行かない?」
「いいね!」
「……あのさ、ファタールさんと仲良いの?」
「仲……良いのかな? いや会ったのは2回目ぐらいだし……仲良く見えた?」
「うん」
「うーん、子供扱いされてる感じだけどね。もしかして気になる? なんてね」
「気になるって言ったら?」
聖が流し目でそう言った。……なんというか色気がすごい。これはもう聖じゃない。ノックスだ!
「えっ! えっ!?」
「顔真っ赤だね笑」
「あー! からかったわね!」
その後は他愛もない話をしながら、ファタールたちのあとを追った。
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「これは……」
私達が妖精王エウロのもとへ到着すると、そこは以前とは異なり禍々しい空気で満ちていた。
白色の魔力で満たされていた空間が紫色の魔力で満たされるようになり、まるでシャドーの中にいるかのようだ。息苦しい。この魔力はいったいどこから?
ソレイユたちは私達よりも苦しいのか、部屋の出口付近で固まっている。
妖精王の部屋の中を見渡すと、大樹からより濃い紫色の魔力が流れ出していることに気づいた。
「みんな! あそこ! 紫色の魔力が出てきてる!」
「ほんとだ! でも……近づけそうにない」
「それなら……ルキア行くよ」
ファタールが私の手を取ると、私とファタールの周りに白いバブルのようなものが形成された。その中にいると先ほどまでとは異なり、息がしやすくなった。
「ファタール、これは?」
「一時的なガードってところかな。あんまり持たないから早く行こう」
「わかった!」
バブル状態のまま、大樹へと近づく。紫色の魔力が出てくる場所に近づいているためか、バブルへの圧力が強くなっていることがわかる。
びしびしと音を立てながら、バブルにヒビが入っていく。……お願い持って!
「まさかここまでとは……。」
「もうすぐ発生源らへんね!」
ようやく発生源へと到着した。
「なにこれ。根っこに結晶みたいな……」
「それがこの魔力の発生源かな。……ルキア壊せるかい? 僕はこのバブルを維持するのに力を使っているから」
「わかった! フレイム!」
禍々しい結晶へと手を近づけ、至近距離でフレイムを当てる。
シャドーの核などと似たようなものかと思ったが、想像以上に浄化されない。
「ルキア、浄化されない?」
「なかなかされないの!」
「それなら……」
「これは……!」
「バブルが維持できるギリギリの、魔力をわけたよ。頼む!」
「うん! がんばる!」
繋いだ手からファタールの魔力が流れ込んできたのがわかる。
より威力の増したフレイムを当てる。
禍々しい結晶が紫色の魔力を発生させるのをやめた。
「と、とまったー! けど浄化はされてない……」
「ルキア、いったん下がろう」
ファタールの助言にそって、リリィたちのところまで下がった。
「ルキアどうだった?」
「とりあえずあの魔力の発生源は止めてきた!」
「ナイス!」
「それでこの充満した紫色の魔力はどうする?」
「そんなものが充満してるの?確かに息苦しいとは思うけど」
どうやらルーナにはこの充満した闇の魔力は見えていないようだ。
「うん。視界が悪いよ。ルーナと聖からはどう見えてるの?」
「俺は前に操ってた影響か魔力は見えてるよ」
「あ、そうなんだ!」
「私は特に視界に問題はないわ。紫色の木と一体化してる意識がない女性が見えるだけよ。あれが妖精王?」
「うん。たぶんそう。……意識がないのか。」
「とりあえずここの浄化だけでも試してみよう。」
ファタールの一言で浄化に取りかかることにした。でもどうすれば……。フレイムで燃やせばいいかな。前も紫色の魔力だけを燃やすことができたし……
「フレ……」
「ストップ!」
「え? なにルーナ。」
「なにじゃないわよ! なんで燃やそうとするわけ!?」
「あぁ、心配いらないよ! 紫色の魔力だけを燃やすことができるの」
「そうなの? ……でもあれだけ一体化してたら一緒に燃えちゃうんじゃない? 木だし……?」
「……確かに」
ルーナに言われ、頭の中にいつも木を燃やしてしまっている場面が浮かんできた。もしかしたら大丈夫かもしれないが、下手なことはしない方がいいか。
「じゃあどうする?」
「え、私に聞かれても。」
「それなら水は?」
「「水?」」
「木は水を吸収するでしょう?そこに光の魔力を込めれば……」
「なるほど! ナイスアイデアよ、リリィ!」
私は水魔法の準備を始めた。その私にリリィはヒールをかけてくれている。
さぁ浄化だ。




