(10) 異世界人
自分のスマホを見ていると、皆の視線が体に刺さった。
「えっと? なに?」
「ルキアに連絡してくる人なんているの?」
「え、さすがにいるだろ」
「あぁ、兄さんはルキアが異世界人だって知らなかったっけ」
「異世界人?」
「それよりルキア、電話出たら?」
「あ、うん!」
スマホの画面をタッチし、通話中へと切り替えた。耳にスマホを押し当てると、ファタールの声が聞こえてきた。
視線の先ではルーナとリリィがなにか聖に話しているのが見える。おおかた、私の事情を説明してくれているのだろう。
「あ、繋がった。もしもしルキアー?」
「ファタール? どうしたんですか?」
「いやちょっと地球の様子が気になってね。」
「え?」
「というかルキアに何か起きたのかって探りに。」
「どういうことですか?」
ファタールによると、元の世界には意識を失った状態の私の体がずっとあったらしい。何日間はそのままだったらしいが、いつからかときどき私の体が透けるようになってきたようだ。
そして今さっき完全に体が消えてしまったため、連絡してきたそうだ。
「え! 元の世界の私の体が消えたの!?」
あまりの驚きに大声を出すと、視界の先にいた皆が何事かと視線を向けてきた。けれど答えられる余裕もなく、ファタールと会話する。
「うん。ルキアは変な感じとかない?」
「感じないです」
「うーん、そっか。じゃあ変わったこととかはない?」
「変わったこと?」
「うん。どんな些細なことでもいいんだ」
変わったことと聞かれても特に……。
私のことじゃなければ、ソレイユたちの魔法が失敗するようになったことがあるんだけど。
あれ? でもそういえば前に、ソレイユが私をこの世界に呼んだのは妖精王エウロの力だって言ってたっけ。……もしかして関係がある?
「関係ないかもしれないんですけど……魔法少女のサポートをしてくれてる妖精?たちの魔法がおかしくなってるみたいで」
「なるほど?」
「そう、それで私を地球に呼ぶ力も妖精の力だから……」
「そっか。……エウロになにかあったのかもな」
「私達、これから妖精界に行こうとしてたところだったんです」
「わかった。じゃあ僕も妖精界に向かうよ」
「え?」
「じゃあまた!」
「ちょっ!……切れたし」
今の口ぶりだとファタールも妖精界に来るのだろうか。電話を終え、思わず考え込んでいると、みんなの視線を感じた。あ、もしかして私待ちかな。
「ごめんごめん! お待たせ!」
「ルキア、誰からなの?」
「えっと……たぶん私の世界の人?」
「たぶん?」
「うーん、一応会ったのは私の世界だけど、あんまりよくわからない人なんだよね」
「へぇー」
「まぁ、本人に聞いてみたら?」
「「「え?」」」
みんなはファタールについて聞きたいようだったが、私もよくわかっていない人(たぶん人間だよね?)だから答えられることはほとんどない。
とりあえず妖精界にいけば色々とわかるのでは?
みんなに妖精界に行こうと呼びかけた。理由を説明するとみんなノリノリで妖精界に行く準備をしだした。
「そんなに気になる?」
「だって違う世界の人だよ! 気になるじゃん。」
「え? 私も違う世界の人なんだけど……」
「いやルキアはなんか地球に慣れてない? 俺はルキアは地球人だと思ってたし」
「あー、結構長くいるからかなぁ?」
「最初にルキアが家電とか見たときは面白かったなー」
「「えー!いいな!」」
ルーナと聖がリリィに話をねだっている。……恥ずかしい話ばかりだしやめてほしい。
「ソレイユ! もう行こう!」
「え! いいの?」
「いいよ! みんな行くよ!」
「「「はーい」」」
このままだとリリィに色々とバラされそうなため、ソレイユをせかして早く飛ぶことにした。
みんな素直に返事をしたが、なんだか結局色々バレそうだ。
それぞれがついている妖精たちの手を握る。聖はリュンヌの手をルーナと共に握っている。
ちなみに聖は魔法少女じゃないため、精霊界に行くと体への負担が大きいのではと心配していたのだが……。あのノックスの服が魔法少女の服と同じ効果のようなものがあるらしい。そのためノックスの服のままだ。
せっかく私服を持ってきたのに着替えることができなかったと、聖は残念そうだった。どうやらノックスの服装は恥ずかしいらしい。
顔やスタイルが良いため変には思えないが、趣味じゃないそうだ。
「じゃ、みんな行っくよー! しっかり掴んでてね!」
ソレイユの声で、目の前の景色が変わっていく。
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気がつくと妖精界に着いていた。相変わらず綺麗な場所だ。
「ここが……?」
「そう。妖精界だよ」
「へぇー。綺麗な場所だな。だからこそ怖い場所な気もするけど」
ここが始めてのルーナと聖は物珍しそうに周りを眺めている。
それにしても……まだファタールはいないようだ。キョロキョロと辺りを見回したけれど、他に人の気配はしない。
とりあえずエウロの方へと向かおうと思い、ソレイユをはじめとした妖精たちに声をかけようと視線を向けた。
ソレイユ、シエル、リュンヌは集まって、なぜか険しい顔をしている。不思議に思い、近づいて声をかけた。
「3人ともどうしたの?」
「あ、ルキア見て」
ソレイユが示した場所には白銀の木があるが、その一部が紫色に変色していた。
「これって……エウロのところにあった大樹と同じ変色の仕方?」
「たぶん……」
「おや、だいぶまずい状況みたいだね?」
この場にいなかった人物の声が背後からして、勢いよく振り返った。
「ファタール!」
「やぁルキア。ごめんね、遅れちゃったかな?」
いつの間にかファタールが立っていた。




