(9) 生まれるのはいったい何か
場面は少し戻り、雨宮さんと別れた私達一行の森での話。
森へと入った私達は、卵の様子を見に行くことにした。理由としては、私とルーナとソレイユ、リュンヌは卵の存在を確認したが、リリィたちはまだ見ていないということだったので。
「本当にドラゴンが入るぐらいの卵があったんだよー!」
「へぇー! 何が生まれるんだろう。」
「何が生まれるかはある程度予想できてるわ。そして私の考えだとこれは人工的に生み出された卵というのが濃厚よ」
「リュンヌ、どうしてそう思うの?」
「もし仮に自然に生まれたものだとしたら、あの卵を生み出せるほどの大きさの母体がいないと変だもの」
「あー、確かに別にそんな大きな生物の気配はないね。」
「……まぁ隠れてるだけかもしれないですね」
「シエル、ボソッと言うの怖いって」
卵についての推測を立てながら、卵があった場所へと向かう。私は気絶していたので、施設から卵への道順を覚えてない。そのためルーナとリュンヌに続くように皆で歩いていった。
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「ほんとに……大きな卵……」
「え、リリィ信じてなかったの!?」
「いや信じてたけど、ルキアが大げさに言ってるのかなぁーって」
「そんな……!」
「あぁ! ほんとに信じてないわけじゃないんだって!」
別にそこまでショックを受けたわけじゃないが、リリィが慌てているのが面白くて演技してしまう。
まぁルーナやリュンヌにはバレているようで、呆れた視線を体に感じる。しばらく楽しんでいたが、さすがにしつこすぎるかと思い、話を変えた。
「演技だから安心して! それよりこの卵、本当になんだろう。」
「僕の予想は……シャドーの卵」
「「えぇ!」」
そういえば卵に触ったときに、ソレイユが中からシャドーの気配がするって言ってたな……。リリィたちはその話を聞いていなかったから、とても驚いている。
「この小さい1つ1つもそうなのかな?」
「ちょっと! ルキア! もう触っちゃダメよ!?」
「わかってるって!」
大きな卵の周りにある小さな卵に近づいただけで、ルーナに怒られた。……さすがに2度もそんなへましないって。
小さな卵の方を観察してみたが、あの大きな卵と似たような特徴を持っていることがわかる。周りに粘液のようなもの、卵に吸い込まれるように流れる紫色の魔力。
……もしこれがすべてシャドーの卵であったなら、いったい孵化したらどれ程の数になるのだろうか。
何百、何千の卵を私達は見つめた。少し背筋がぞわぞわする。
「今、全部の卵を破壊しちゃう?もしシャドーの卵だったら……」
「そうだね。……だけど前に良いシャドーがいたから、まだ何もしてないシャドー(仮)を殺すのはちょっと抵抗あるな」
「やっぱりリリィもそこ気になるよね」
「良いシャドー? そんなのいるの?」
「いたんだって。まぁけど結局倒したんだけど」
「ふーん。でもまぁこの量のシャドーらしきもの? は倒して良いんじゃない?」
「確かにこれの全部が良いやつって確率は低いか」
「じゃあさっそく」
ルーナは拳に魔力をこめて、近くにあった卵に攻撃を繰り出した。
ドンッ!
「「「「……」」」」
「えっと、ルーナ全力出した?」
「……出した。この卵、すごく固い」
「へぇ。フレイム!」
真っ白な炎が1つの卵を包み込んだ。
……卵にダメージが入ったようには見えない。
「ダメかー」
「今日のところは引き下がるしかないみたいね」
「そうだね」
卵のことは気になるけれど、今のところは害がないしこちらから何かをすることもできないため、帰宅することにした。
「さぁ! みんな僕らに掴まって!」
「今回は大丈夫なの?」
「大丈夫! ……たぶん」
「……たぶん?」
「さぁリリィの家に出発!」
少し不安な言葉も聞こえたが、とりあえずソレイユたちに掴まった。やがて目の前の風景が揺らいでいく。
たくさんの卵に見守られ? ながら私達は森を後にした。
その中のひとつにヒビが入り始めていたことには誰も気づいていなかった。
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目の前の風景がリリィの部屋へと変わった。だけどちょっと視点が高い気が……。
「えっ!?」
下から聖の声が聞こえた。世界がスローモーションに見えて、空中にいる私と聖の目が……合った。
「「「キャー!」」」
ドサドサドサ!
私達はリリィの部屋の天井近くに転移したらしく、そのまま重力にしたがって下へと落下した。
「いた……くない?」
「いてて、大丈夫?」
「え?」
おもっいきり落ちたため、痛みがくるかと思ったが痛くない。魔法少女の服だから? と不思議に思っていると、下から聖の声がした。
……まさかと思い、下に目線をやると……聖が私の下敷きになっていた。
「あ! ご、ごめん! 重いよね!?」
「いや軽いよ。怪我ない?」
「うん。聖が下敷きになってくれたおかげで……」
「良かった」
ゴホン!
「「え?」」
「さすがに目のやり場に困るよ。ルキア」
「え、リリィ? ……あっ!ごめん!」
「あ、俺も気づかなかった! ごめん!」
リリィに言われ、客観的に自分を見てみると私が聖に乗り上げるような形でソファーの上にいた。恋人でもないのにこの距離感は変だった。焦りすぎて、おりるのを失念してしまっていた。
慌てて、聖の上からおりた。顔が恥ずかしさからか赤くなっている気がする。自分の両手を頬へと当てる。聖の顔が見れない。
そのとき別方向を向いていた聖の頬も赤く染まっていた。けれどそれを見ていたのはたまたまその先にいたシエルのみだった。
「甘酸っぱいものが見れたところで……みんな怪我は?」
「「ないよー」」
「……ないです」
「やっぱり僕らの魔法が変になってるみたい」
「そうですねー。妖精界になにかあったのかもしれません」
「慌ただしくなっちゃうけど……今から行ってもいいかな?」
「「もちろん!」」
「えぇ、行ったことないし興味あるわ」
「俺も行っても大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。ノックスとして聞きたいこともあるからね」
「なるほどな。わかった、それなら」
♪~♪~
「誰かのスマホ鳴ってるよー」
リリィとルーナ、聖がそれぞれ自分のスマホを取り出した。けれど誰のものも鳴ってないようだ。もしかして……?
私のスマホを取り出すと、そこには着信画面がついていた。
表示画面にはファタールの名前があった。




