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(7) ここは……いったい?


 どうやらどこかの建物に運ばれたらしい。けれども見覚えのない天井だ。……考えていても仕方がないため、ゆっくりと起き上がった。

 寝かされていたのは白を基調としたベッドルームだった。かけられていた真っ白な布団の上にはソレイユが寝ている。


 部屋の中にはソレイユの寝息と本をめくる音だけが響いている。ペラペラと音がする方を見ると、近くの椅子に腰かけてリリィが本を読んでいた。あいにく集中しているらしく、私が起きたことにも気がついていないようだ。


「……地球の生態系における異質性?」

「え? ……あっ! ルキア! 目が覚めたんだね。」


 ふと目に入った、リリィが読んでいる分厚い本のタイトルを読み上げた。その声でやっと私を認識したらしく、リリィと目があった。リリィは分厚い本を隣において、優しく話しかけてくれる。


「おはよ。ごめん、ここは?」

「あぁ、この森について研究してる場所みたい」

「研究?」

「そう! さっき研究者の雨宮 真冬(あめみや まふゆ)さんがいて……」


 リリィが興奮したように話してくる。手に持っている本はここのもののようだし、趣味が合う女性だったのかな?


 とりあえず怒涛の勢いで流れてくる情報を整理した。

 あの卵に触れて意識を失ったあと、ルーナが私を回収してくれたらしい。けれどもいくら呼び掛けても目を覚まさないため、ルーナはおぶってリリィを探したようだ。

 あの卵から少し離れた場所にこの建物はあるらしく、そこにいた雨宮さんとリリィがこの部屋へ案内してくれたらしい。


「えっと、リリィはその雨宮さん? と知り合いなの?」

「全然! 初めまして。だけどみんなとバラバラになったときに、シャドーに襲われてる彼を見つけて……」

「彼?男の人なの?」

「そうだよ? どうして?」

「いや、リリィが嫌悪感を出してないのが珍しいなと」

「あ……そういえば」


 リリィは本当に彼が男性だということを気にしていないようだった。ノックス、いや聖のときはあんなに警戒していたのに。

 どんな人だろうか。気になる。


「もう私も起きたし、その人に挨拶を……」

「あっ! ルキア!」


 ベッドから降りようとして立ち上がるとふらついてしまった。急いでリリィが駆け寄り支えてくれた。……まるで魔力切れみたいな症状だ。とりあえず一旦ベッドに座る。


「ごめん、なんかふらついて……」

「しょうがないよ。ルキアの核が汚染されたんだもん。」

「え!? どういうこと!?」

「えっと……ルーナがルキアを運んできたとき、ルキアの核が紫色の魔力に取り囲まれてるように見えたの」

「そ、そうなんだ。……それでもしかして浄化を?」

「うん! ヒールかけといたから闇の魔力は消えたみたいだけど……」

「あぁ、それで魔力が使われたのかも」


 軽く手を動かし、異変がないことを確認する。

 

「よしっ! もう大丈夫!」

「え?もう?」

「うん! その雨宮さんのところに行こう。お礼しなきゃ」

「もう少し休んでた方が……」

「もう元気いっぱい! さっきは急に起き上がったからふらついただけ!」


 ベッドから立ち上がり、その場で軽くジャンプする。

 リリィは最初は心配そうにこちらを見ていたけれど、問題がないのがわかったのかその表情は苦笑へと変わった。


「それじゃ行こっか」

「うん。あ、本持ってかなくていいの?」

「あっ! 持ってくー! そういえばこれは実はもう絶版した本でね……」


 本のことに触れると、お馴染みの本トークが始まった。……こうなったリリィは止まらないんだよな……。

 歩きながら適度に相づちを打つ。


「それでね! ……で! ……で!」

「うん、うん」

「……で! この先生の本をずっと探していて……」

「うん」


 あんまり理解できない話も多いけれど、まぁリリィが楽しそうだからいっか。

 真っ白い建物の中をリリィと歩きながら進む。



「それで……。あっ! ここ!」

「ここ?」

「そう。この部屋の中にいるよ」


 ある扉の前につくと、リリィの本談義がストップした。

 リリィは迷いなく、扉に手をかけた。……なんか慣れてる?本当に初めて来たんだよね?

 私が疑問を浮かべている間に、扉がゆっくりと開かれた。


 扉が開いた先にいたのは、ルーナと妖精たち、それに見知らぬ男性だ。眼鏡をかけた天然パーマっぽい人がいる。白衣を纏っていることから何か研究しているのかもしれない。あの若そうな男性が雨宮さんか……?


「「ルキア!」」

「心配したんだからな!」

「ソレイユ! ……ありがとう。」


 こちらに気づいたルーナとソレイユが声をあげた。それにソレイユはそのままこちらに飛びついてきた。……心配かけちゃったな。

 罪悪感でソレイユを抱き締めると、なにか固い感触がする。不思議に思い、ソレイユを持ち上げるとその手にはいくつかのクッキーが握られている。


「クッキー……? ってルーナもシエルもリュンヌも食べてる!?」

「あぁ、雨宮さんが出してくれたの。……信頼できているわけじゃないけど、甘いものに罪はないでしょ?」

「ルーナ……」

「すみません。僕がお出ししてしまいました。」


 ルーナが疑い無く食べているのが珍しいなと問いかけただけなのだが、責めているように見えたのかもしれない。

 ルーナは罰の悪い顔をし、雨宮さん? は間に入るように言葉を投げかけてくる。


「いえ、あの違くて……」

「良ければ毒味でもしましょうか?」

「違います! ただ不思議に思っただけで……」

「そうなんですね。……そうだ!僕は雨宮真冬です」

「私はルキアです! ……あっ! クッキー1枚もらっても?」


 雨宮さんは私の言葉に目を丸くしたが、軽く笑ってクッキーを1枚くれた。良い匂いで気になっちゃったんだよね……

 クッキーを口にいれるとバターの香りが強く香って、とても美味しい。癖になる味だ。

 クッキーに舌鼓を打っていると、リリィがこっそり話しかけてきた。


「ルキア!」

「ん? あぁ、もちろんリリィのお兄さんの友人さんのクッキーも美味しかったよ!」

「違くて、お礼……」

「あ、そうだった!」


 甘いものに気を取られて、お礼を言いそびれていた。


「すみません! ありがとうございました!」

「ん? あぁ全然。こんなところに人が来るなんて珍しいし、久しぶりに人と話せて良かったよ」


 雨宮さんはにこやかに返答をくれた。

 そういえば仮にここに住んでいるのなら、あの卵たちについて何か知らないだろうか。……聞いてみる価値はありそうだな。


 私は雨宮さんに質問を始めた。




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