(5) 未知の場所
今、私達は落下中だ。意味がわからないと思うが、大丈夫、私達も意味がわからない。
地面は遥か下に見えていて、まだまだ遠い。
「ソレイユ! もう一度飛べない!?」
「その手があったか! もう一回やってみる!」
落下する私達にしがみついている妖精たちはもう一度転移魔法を発動させた。
すると空ばかり見えていた風景が変わり、目の前には森があった。……森? 先ほどまで遥か下に見えていたのは灰色の地面たちだったはず。違う場所に転移してしまったのだろうか。
少し地面から浮いた場所に出てしまったため、慌てて受け身を取った。軽く砂ぼこりを立たせながら地面へと降り立った。
周りを見渡すと人気がないのがわかる。……リリィとルーナたちさえいない。
「え!? 私だけ別!? それともみんなバラバラかなぁ……」
「おかしいな。魔力の出力の仕方が変だ」
「ソレイユ体調悪いの?」
「いや僕自身はおかしいところないよ。……もしかしたら妖精王に何かあったのかも」
「エウロに? 何が?」
「うーん、僕にもわからない。今はとりあえずシャドーの反応の方へ行こう」
「そうね。そっちにみんな集まるだろうし」
エウロのことは気になったが、とりあえず今はシャドー退治だ。ソレイユの魔法がちゃんと発動するかわからないため、徒歩で向かうことになった。
地球で森をこんなにがっつりと歩いたのは初めてかもしれない。私の世界の森と似ているが、触れる空気などで異なる世界であると感じさせられる。
私達の森とは生えている植物が違うのはもちろん、見かける野生動物も似ているようで毛皮の感じが異なったり色が異なったりしている。
何より感じる大きな違和感は、こんなに歩いていてもモンスターを見かけないということだ。
ガサガサ
「あ、ウサギ! ……ウサギ?」
「ウサギであってるよ」
「なんか小さいんだね。子供?」
「いやあれで大人だと思うよ」
「へぇー!」
シャドーの気配まではまだかなりあるらしく、もう森の散策のようになってきた。途中で現れる生物や植物について、ソレイユに質問すると正確かはわからないが答えが返ってくる。
まぁ私もよくモンスター討伐に行く森でさえ、あんまりわかってないところがあるしこんなものか。それともソレイユが適当なだけ? じっとソレイユを見ていると、心でも読んだかのようにソレイユがジト目を返してきた。一応笑っておこう。
「なんか失礼なこと考えてない?」
「気のせい気のせい! あっ! あれなに動物?」
「……ん、小人じゃない?」
「いや、やっぱ適当でしょ」
「ん?」
「ん?」
適当な2人組の森散歩は続く……
・
・
・
「ねぇまだー?」
「もうすぐだよ!」
「ほんと!?」
ずっと歩き続けてさすがに飽きてきた。
ソレイユによるとシャドーの気配はもうすぐらしいけれど……。変だ。森のさざめき以外、何の物音も聞こえない。
「本当にもうすぐなの? 暴れてる音とか聞こえないけど」
「合ってるよ! ……たぶん。」
「たぶん!?」
「だってセンサーも異常が出てるかもしれないし……」
「な! ちゃんと仕事してよー!」
「僕のせいじゃないって!」
そのままソレイユと言い合いを始めてしまった。
2人でギャーギャーと騒いでいると、近くの草むらからガサガサと音が聞こえ始めた。……思わず2人で黙り込み、目を合わせた。
「「……」」
「え、シャドー?」
「わからない。ルキア見てきなよ!」
「え! なんで!?」
「魔法少女でしょ!」
「それを言ったらソレイユもサポート妖精でしょ!? 今こそサポートのときよ!」
「いやいやシャドーだったらどうするのさ!」
「そしたら倒すよ。一番怖いのは見に行ってなにもいないときよ」
「……もしかして幽霊だと思ってるの?」
「その単語を発しないで! 言ったら出てくる!」
「いやいや幽霊はないでしょ。シャドーか動物だよ」
「じゃあソレイユが見てきてよ!」
「やだよ!」
ガサガサ!
「「キャー! 音が近づいてきた!」」
どっちが見に行くか揉めている間に音がだいぶ近くまできてしまっていた。ソレイユと2人で抱き合って、草むらに視線を向けた。
ガサッ!
「……2人とも何騒いでるの?」
「「ルーナ!」」
草むらから出てきたのはルーナだった。その肩にはリュンヌがちょこんと座っている。……良かったー! ほんとに。
「えっと、シャドーの気配この辺だよねーって……。シャドーいた?」
「いやシャドーは見つけてないんだけど変な場所見つけて」
「変な場所?」
「うん。とにかくこっちきて」
ルーナがこちらにやってきたわけはその謎の場所の情報を共有するためだったらしい。リュンヌが近くで私達の気配がすると気づいたらしく、合流できたようだ。
……なぜリュンヌやそれにシエルはソレイユと違って仕事ができるのだろうか。そんなことを考えていたらソレイユに軽く殴られた。まぁもふもふの手だから殴られても全く痛くないのだけど。
それにしても本当にそういったバカにした心を読むのだけは得意なんだから。
ソレイユと軽くやり合いながらルーナについていくと、急にルーナが立ち止まった。
「ほら見て」
ルーナが示した先には大きな卵のようなものが1つと、小さな卵がいくつも存在していた。しかも不気味なのが、それぞれの卵に向かって空気中から紫色の魔力が集まっているという点だ。
「え! なにこれ。気持ち悪い。」
「そうね。こんなに大きな卵があるなんて。」
「そこ? それより紫色の魔力……いや闇の魔力が集まってるのが気持ち悪くない?」
「あ、そういえばルキアは魔力の流れが見えるって話してたわね」
「あぁ、ルーナはまだ見えてないんだっけ。そうだよ。なんか集まってきてる。よくないものなのかも」
私達は禍々しい卵たちを発見した。




