(4) お菓子と思い出
来客? みんなで思わず顔を見合わせる。
「はーい!」
パタパタと音を立てて、百合が玄関に向かった。
耳を澄ませると玄関の会話が、聞こえてきた。どうやら荷物のようだ。……荷物ということはもしかして!
戻ってきた百合を見ると、予想通りその手には小さな箱があった。
私が目を輝かせたのに気づいたのか、百合が小さく笑いながら近寄ってきた。
「ルキアちゃんわかりやすい笑」
「だってそれ百合のお兄さんからでしょ!?」
「正解ー」
「なに? ルキア、百合のお兄さんが好きなの?」
「へぇ」
そのやり取りを聞いて遥が問いかけてきた。ノックスは興味深そうにやり取りを聞いている。
「違うよ。会ったことないし。気になってるのはこの中身!」
「「中身?」」
「そー! 早く開けよー!」
「そうだね。今回はなにかなー」
百合がテーブルの上に箱を置いたので、みんなで注視する。
カッターを取り出し箱を開くと、中には可愛らしい箱と手紙が入っているのが見えた。
箱の中身はずばり、百合のお兄さんの友人が作ったお菓子だ!箱を慎重に開くと今回はクッキーが入っていた。
「いい匂いー!」
「おいしそうだね! 手紙には……」
『今回も友人がお菓子を作ってくれたのでおすそわけです。
量が多いので、百合の友人たちにもわけてあげてください。
PS. 健康には気をつけて。』
「百合が風邪ひいたことバレてるじゃん」
「あれ? 手紙には書かなかったのに」
「へぇー。すごいね! 全部お見通しなんじゃない?」
「こわいこと言わないでよー! もう食べよっか。飲み物持ってこよー!」
それぞれが飲み物を確保し、お茶会の開催だ。
1枚のクッキーを手にとって口に入れる。手に取ったのはチョコ味だったらしく、口中にチョコの優しい甘さが広がる。ところどころに入っているチョコチップが味に変化をつけてくれてより美味しい。
「「おいしー!」」
「お兄ちゃんの友達相変わらずすごいな。本当にプロみたい」
「百合のは何味だったの?」
「たぶんいちごかなぁ。ベリーっぽい味するし」
「へぇー! そっちも美味しそう! 遥と聖は……。えっ!? どうしたの!?」
2人は何味だったのかと問いかけようと視線を向けると、2人は無表情で涙を流していた。
私が言葉に詰まったことに不思議そうな視線を向けてきたが、手でそっと頬に触れ、自分達が涙を流していることに気づいたようだった。
「あれ、涙……? どうして」
「気づかなかった。……話聞いてくれない? 思い出を」
「「もちろん」」
そういって聖はゆっくりと月影家の思い出を語り始めた。遥は最初は黙り込んでいたが、ときどきぽつりと思い出を話してくれた。
楽しかったこと、悲しかったこと、焦ったことなどたくさんの思い出だ。例えば、旅行に行く車の中ですべての荷物を家に忘れたことに気づいた話などは面白くて盛り上がってしまった。
実際に会ったことはないけれど、遥と聖の両親がどんな人たちだったかちょっとわかった気がした。
そういえば私に似ているという母親は、見た目が似ているわけではなく中身がなんとなく似ているらしい。甘いものが好きなところ、すこし無鉄砲なところ。
……話してみたかったな。仲良くなれそうな気がする。
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「ごめん。たくさん話を聞いてもらって……」
遥が赤く腫れた目をしながら、申し訳なさそうにそう言った。隠しているようだが、聖の目も赤く腫れているのがわかる。
みんなで楽しく話をしてほんわかとした空気が流れていたとき、隣にいたソレイユのアホ毛がピコンと立ったのが目に入ってきた。
「ソレイユ。もしかしてシャドー?」
「……うん。みんないける?」
「「「うん!」」」
「というか行くしかないでしょ!」
ソレイユが私達の体力を心配してか、不安そうな表情を向けてきた。けれど私達は魔法少女なのだ。私達がこの世界の人を守らないと……。
「「「メイクアップマジック!」」」
それぞれが変身ステッキを取り出し、呪文を唱える。
光が私達の体を包む。スカートがふわりと広がり、リボンが体へと装着される。そして魔法少女たちの変身が完了だ。
ノックスとの戦いでボロボロになったはずだが、綺麗に修復されている。……やっぱりこの服はよくわからないな。
「じゃあ行ってきます!」
「え、俺も……」
聖も私達についてこようとソファーから立ち上がったが、ふらついたようにまたソファーに戻ってしまった。
「力が入らない……?」
「魔力切れじゃない? 操られて無理やり力を使わされてた感じだし」
「そうなんだ。……ごめん俺は戦力外みたいだ。気をつけて」
「ゆっくり休んでて! 私達なら大丈夫!」
聖を安心させるように言うと少しホッとした顔を見せてくれた。
私達はそれぞれのパートナーの妖精の手を握った。
「さぁ行こう!」
「「うん!」」
風景が変わる。
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目をあけると……空!?
「ソレイユ!? 空中に出たんだけど!?」
「えっ!? 何これ! ……僕たちの魔力が少なくなってるかも」
「そんなことより、なんとかしてー!」
「よーし僕らは飛べるからみんなを掴んで……」
「無理ですー!」
「さすがに無理よー!」
空中に放り出された私達は絶賛落下中だ。
ソレイユやシエル、リュンヌが私達を助けようとつかんでくれたが、さすがに私達の方が重いため少し落下スピードが落ちたくらいだ。
「「「キャー!」」」




