(27) 仲間たちと
目を開けると灰色の天井が視界に入ってきた。気絶するように眠ってしまっていたようだ。そっと上体を起こすと誰かがかけてくれたらしいブランケットが体を滑り落ちた。
「これは……ソレイユたちがかけてくれたのかな?」
「あ、起きた?」
「え?」
起き上がった私に声がかかった。そちらに目を向けると何か憑き物が落ちたような穏やかな顔をしたノックスが座っていた。
「ルキアが一番だね」
「えっ!? ……確かにリリィやルーナそれに妖精たちも皆まだ寝てるね。もしかしてこのブランケットはノックスが……?」
「うん。俺のせいで迷惑かけたみたいだから」
「それじゃ、ノックスが一番に起きたんじゃない」
「! ……そういえば。そうだね笑」
「「ふふっ」」
ノックスと穏やかに会話する。本来の彼はルーナが言っていたとおり優しい人なんだろう。
「あの……操られてた? ときの記憶ってあるの?」
「んー、なんだろ別のところからぼんやり見てた感じかな。覚えてるところもあれば忘れてるだろうなってところはあるよ」
「そうなんだ。前に会ったときに、私との記憶がなぜか頭の中に流れてくるみたいな話をしてたと思うんだけど……」
「あぁ、確かにルキアと会話してるんだろうなって記憶があるよ。敵としてじゃなくて」
「私も見たの」
皆がまだ寝ている中、2人で静かに会話をする。
私が見たものは禍々しい何かに向かって、ノックスらしき人と歩き出すところ。仲間として共に歩き、その何かを討伐しようとしていたところだった。
彼が見たものというものは私とは少し場面が違ったようだ。複数で野宿をしているところで皆で焚き火を囲んでいたそうだ。そして隣には私のような人。騒いでいる仲間たちを見ながらゆっくりと2人で会話しているところだったらしい。
「何の会話をしていかはわからないし、騒いでいる仲間たちの顔も靄がかかったように見えなかった。
それでもとても暖かい気持ちになったよ。まぁルキアたちと敵対してたときはその記憶を見せられて、不愉快な気分になったけどね」
「へぇー。やっぱり私達はなにか忘れているのかな」
「前世とかかもね」
「……! 兄さん!」
「遥!」
「ルーナ!」
ルーナの目が覚めたようだ。そのままルーナは勢いよく起き上がってノックスへと抱きついた。……ずっと心配してたもんな。
ルーナはノックスの体に顔を埋めているため、表情は見えないが泣いている気配がする。
「心配かけてごめんな」
「ぼんどよー!」
泣いているからかルーナのセリフにほぼ濁点がついている。
兄妹の感動の再会を見ていると、リリィやソレイユ、シエル、リュンヌがそれぞれ目覚めたようだった。皆、抱き合っている2人を見て無事にノックスの浄化ができたようだとホッとしている様子だ。
「それにしてもノックスがちゃんと浄化されてよかったよー!」
「迷惑をおかけしました。すみません」
「そこはありがとうでしょ?」
「そっか……。みんなありがとう」
「もうルーナ泣かさないでくださいね」
「リリィ、元に戻っても厳しいのね」
「……ごめん。私、自分のお兄ちゃん以外の男の人苦手で。別に嫌っているわけじゃないの」
「大丈夫。気にしてないよ。これから仲良くしてくれたら嬉しい。遥の兄として」
「ど、努力します」
ノックスがリリィに手を差し出したので、リリィがぎこちなくその手を握った。その間もルーナはノックスに抱きついたままだ。もう泣いている気配はしないが……。もしかして恥ずかしくて顔をあげられないのかも?
そっと近づいて、ルーナの脇腹にチョップを入れた。
「ヒャッ!」
「お! 顔あげた!」
「もう! ルキア!」
「あはは! ごめんごめん! 顔あげるタイミング逃したのかなーって」
「……そうだけどさ」
「「かわいいー!」」
「キャー!」
飛び上がったルーナが可愛くて思わず抱き締めると、それに被さるようにリリィも抱きついてきた。それを見て、ソレイユとシエルも抱きついてきた。リュンヌは離れたところで見ていたが、手招きをすると恐る恐る近づいてきた。
「……もうしょうがないわね」
不本意という表情を浮かべながらリュンヌもくっついてきた。しかし私は見逃さなかった。リュンヌの目の端に涙が浮かんでいるのを。
まるで団子のように固まって集まった。先程までの絶望的な気持ちとはうってかわって、晴れやかな気持ちだ。みんなも同じようで、笑顔を浮かべている。
パシャ!
「「「え?」」」
「あ、ごめん。仲良しでいいなーと」
「勝手に撮らないで!」
「リリィ! 兄さんに厳しく言わないで!」
「ルーナはノックスに甘いのよ!」
ノックスが写真を撮ったことで、リリィは怒り、ルーナはノックスに怒ったリリィに怒った。また子供みたいな口喧嘩が始まった。ルーナはノックスが大好きなんだな。……それでも殺す覚悟をしていたなんて……。
とりあえず巻き込まれたくないので、急いでその場を離れた。周りをさっと見渡して、一番巻き込まれなさそうな場所へと避難することにした。
そして私はノックスの隣まで移動した。私が離れた場所ではリリィとルーナがじゃれ合いをしている。ソレイユとシエル、リュンヌはそれぞれがリリィ、ルーナを応援? をしている。
「あれ? 逃げてきたの?」
「だってあれってあの2人のじゃれ合いよ? 巻き込まれたくないよ」
「そっかー。でもまぁ楽しそうだね。遥があんなに楽しそうなの久しぶりに見た」
「そうなの?」
「まぁ両親が亡くなって……あんまり笑わなくなっちゃったしな。改めてありがとう。友達になってくれて」
「もうあなたも友達よ」
「え?」
「違うの?」
「……そうだと嬉しいな」
「そうだ! 写真見せてよ」
「もちろん」
ノックスが見せてくれた先程の写真には、ぼろぼろの魔法少女たちが写っていた。しかしその表情はキラキラとしていて楽しそうなのが伝わってくる。
「いいね! ……でもこれノックス写ってないね」
「俺はいいよ」
「あっ! そうだ!」
私はスマホを取り出し、自撮りをするようにカメラを向けた。
パシャッ!
スマホの画面には私とノックス、それに後ろで騒いでいるみんなの姿が写っていた。
こちらで第1章完結です!
まだまだお話は続いていくので、読んでいただけたら嬉しいです!
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