(26) 浄化
3人でノックスを取り囲むように座り、それぞれが魔力をこめる。私とリリィには紫色の魔力と白色の魔力がぶつかり合っているのが見える。拮抗しているようだ。2つの光が部屋の天井や壁、床にまるで花火のようにうつる。
こちらは複数なのにノックス1人と同じ魔力量なんて。……もしかしたらノックスもシャドーの核を取り込んでいるのかもしれない。
「うぅ……」
「魔力が拮抗してる……浄化しきれない!」
「浄化してるかどうかわかるの?」
「私とリリィは妖精王から特別な視界をもらってて」
「なるほど……。ねぇ……兄さんを元の優しい人に戻すことはできるかな」
「できるできないじゃない! やるんだよ!」
「でもこのままじゃ……」
「うぅ……。……は……遥?」
「兄さん!?」
「記憶が!」
魔力のぶつけ合いが均衡したまま、しばらく経ったときノックスのうめき声の中に意味のある言葉が混じった。その言葉にルーナは弾かれるようにして顔を上げた。
ルーナが反応したということは彼女の名前だろう。……遥というは確か月影さんの下の名前。やはりルーナの正体は月影さんだったのだ。
「私のことわかる!?」
「わかるよ。…………ごめん。……うっ!」
「ルーナ! 語りかけ続けて!」
「わかった! 兄さん頑張って!」
私達の浄化の力が効いているのか、ノックスに月影さんの兄としての記憶が戻ってきたようだ。それに合わせ、紫色の魔力が弱ってきているように見える。このままアクアのときのように浄化できるかもしれない。
「ルーナ! このまま浄化できそうよ!」
「ほんとに!? 兄さんお願い頑張って!」
「い、痛い! 遥……手が……潰れる」
「兄さん!」
「遥聞いてくれ……。うぅ!」
ノックスは紫色の魔力でというより、ルーナが握っている手でダメージを受けているようだ。何度か訴えているが、ルーナは気づいていないようだ。
……このまま浄化までできるかも。それまではノックスに耐えてもらおう。
もう少しで浄化できるというところで、ノックスの核に強い紫色の光が浮かんできた。これはいったい!?
そしてノックスの核に生まれた紫色の光が急激に膨張したかと思えば、ノックスの体を一気に紫色の魔力が包んだ。その紫色の光に弾かれるように私達は吹き飛ばされ、壁へと叩き付けられた。
ドン! ドサドサドサドサ!
「「「うぅ……」」」
「……危ないところだった。せっかくの駒が」
ゆっくりと立ち上がったノックスの話し方は今までとは違うものだった。もしかして前にアクアを乗っ取ったやつと同じやつ!?
私達はふらつきながらもなんとか立ち上がった。
「あなた……前に友人の体を乗っ取って私に話しかけてきたやつ?」
「おー! ルキア! 覚えててくれたんだね。嬉しいな」
「ルキア! 知ってるの!?」
「うん。でもただの気持ち悪い敵だよ。倒そう」
「ルキアがそこまで言うなんて……どれだけ」
「せっかくの再会なのにひどいな。まぁいずれ僕と一緒になる運命なんだ。今は反抗的でもいいさ。……調教すればいい」
「「「気持ち悪っ!」」」
「……安心して。半殺しで止めてあげるさ」
ノックスよりも強力な紫色の魔法を放ってくる。前はアクアの体ということもあり、あまり馴染んでなかったのかもしれない。
逆にノックスの体はよく馴染むのか、とても威力が大きい魔法ばかり飛んでくる。
「フレ……」
「ダークメテオ」
「ルミ……」
「ダークトルネード」
「「「キャー!」」」
今まで受けてきた攻撃とは比べものにならない威力だ。3人で攻撃を仕掛けようとするが、まったく当たらず逆に端の方へ吹き飛ばされてしまった。
なんて早い詠唱……。私達の魔法を出現させる前に攻撃を受けてしまう。
壁に叩きつけられ、霞みそうな視界には倒れているリリィとルーナが映る。そしてノックスがゆっくりとこちらへ歩みを進めているのが見える。このままじゃ……。
「魔法少女の皆さん」
この声は……エウロ?どうしてここで声がするのだろうか。
「どうか。闇を祓って。大切な友人を助けてください」
友人? ノックスのこと?
それに闇?……この紫色の魔力は闇の魔法なのか。
不思議に思っていると私達の体が輝き出した。これはあのとき出した技の合図?
「私に残っている最後の力を」
その言葉が聞こえると同時にもともと輝いていた体がより強く発光した。これならばあのとき以上の力を出せるかもしれない。
よろよろと立ち上がると、リリィとルーナもゆっくりと立ち上がったのがわかった。2人にもエウロの声とパワーが届いていたようだ。
「くっ! 忌々しい光め! ……まさかあいつか」
「早くその体から出ていきなさい。というかノックス! 目覚めなさいよ!」
「兄さん! 取り戻すから!」
「妹を悲しませるなんて兄失格よ! 早く元に戻りなさいよ! バカ男!」
「リリィ言葉つよ……」
「私も兄がいるから。……妹を大切にできない兄は嫌いなのよ」
「また今度詳しく話聞くね。今はうん。やろう」
「「うん」」
「悪いけれどこの体は便利なんだ。壊されたら困る」
ノックス(仮)は私達の体の輝きに目を細めていたが、目が慣れたようでまっすぐにこちらに視線を向けてきた。そしてこれまで見たなかで一番紫色の魔力がこめられた魔法を構築し始めた。
それが放たれる前に、私達も魔力を集める。
「ダークエンド」
「「「フォスアロー!」」」
ノックス(仮)が放った闇の魔法と、私達の浄化の力がこもった魔法が衝突する。闇の魔法の紫色の光が、白く輝くドラゴンを包み込もうとする。
やがて闇の魔法は紫色の光のドラゴンへと姿を変えた。私達が生み出したドラゴンよりも一回りも大きなものだ。
このまま飲み込まれてしまうかと思われたが、白いドラゴンはまるで喉元に噛みつくように闇のドラゴンを貫通した。そのまま闇のドラゴンの姿は散っていった。
そして白いドラゴンはノックスを飲み込んだ。紫色の光はだんだんと小さくなり、やがて消えた。白いドラゴンはノックスの体へと入るように消えていった。
「た、倒した?」
「なんとか? ……リュンヌ! どう?」
「……嫌な気配は消えたわ。さすがルーナね。……ルキアとリリィもよくやったんじゃない?」
「もー! リュンヌ素直じゃないんだから」
「あんたのそういうところが嫌いなのよ」
「ソレイユ……また余計なことを言って。それより! 皆さんすごいですー!」
「ありがとう。……って! そうだ! ノックス!」
皆でノックスのもとへと向かう。意識を失っているようだ。しかし核の色は綺麗な色になっているからもう心配はないだろう。
それにしてもすごい戦闘だった。
「う……安心したら眠気が」
「「私も」」
「皆さんもう敵の気配はしません。寝て大丈夫ですよ」
「「「お言葉に甘えて」」」
本当はベッドで寝たほうがいいのだけど、移動する気力も起きずにそのまま寝転がってしまった。隣でリリィとルーナも寝転がった気配を感じた。
……意識が暗闇へと落ちていった。
あと1~2話で1章は完結の予定です!




