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(23) 永き時を生きる人


 コンコン

「オババー?」


 いつもならすぐに返事が返ってくるのに、今日は何も返ってこない。ランと2人で顔見合わせ、互いに疑問を浮かべた顔をさらす。不在か、それとも聞こえていないのか。


「どうする?」

「うーん、もしいなければ待てばいいよね!」

「そうだね!」


 扉を開けて中へと入る。幸い扉に鍵はかかっていなかった。

 中へと入り、廊下を進んでいると誰かが話している声が聞こえてきた。話し声の方へと向かう。この声はオババと……男性の声?


 話し声が聞こえてくる部屋の扉を開けると、中の人物たちの視線が私達に向けられた。オババと若い男性だ。若い男性の方は見覚えがない。この村で見たことがないから、村の外から来た人だろうか。


「えっと……」

「おや、ルキアにラン、いらっしゃい」

「こんにちは」

「「こ、こんにちは!」」

「テールにお客様か。僕のことは気にしないでいいよ」


 男性が誰かの名前を呼んだ。知らない名前だ。


「「テール?」」

「私の名前だよ。もう私の名前を呼ぶのはあなたぐらいよ」

「え? そうなの? 僕にとっては君はまだまだ小さな女の子だからね」


 まるで小さい頃からオババを見てきたかのように男性が言う。どう見てもオババよりも若いし、お母さんよりも若く見える。その会話に怪しんでいるとランが突っ込んだ。


「えっ! あなたオババより年上なの!? ランたちの方が歳が近いと思ったー!」

「ちょっと! ラン!」

「ふふふ、ランは素直なんだね。そうだよ」

「えっと……おいくつなんですか……?」

「お姉ちゃんも気になってるじゃん!」

「だってー!」

「んー、1000年を超えたあたりから数えてないからなー」

「「1000年!?」」

「もう私の方が大人になったね」

「テールはまだまだ子どもだよー!」


 オババと男性が穏やかに談笑している。そういえば男性の名前はファタールというらしい。前にオババが話してくれた勇者の話に出てきた魔法使いの冒険者らしい。まさか会えるなんて。


「それでルキアとランは私に何か用かい?」

「そう! スマホについて聞きたくて!」

「スマホ? すまんね、それが何かわからん。」


 オババは申し訳なさそうな顔をした。


「オババ! ランにくれた異世界が見える板だよ!」

「あぁ、あれか!それならファタールに聞いた方がわかるよ。これをくれたのがファタールだからね。」

「スマホね。確かに僕が渡したものだ。その名称を知っているということは地球に行ったのかい?」


 にこりとファタールが問いかけてくる。


「ファタールさん今、地球って!」

「さんはいらないよ。そうか、君も世界を越える力が……」

「いや、私の力じゃないというか……勝手に移動させられているというか」

「……これから君は大きな使命を果たすことになるだろう。そのときは僕も助けにいくよ。はい、これ」

「あ、スマホ! いいんですか?」

「そこに僕とあとは……ランかな? の連絡先が入っているから、いつでも連絡できるよ」


 スマホを受け取り、画面を開くと連絡先にファタールとランが登録されているのがわかった。これに百合とかの連絡先を入れられたらいいんだけど。

 ……けどこれって地球に持っていけるのかな?いつも意識を失ったときに勝手に世界を移動しちゃってるし。


 スマホの使い道について考えているとファタールが説明してくれた。このスマホは特殊で世界線を越えることができるらしい。えっ!? すご。


 そして別の世界の映像は内臓されているアプリで見ることができるらしい。そのため、この世界にいるときは地球の、逆に地球にいるときはこの世界の映像が見えるらしい。ずっと見れるわけではないらしいが。


 そしてスマホにランと2人で興奮していると、オババとファタールに帰るようにさとされた。大事な話を2人でしたいらしい。本当はまだまだ聞きたいことがあったが、しょうがないと割りきってオババの家を出た。




「ねぇテール? 僕の言った通りだったでしょ?」

「本当にあなたには敵わないね。こんなに年老いてもあなたには一生敵う気がしないわ」

「まだまだひよっこだねー! でもまぁ長生きをしてると見えてくるものが多いのは事実さ」


 ファタールはコップを傾けながら、のんびりと答える。


「それにしてもいいの? ルキアは……」

「いいんだ。元気そうな姿を見れただけで。……たとえ忘れられても」

「また1から始めればいいのよ。それにもし私が同じように忘れてしまったとき、また友達として仲良くなってね」

「……テールは案外残酷だね。」

「そうかしら? でも記憶がなくても、きっとまたあなたと仲良くなるわ」

「約束だよ」

「大丈夫。私は約束を破らないの。また皆で遊びましょうね」


 ルキアとランがいなくなった部屋で、テールとファタールの約束が交わされていた。その約束を知っているのは2人の他に暖炉だけだった。



 ランと2人で家へと帰る道、興奮したように話が止まらなかった。ずいぶんとオババの家に長居してしまったようで、星が顔を覗かせてきている。


「ファタールってすごい長生きなんだね! 勇者と一緒にいたなんてすごいねー! ……もしかして勇者も生きてるのかな?」

「生きてる……かも? でもすごくおじいちゃんになってそうだよね」

「確かに! というかやっぱり勇者はイリオス村出身なんだね!」

「うん。オババは嘘をついてないんだよ!」

「大人たちはなんで信じないんだろー?」

「やっぱり体験したことじゃないと信じないんじゃない?」

「そっかー! ……ん?板が震えてる」

「スマホね。確かに震えてるね」


 スマホを開くとあの特殊なアプリに通知マークが出ている。アイコンを押すと映像が流れ出した。



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