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(12) 理由


 朝ごはんを食べていると、百合の顔が赤いことに気がついた。


「百合、顔赤くない? この部屋暑い?」

「え? そう? 逆に寒いくらいなんだけど……」

「寒い? ……風邪じゃない?」

「まさかー」

「熱測って!」


 百合が熱を測るとやはり熱があるようだった。


「今日のシャドー退治は私、1人で行くよ!」

「え、大丈夫! 私、動けるよ!」

「それで無理して悪化したらどうするの!?」


 行きたそうにしている百合を説き伏せて、1人で(ソレイユは一緒)シャドー退治へと繰り出した。



 今日もシャドーの反応があった場所へ向かい、魔法を放つ。


「ギャー!」

「よし! 今日はこれで終わり!」

「ナイス! ルキア!」

「ありがとう! じゃあ帰ろ……」

「あれ? 今日は1人なの?」

「あなたは!」


 無事にシャドーを倒し、帰ろうとしたときノックスが現れた。ノックスはまるで友人を見かけたかのように、にこやかに語りかけてきた。


「やぁこの間ぶりだね」

「あなたは一体何者なの!?」

「それはこっちのセリフかな。俺の頭になんかした?」

「え?」

「変な記憶がちらつくんだよね。」

「それって……もしかして……」

「まぁ君を倒せば解決するか。ダークシャドウ」


 私の見た夢に関係するものかもと思ったが、ノックスとは対話はできなそうだ。ノックスが知らない呪文を唱えたと思うと、ノックスの手のひらに紫色の光の玉が形成された。あれはいったい?

 光の玉が宙に浮いて、まばゆい光を放った。


 ドシーン!

 光の中からそれまでその場に存在していなかったシャドーが現れた。


「倒して、話を聞くしかないみたいね。」

「ルキア1人で大丈夫?」

「なめないで! フレイム!」

「そ?」

「!」


 シャドーだけでなく、ノックスも攻撃を仕掛けてくるようだ。やりづらい! しかし1人で倒すしかない。私も何度も魔法を放つ。

 炎魔法や紫色の魔法が飛び交い、たまに衝突する。そのたびに砂ぼこりが舞い上がり、視界が悪くなる。



「くっ……」

「これで終わりだよ。」


 何度も魔法を放ち、シャドーを倒したがノックスは余裕そうだ。しかもノックスがシャドーを召還するたびに強くなっている気がする。今はシャドーはおらず、ノックスだけだが何か強力な魔法を放とうとしている気配がする。

 こちらに向かって魔法を形成し始めた。ただの光の塊だったものが、だんだんと紫色の光の矢の形に変化した。強力な気配を発している矢の照準が、私の方へと向けられる。


「じゃあね!」


 ノックスは笑みを浮かべ、魔法を放った。

 召還されたシャドーたちと戦い、ノックスともしばらく戦闘した私の魔力は残り少ない。

 反対にノックスの魔法は強い魔力がこもっているのがわかる。あまりのプレッシャーにもう終わりだと思ったとき、私の体が輝きだした。

 ……これは! 魔力が溢れてくる。


「終わりなのはあなたのほうよ! アイス!」


 燃やし尽くすわけにはいかないため、拳に氷魔法を纏わせて殴りかかる。ノックスは私の魔力がつきて反撃してこないと油断していたようだ。容易に近づき、拳を叩き込む。


 ドゴッ! ドシャ!

「ゴフッ!」


 良いところに入ったようで、ノックスは苦しそうな声をあげて飛んでいった。

 その間に私の体の輝きが消えた。魔力切れで倒れそうになりながらノックスの方へと近づく。……ノックスが倒れているところまでついた。ギリギリ意識はあるようだ。


「……まさか君がここまで強いとは」

「あなたと私って何か関係があるの?」

「さぁ?少なくとも俺は知らないよ」

「……約束って覚えてる?」

「約束……? ……うっ! 頭が……」

「やっぱり何か覚えてるの!?」


 急にオババが言っていた約束とやらを思い出した。なんとなくノックスにたずねてみると、その一言でノックスが頭を抱えて苦しみだした。

 ……やっぱり何か関係あるのかも。


 一緒に連れて帰ろうと思ったとき、ノックスの後ろの空間に穴が開いた。


「!?」

「さぁノックス帰ろう」

「なっ! ……待ちなさい!」


 その穴から手が伸びてきて、ノックスを引き込んでしまった。追いかけるにはあまりに私が満身創痍すぎる。気がつくとその穴は閉じてしまった。


「そんな……!」


 なぜかノックスが弱った今がチャンスだったのに……

 しかし脅威が消えたからか、ますます意識が飛びそうになる。


「ごめん……ソレイユ、家まで……」

「わかった!」


 そっとソレイユの手を掴んだとき、視界にリリィの姿も見えた。……やっぱり熱があるのに来てくれたのか。意識が落ちる……。



 目が覚めると百合の家の寝室だった。……ちゃんと布団に寝てるってことはソレイユが頑張って運んでくれたのかな。


 ぐうー

「お腹空いたな……」


 リビングへと食べ物を探しに行くと、ちょうどソレイユとシエルが料理をしていた。……料理できるの!?


「料理できるの!? 百歩譲ってシエルはまだしも、ソレイユも!?」

「失礼な! できるよ!」

「あ、声に出てた?」

「わりとはっきりね」


 でもあのボディとあの生活態度から料理ができるとは思わなかった。覗き込むとおかゆを作っているところだった。


「おかゆ?」

「そう! 百合は風邪だし、ルキアは魔力切れで倒れたしね。」

「そうだ! 百合! 風邪なのに私を助けに……」

「私じゃ止められなかったですー」

「シエル……まぁでも助けにきてくれなかったらちょっとヤバかったんだよね。……もっと強くならないと」

「助けられたなら良かった」


 細い百合の声が聞こえてきた。驚いて声の方を見ると、百合が熱で赤らんだ顔で立っていた。


「百合! 寝てないと!」

「ごめんね。声が聞こえちゃって。シエルは悪くないよ。無理やり私が連れていかせたの。1回ヒールかけるだけで限界だったけど」

「……私、もっと強くなるよ。ソレイユ! 何かない!?」

「うーん。あっ! 妖精王に聞いてみれば何かあるかも!」

「妖精王!?」

「それ良いアイデアですー!」

「まぁその前に2人が回復しなきゃね! さぁ、おかゆできたよ!」


 ソレイユたちに押されるように席についた。おかゆ……美味しい!ゆっくり休んで、回復したら妖精王に会いに行くことになった。……人間も妖精界に行けるのだろうか?





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― 新着の感想 ―
どんどん世界観に引き込まれていきます めちゃくちゃ凝縮されてるけど、ちょっと駆け足かも もう少しゆっくり情景とか描写があるともっと引き込まれるかと思います ノックス気になる…
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