(11) 忘れている記憶
謎の人物ノックスと邂逅し、謎が深まったまま帰宅した。
「あのノックスってのはなんなの!?」
「百合……怒りすぎじゃない?」
「もう! ルキアちゃん! なんかあの人に気許してない? 敵だよ!」
「……そうなんだけど、なんだか気になって。」
「今日は百合とルキアが逆になったみたいだ。」
「ソレイユさんまで能天気な!」
百合はぷりぷりと怒っているが可愛らしいだけだ。それにしてもノックスっていう人はなぜか……何か忘れてる?
ノックスにどこか懐かしいものを感じた。まるで大切な人だったみたいな。失っちゃいけないって心のどこかが叫んでいる。彼と会ったのは初めてのはずなのに。
とりあえず今日の任務は終了したので、ご飯を食べ、ゲームをし、お風呂に入って布団へとくるまった。
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これは……夢? 私と誰かが話している。でも風景もその人の顔もよく見えない。口が勝手に動いている。
はっきりとは見えないが、私達が見据える先には嫌な気配をびしびしと感じる。なぜだかそこに立ち向かう覚悟ができているようだ。
「○○、どうする?」
「やるしかないでしょ。……たとえ命を落とすとしても。あなたは帰ったら?」
「それで俺が引き下がると思う?」
「……思わない」
「でしょ? 一緒に行くさ。俺も大切なものを守りたいんだ。」
「はぁ……。私達がもっとうまくやれてたら……」
「今度はうまくやればいいさ」
「今度?」
「うん」
「……そうね」
そのまま2人は禍々しい何かが集まっている場所へと歩いていった。
……あ、男性の方が振り向いた。ノックス!? いや、ノックスに似てる男性だ。
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「はぁ!」
目が覚めると汗だくだった。今のはいったい……? それにあの禍々しい何かは夢で見ただけだというのに、物凄いプレッシャーを感じた。
「お姉ちゃん……? 怖い夢でも見たの?」
「……! ラン! まぁそんな感じ」
隣で眠そうなランが目を擦っている。
元の世界に戻ってきたのか。こちらではどれくらいの時間が経過したのだろうか。とりあえずまだ夜中みたいだし水でも飲みに行こう。
コポポ……
グラスに水を注ぎ、椅子へと座った。するとリビングの扉が開き、人が入ってきた。
「ルキア?」
「お母さん! ごめん! 私ずっと起きなくて……」
「なーに? 変な夢でも見たの?」
「え?」
「昨日、夕食一緒に食べたじゃない」
「え、そっか……ごめん! 寝ぼけてたみたい!」
「そう? じゃあまだ夜中なんだから寝てなさい」
「はーい」
お母さんに諭されて寝室へと戻った。……今度は地球の時間の方が流れる時間が遅い? 疑問を持ったまま、眠気に身を任せた。
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「お姉ちゃんー!」
「ん? 朝?」
「そ! 朝ごはん!」
あれから一度寝て、起きても地球には行っていなかった。どういう基準だろうか。朝ごはんを食べながら考える。
「ルキア、今日もモンスター討伐は休みなさい?」
「え? なんで?」
「なんでって、倒れたばかりじゃない」
「……あ、そっか! そうだった。わかった!休む」
なるほどこちらでは魔力切れで倒れてすぐなのか。ちょうどすることもなくなったし、オババに話聞きに行こ。
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ここは村の外れにある小さな家だ。オババが1人で住んでいる。
コンコン
「オババー?」
「開いてるよ」
扉を叩くとオババの優しい声がした。オババは村をずっと見守っている神さまみたいな人で、困ったことがあると村の人はみな、オババへと意見を聞きにやってくるのだ。
まぁその知識が合ってるか間違ってるかはオババしか知らないが。そのため半信半疑で話を聞いていると、村の大人が話しているのを聞いたことがある。
扉を開け、勝手知ってる家の中を進んでいく。暖炉の前にオババは座っていた。小さい頃はランが赤ん坊だったこともあり、お母さんに構ってもらえないため、ここでオババとよく話をしていた。
「おや、ルキア久しぶり」
「オババ! ちょっと話したいことがあって」
「勇者にでも選ばれたのかい?」
「え! いや……でもまぁある意味そうかも。でもどうして?」
「昔会った勇者さまと同じオーラを纏ってる」
「オーラ?」
「あぁ、太陽のオーラだ」
まるで私のまわりに何かがあるかのように、オババの視線が向けられる。気になってその視線の方へ私も目を向けてみたけれど、特に変わりはない。
けれどオババは嘘をついているようには見えなくて、問いかける。
「そんなものが?」
「あぁ、昔は皆見えていたんだけどね。今では私ぐらいしかオーラは見えないらしい」
「昔の人は見えてたの?」
「そうだ。しかし今は闇の力が充満しすぎてすべてが歪んでしまった。……ルキアには世界の歪みを解決する役目があるんだよ」
「それってもしかして異世界に行くことと関係が?」
「すべては繋がっているのさ。そして問題を解決するには……」
「解決するには?」
「愛だよ。真実の愛」
「真実の愛?」
「ずっと前から繋がっている愛がある。それを思い出してごらん」
「やっぱり私、何か忘れてるの?」
「……おやおやそろそろ時間のようだね」
「え?」
まだまだ聞きたいことがあるのに、体が引っ張られる感覚がする。またこんなすぐに!? 目の前の景色が揺らいで、強制的に睡眠させられているようだ。
「オババ!」
「ルキア、大切な約束があるはずだよ」
「約束!?」
気になることを言われたが、意識が保てない……
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目が覚めると百合の家だった。部屋の中に百合はいないようだ。……ソレイユは寝ている。
「ソレイユ!」
「……ん? ルキアどうしたの?」
「私、勇者かもしれない」
「ルキアは魔法少女だよ?」
「いやまぁそうなんだけど、私の世界で勇者って言われて……」
ソレイユへ簡単に説明した。
「へぇー! じゃあ向こうの世界でも役割があるのかもね。世界は繋がってるから」
「ソレイユは何か知ってるの?」
「……僕は答えられないんだ」
「答えられない?」
「ルキアちゃーん! 朝ごはん!」
「え、あ、はーい!」
オババもソレイユも何か知ってるのかもしれない。でもオババのときは強制的に話が終わり、ソレイユも言えない事情があるようだ。何か大きなことに巻き込まれてるかもしれない。
……というか朝ごはん今日、2回目になるんだけど……。




