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第21話 魔道具作りのお手伝い

 一夜モルの宿で休んだと思ったら予定通りに港町セイレンにとんぼ返りとなった。

 今回は一日でも早く辿り着きたい理由があったために前回と同様に目いっぱい馬車をとばして進んだ。結果、予定よりもさらに早くセイレンの町に辿り着くことが出来た。


「――お疲れ様。今日はゆっくりと休んで良いですからね」


 馬車をギルドの施設に預けながらフィーが私たちにそう告げる。私は乗っていただけとはいえ、疲れていたのでその言葉に同意したが護衛のふたりは相変わらずだった。


「俺たちは酒場で休んでくるぜ」


 本当に元気な人たちだ。まあ、何か問題を起こせば直ぐにギルドの関係者が取り押さえに行ってくれるだろう。


「私たちは、また温泉にでも行きましょうか」


「大賛成です」


 こんなふうに寄り添ってくれる彼女に感謝をしながら今回も温泉を堪能したのだった。


 ◇◇◇


「――では、宜しくお願いします」


 次の日、宿で朝食を摂ったのちにドランのもとへ出向いた。もちろん、商業ギルドのロイズには報告済みだ。


「ああ、よく来たな。そっちのお嬢さんも手伝いか?」


「そうです。こう見えて料理なんかも得意ですから食事の準備なんかも出来ますよ」


 フィーはここに来る前に簡易な服にエプロンを着けた服装だったので、どこから見てもお手伝いさんそのものだった。ギルドから給金も出ているだろうし、本人もノリノリに見えるので問題はないだろう。


「そいつは助かる。どうも魔道具作りに集中しちまうと飯の準備がおっくうになってな。前の時なんかはそのままぶっ倒れちまって、ロイズにしこたま怒られたからよ」


 ドランは大きな口を開けて笑いながらそう話す。どうやら見た目のとおりに豪快な性格のようだ。


「それで、私は何をすればいいですか?」


 ごそごそと棚や箱から何かの道具や素材を取り出しているドランに私が声をかけると彼は簡単な指示をしてくる。


「とりあえずだが、お前さんの魔力波長を調べなきゃならん。そいつが判明しなけりゃあ前には進まないからな」


 魔力波長ですって? ここに来て、また初めて聞く言葉に私は首を傾げながら目線をナビーに送る。


「固有スキルは特定の魔力波長があって共鳴しやすいものとそうでないものがあるんだ。その波長を知るために計測用の魔石に魔力を入れ込む必要があるんだ」


 私の視線を感じ取ったナビーがするすると私の肩に登って来て耳元でそう教えてくれる。


「えっと、やったことがないので教えて貰えますか?」


 ナビーの説明を聞いた私だったが、それだけで出来るようになるはずもなく素直にドランにやり方を聞くことに。


「まあ、魔力波長を調べるなんて専用の魔道具を作る時ぐらいにしか関係ないからな。やり方を知らなくても当然だ」


 私がやり方を知らなかったことに対して別に怒るでもなく、笑って手にした魔石を渡してくる。


「こいつを手に持ってスキルを発動させてみな。おっと、お前さんのスキルはカード化だったな。カードのままじゃあ測定は出来ないから元に戻してくれると助かる」


「スキルを使えば良いのですね? 分かりました。圧縮――解放」


 私はそう言いながら魔石を一度カード化してからすぐに元に戻してから彼に手渡した。


「ありがとよ。これで波長は分かるはずだ」


 彼に手渡した魔石は初め真っ黒だったものが魔力に反応したのか赤色に変化している。


「赤色か。やっぱり珍しいタイプだな」


「そうなのですか? やっぱり無理ってことはないですよね?」


 珍しいタイプと聞いて私は少しばかり不安になる。ここで無理と言われたらお店を持つ夢が一気に遠ざかるからだ。


「ああ、心配ないぞ。珍しいとは言ったが、過去に例がないわけじゃない。ただ、使う素材が高価だから自然と魔道具自体も高価になるだけだ」


「それ、全然大丈夫じゃないです。それでなくてもどうやって支払おうか悩んでいるところなのに……」


 いきなり価格が上がると言われて私は若干涙目となる。まあ、いざとなったらカロリーナさんに借りることにしようかな。


 私がそんなことを考えている間にドランは渡された魔石を分析する魔道具に設置して検証を始めていた。


 ぶぶぶ……。


 魔道具から何かが動く音が部屋の中に響いてくる。中で回転でもしているのだろうか?


「そろそろ結果がでるぞ」


 十分も経たないうちに魔道具の音が止まり、ドランがその結果を確認する姿が見える。


「どんな感じですか?」


 おそらく聞いても理解できない内容なのだろうなと思いながらも気になった私は彼にそう問いかけてみた。


「ん? ああ。とりあえず方向性は見えた。だが……」


「何か問題でもありました?」


「どうやって使うかのイメージが湧かないんだよ」


 確かにそう言われればそうかもしれない。台のようなものだと大きな荷物は乗せることが出来ないし、中に入れるなんてもってのほか。もっと簡単に付与できる形を考えなければ使用するのが面倒になっては本末転倒だ。


「もっと簡単に……ですか」


 私はその時、ふと前世でよく使っていたあるものを思い出した。


「あ、あれならいけるかも」


 私はそう呟いてドランに可能かどうかを確認する。


「ああ、そうか。理論上は可能だが、あとはどれだけ小型化が出来るかになるな」


「試して貰って良いですか?」


「もちろん。こいつはワシの限界に挑戦することになりそうだ」


 ドランはそう言って高級素材であろう、象牙のような素材を削り出したのだった。


 ◇◇◇


「よし! 器は出来たぞ! 我ながらほれぼれするような出来だわい」


「これは……スタンプでしょうか?」


 出来上がった魔道具を見てフィーがそう問いかける。確かに見た目だけで言えばぎりぎり片手で持てるくらいの大きなスタンプに見える。


「あとはこの部分にはめ込む魔石にスキルを付与するだけだ。まあ、実のところそれが一番難しいのだがな」


 そう言って笑うドランだったが、こちらとしては笑いごとではない。彼がスタンプ型魔道具を作成している間、密かに私はナビーにスキルの付与について調べて貰っていたが、根本的な解決策は出て来なかったのだ。


「リアにはスキル付与する才能が無いからな。まあ、無理ゲーじゃないか?」


「ちょっと。もう少し真剣に助けてよね」


 知識を与えるために傍にいるはずのナビーが役立たずと化していることに不満をぶつけながら、私はどうにかならないかと方法を考える。


「とりあえず、少し調べさせてもらえますか?」


 今、ここで解決するものではないと思った私はとりあえず宿題として一旦持ち帰ることにして、付与するための魔石と共に宿に帰ることにした。


「――ふわぁぁん。一体どうしたらいいの?」


 宿に帰った私は夕食をフィーと摂りながら半分愚痴のような言葉を漏らす。


「リアさんは付与適性が芳しくないのですか?」


「そうなのよ。で、なければ魔道具になんて頼りませんよ。そのまま直接、魔法付与を施せば済むんですから」


「ああ、それもそうですね。すみません失念してました」


 フィーはそう言うと彼女がギルドで経験したことから参考になりそうな事案を話してくれた。


「――はあ、なるほど。やっぱり私のようなタイプの人も存在するんですね。少しだけ安心しました」


 私の場合、かなり特殊な事例だと自負をしているので参考になることは無いのだろうと思っていたけど、意外と同じようなタイプがいるようで、彼女が言うには才能が乏しくてもコツが掴めればなんとかなるとのことだった。


「分かりました。今夜、部屋に籠って特訓してみます」


 フィーからやり方のコツを聞いた私は夕食後は温泉もそこそこに部屋に籠ってひたすら特訓に明け暮れたのだった。

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