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第13話 魔道具師の斡旋依頼

 結局、今後のためもあってギルドと契約をしたのだが、そう毎日のように依頼が入るわけじゃあない。むしろ、ギルドで選別をしてくれているために仕事のない日の方が多いくらいだった。


「――今日も依頼は無かったわね。一日でも早くお店の開店資金を貯めたいのに契約したとたんに仕事が無いなんて思ってもみなかったわ」


 毎日、朝にギルドの受付に顔を出しては同じ受け答えをされる日々に最初は緊張していた私もさすがにうんざりしていた。


「仕方ないわね。こうなったらアレの検証をしようかな」


 私はギルドからの帰り道にあった雑貨店でいくつかの品物を購入すると宿の部屋に籠る。目の前には検証で使う品物とその横にはちょこんと座るナビーの姿。


「ナビー。改めて聞くけれど、私のスキルについて知っていることはない?」


「俺様の知っていることは全部話してるぜ。他のことなら多少なりとも情報を持ってはいるけどな」


 やはり、ナビーといえども私の求める情報をぽんぽんと吐き出してくれる便利な存在ではないようで、私からの質問が終わったところで置いてあるクッキーをカリカリと齧りだす。こういったところを見るとただの喋るリスにしか見えない。


「そもそも、リアはスキルをどう使いたいんだよ?」


 ナビーはこちらを見ずにそう問いかけてくる。一応は協力する気はあるようだ。


「今の私に出来るのは手に触れた品物をカード化することと、そのカード化されたものを元に戻すことだけ。確かに、使い方によっては大量の荷物を運んだりすることが出来るので重宝されるでしょうけど、欠点として私しかカード化を解けないってことなのよ」


 そう言って先ほどカード化しておいたケーキと茶を解放して休憩がてらに楽しむがそれをナビーが欲しがることはなかった。どうもナビーはクッキーがお気に入りのようで、ケーキには興味が薄いようだ。


「なんだ。リアは自分の作ったカードを他人が使えるようにしたいだけなんだな」


「簡単に言ってくれるけど、それが出来ないから困っているんじゃないの」


「それならば出来ると思うぞ」


「え?」


 あいかわらずクッキーを齧りながらではあるが、ナビーは私が一番悩んでいたことを簡単に出来ると言い切ったのだ。


「ど、どうやって!?」


「そうだな。やり方としては大きく分けて二つ、一つ目はリアが付与魔法を身につけること。こいつは教会で適性を確認してもらって適性があれば研修を受けることで習得できる」


「適性って結構あるものなの?」


「そいつは分からないよ。まあ、半々ってところだろうな」


「もう一つは?」


 半分の確率ならば確認して貰う価値はあるだろうが、ナビーの言う半々が五十パーセントのことなのか、ただ単に適性が有るか無いかの二択という意味だったらあまり期待は出来ないだろう。


「魔道具を使う。こいつは専門の魔道具師に頼まなければいけないが、本人のスキルと波長を合わせてくれるから魔法適性がなくても使うことが出来る優れものだ。まあ、そのかわり作成代金も高額だがな」


 ナビーの説明に私は思考をフル回転させる。無理を承知で教会へ駆け込むか商業ギルドを通じて魔道具制作を頼み込むかと……。


「どっちがリスク的に安全かな?」


「それは、安全面で言えば魔道具だろうな。教会は金を積めばそれなりに仕事はするが、そこで見つけた才能を取り込もうとする奴がいることも間違いないからな」


「あああ。でも、カロリーナさんに頼んだらきっと吹っかけられるだろうな」


 私は脳の疲れを癒すためにケーキを頬張りながら部屋の天井を見上げる。纏まらない考えをケーキの甘さが緩和してくれるようで表情が緩くなるのが分かる。


「よし、決めた。今から商業ギルドに行ってくる! うじうじと考えるのは性に合わないからね」


 ケーキを食べつくした私はナビーにそう言って鞄を掴むと部屋を飛び出す。慌ててナビーもドアが閉まる寸前で外へと転がり出てくる。


「待てよ。俺様も一緒に行くぞ。一緒に話を聞かせてくれればまたアドバイスが出来るかもしれないからな」


 ナビーはそう言って私の後ろを必死でついて来たので、私は彼を鞄の中に入れ込んでから再度商業ギルドへ走り出したのだった。


 ◇◇◇


 ――からんからん


 私が勢いよくギルドのドアを開くと中からフィーの声が聞こえる。どうやらもう少し静かにドアを開けるようにとの注意のようだ。


「すみません。急いでいたもので。フィーさん、今からギルドマスターとの面会って出来ますか?」


「え? 今からですか? ご用件を伺っても良いですか?」


「魔道具の制作依頼について聞きたいことがあるんです」


「魔道具の制作依頼……ですか?」


「はい」


「分かりました。直ぐに確認してきますね」


 フィーはそう告げるとギルドマスターの執務室へと向かった。


「上手く交渉するんだな。あの女はギルドの利になることは積極的だが、そうでなければ首を縦には振りそうもないぞ」


 フィーが見えなくなったタイミングでナビーが小さく私にそうアドバイスをしてくれる。


「分かっているわ」


 私が頷いたのを見てナビーは満足そうに尻尾を振った。その時フィーの声が聞こえ、面会が出来ると知らされたのだった。


 ◇◇◇


「――先ほど、話は聞きましたよ。なんでも魔道具の制作を依頼したいとのこと。そのために魔道具師を紹介して欲しいのですね」


 カロリーナは部屋に入ると直ぐに本題を切り出してきた。今回は私の方からのお願いなので彼女に主導権があるのは仕方ないこと。それでも、私は勝手に話を進められないように気を配りながら話をする。


「私なりに調べたところ。私のスキルを有効的に使うためには教会で付与魔法の適性があるかを調べ、あれば研修を受ける必要があるみたいです」


 先ずは第一の方法を彼女に話す。すると、カロリーナは表情を曇らせて注意喚起をする。


「正直言って教会の人物鑑定儀式には疑問があります。教会は行った鑑定の結果を伝えるだけで、本当にそうであったかの確認をさせてはくれません。つまり、教会にとって不利な情報は隠ぺいされるか嘘を伝えて後に別の理由を付けて囲い込むことのあるようです」


 カロリーナはナビーの言っていたような説明をして、遠まわしに教会への不満を表した。教会とギルドはあまり仲が良くないのだろう。


「やはり、そうなのですね。私が聞いたところ同じような回答をされていました」


「それで、もう一つの方法が魔道具を頼ることなのですね?」


「はい。こちらも上手くいけば同様の効果を得ることが出来ると思っています」


「確かに魔道具の中にはスキルの付与を補助するものは存在します。ただ、うちのギルドが把握している魔導具師で同様の効果を持つ物を作れる者は別の町に住んでいます。もし、依頼をするのであればギルドとしての推薦状は出しますが、依頼自体はご自身で頼むのが筋となっています」


 カロリーナは私の提案に反対するどころか腕利きの魔道具師を紹介してくれるというのだ。きっと私のやろうとしていることが、ひいてはギルドの利になると判断してくれたのだろう。


「その方は何処に住んでおられるのですか?」


「町の名前はセイレン。ここから南へ馬車で三日ほどの距離にある港町になります」


「港町セイレン。そこに行けば依頼を引き受けて貰えるのですね?」


「ギルドからの手紙を預けるから大丈夫でしょう。ただ、せっかくなのでリアさんにはギルドからの依頼をお願いしたいと思います」


「荷運びですか?」


 ギルドが私に依頼することの大半が荷運びだったので、私は彼女にそう問いかける。


「はい。セイレンに向かう便と帰りの便、どちらもお願いしたいと思っています」


「それは良いですけど指示だけはきちんとお願いしますね。何を運んだら良いか分からないようでは困りますので」


「それに関しては大丈夫です。今回はギルド便を使用しますので、サポート役としてフィーを同行させます。何か不明な点があれば彼女に聞けば分かるようにしておきます」


「――準備は全てお任せください。では、リアさんは明日の朝ギルド前の広場にお願いしますね」


 突然決まった遠征にも全く動じる様子のないフィーはカロリーナにお辞儀をして準備をするために部屋を出て行く。


「では、契約書の準備をしますのでもう少しだけお付き合いくださいね」


 カロリーナは相変わらずの微笑みを見せながら私にそう告げたのだった。

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