東京
目を開けたミライとユウキは、見慣れない場所に立っていた。目の前にはコンクリートのホームが広がり、スーツ姿の人々が足早に歩いている。頭上には蛍光灯が並び、壁には「上野駅」という文字が貼られていた。ミライは目を丸くして辺りを見回した。「え…何?! ここ、どこ?!駅?!」ユウキがリュックをぎゅっと握りながら、思わず大声で叫ぶ。「駅にしても人がいすぎじゃない?!それに、さっきまであのボロボロの建物にいたのに……!」
ミライは深呼吸して、胸いっぱい空気を吸い込んで気持ちを落ち着けようとした。「ユウキ。見て。ここ……上野駅って書いてある……」ありきたりな名前にも感じる地名だ。だが、上野と聞いて真っ先に思い浮かぶのは東京都の上野という場所である。上野動物公園。「上野?!ってことは、東京? でも、なんで……?」ユウキが「東京!? え、東京ってさっき話してた東京?! どうして?!」と声を上げると、ミライは手に持ったままの腕時計に気づいた。時計の針は今もゆっくり動いている。
「この時計…何か変だよ。さっき動き出した瞬間、光が出て…」ミライがそう呟いたとき、ホームの端で不気味な男が目に入った。男はビニール袋を持ち、傘を手にしている。ミライは一瞬ドキッとしたが、どう見てもただのビニール袋を手に持った男だ。だが、ユウキもその男を注視している。
ユウキが「ミライ姉、あの人、変じゃない?」と小声で言った。
ミライは頷いた。「うん……私も気になる」