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英雄の戦場~帆世静香が征く~  作者: 帆世静香
第一章 顔合わせから始めましょう。
23/163

水辺の封印洞窟 其の7 旧き神の島

情報開示回です。



洞窟の天井に穿たれた"裂け目"を越え、私たちは外へと飛び出した。空気おいしいーっ。1日ぶりの新鮮な酸素が肺を満たす。


天空から下を見下ろすと、ごろごろと岩が転がる山の中腹に巨大な裂け目が見えた。ここから飛び出たらしい。全体を見渡すと、奇妙なことに、見覚えのある風景だった。


(´・ω・`)「ここ、俺たちがいた島じゃないスか?」


私が最初にスポーンした高原が遠くに見え、その手前に深緑の森と、森の中に巨大な湖がある。まさに、私達が()()()()()()()()にいた島だ。しかし、どこか雰囲気が違う気がする。どこだろう…首をかしげていると、答えはすぐに返ってきた。


「ここは、あの島ではありません。旧く、朽ちた神の気配を感じます。ほら、あそこ…」


巫さんが指し示す先、湖の中央に浮かんだ島の上。そこには、ボロボロに崩れた神社のような建物がたっていた。りぃん……正解だとばかりに巫さんの鈴が微かに音を奏でる。


そこだけが、私たちの知る場所と異なっていた。そして、まるで重力を持つかのように重たい空気を発生させているように見える。


フニちゃんの指示で、幽影(ゆうえい)逆翼(さかよく)が森の狭間、川のほとりに降りる。

逆翼の姿を真似ていた幽影が、元の球状に戻るとフニちゃんの肩にとまる。影の支配者から、一介のペットに落ち着いたらしい。


んー、目的地は明らかだ。あの島に何かある。移動手段も、フニちゃんのおかげで飛んでいける。

でもまずは、休憩かな。この4人PTは()()なほど優秀だ。

些細な異変にも気が付く集中力を切らさない、生物を殺めることにも躊躇がない、過酷な環境でも精神が折れない、()()()()()()()()

大いなる情報体が選んだ、人類の代表たちなだけはある。しかし、優秀すぎるPTは往々にして無茶をしてしまうのだ。


(()()いける、は()()いけない。)


「集合~。拠点作った後で、作戦会議します!拠点作成組と食料確保組に分かれてくださーい。」


じゃ、仲良しで二人組になってーっ……って言う先生マジで恨んでたことあるなあ。

ただ危険がある場所で単独行動はしないほうが良い。野外でも移動可能な私とフニちゃん、拠点はこもじと巫さんにそれぞれ分かれた。


サバイバルの基本を話そう。ウォーター、ファイア、シェルター、フード。この順番にそろえていくのだ——と前世で親交のあった禿たイギリス人が何度も言っていた。彼は丸裸でカメラだけもって無人島やアマゾンの秘境など、世界中でサバイバル動画を撮影する特殊部隊出身だ。目尻をしわくちゃにして笑う顔がとってもかわいいのだ。そういえば、こもじと雰囲気が似ている。


おっとっと、話がそれちゃったね。すっぱいにおいが付いた服を川で洗い流し、ついでに魚を捕まえた。んー、やけにゴツゴツした魚だ。動きもトロいし、()()()()()()()。もっというと、木や草も微妙に植生が異なっている。まるで時代が違うかのようだ。


拠点に戻り、二人と交代する。護衛にフニちゃんをつけて、巫さんが水浴びにいった。

その間に、私は火をおこす。超速で動ける私は、あっさりと火おこしに成功した。一気に火を大きくして、木を炭に変えていく。直接火に晒すと、焦げてしまうのだ。


作戦会議にあたって、自身のステータスを改めて整理してみる。レベルがあるわけじゃないけどね。


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【帆世静香】身体強化10P/武具創成0P

主な称号:[統べる者]

固有武器:千蛇螺の籠手

主な保有武器:魔女の杖、十字架の聖遺物×2、万理の魔導書

身体強化Lv7

保有スキル :ファストステップLv5、緊急回避Lv2、蛇喰・致命ノ毒Lv1


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レベルって概念あるんですね、ありました。

ファストステップは多用しているせいか、いつの間にかLv5になっている。スキル貰ったときはカクカクと3歩だけで限界だったが、今では敵の周りや壁を蹴ってしばらく継続することができるようになっている。

緊急回避Lv2は気が付かなかった。基本的にぺらっぺらの紙装甲で戦っているため、回避には神経を使っている。拡張された知覚によって回避できているのだが、何か補正でもあるのだろうか。

蛇喰・致命ノ毒。武器を持たない私の、初めての攻撃スキル。フニちゃん先生に頂いた、両腕の籠手に意識を集中させると蛇さんの頭が生えてくる。かわいい。このスキルは、蛇さんを通して私の血液を毒液に変換して相手に注入することができる。レベルもついているし、これは要検証だ。


スキルは新しい力が与えられるというより、自分自身で殻を破った結果として生えてくるものらしい。緊急回避なんか、発現したことすら気が付かなかった。


さて、拠点を作っている(´・ω・`)にも聞いてみる。



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【こもじ】身体強化5P/武具創成5P

主な称号:[侍][神刀の保有者]

固有武器:雲黄昏、兼長、千蛇螺の籠手

身体強化Lv5

保有スキル :近接戦闘Lv3、神刀の型Lv3、強者の風格


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こっちは、スキルそのものが変質している。枠が減ったのは統合されたということだろうか。

いまいちルールがわからない…。神刀の型って、めちゃくちゃ強そうなスキルが生えてるし。


「こもじー、神刀の型ってなによ。」


(´・ω・`)「古流居合って基本の12本の型と、それぞれの流派によって型があるんスけど…」


こもじの説明を要約すると、決められた剣の型を成功させると、後付けの形でスキルとして効果が発揮されるらしい。私のファストステップみたいに、スキルによって力を得るのとは異なる仕様だ。あくまで自分が技を成功させるという条件というのは、ゲーム慣れしている私には異質な気がした。


(´・ω・`)「いくっスよ~。」


≪神刀の型・前≫


こもじの腕が霞んだかと思うと、刀を鞘から抜くと同時に横に一閃。流れるように踏み込むと真っすぐ斬り下ろした。

こもじの相対する木が十字に斬り裂かれて倒れる。


いやいや、刀身よりも太い木を切り倒すってどうなってるん!?

おそらく対象を定め、刀が触れることで対象自体を斬り裂くというのがスキルによる異能なのだろう。すごい。巨大な生物相手でも、斬撃が通るということだ。


「親友が人間やめちゃってかなしいよ。しくしく」


(´・ω・`)「Gみたいに高速で動き回ってる人が何言ってんスか。」


「あ゛?」


「んんっ。こもじ、フニちゃん先生の籠手はどうなの?」


(´・ω・`)「めちゃくちゃ手に馴染むっスね。それでも、帆世さんみたいに動いたりしないっスよ。」


私のキャラを壊さないでほしい。今のところ、千蛇螺の籠手はスキルを発現していないみたいだ。


「皆さん、すみません。今戻りました。」


フニちゃんと巫さんが戻ってくる。こもじの水浴びは、一人でいいだろう。川に飛び込みに行った。


フニちゃんと巫さんは、私たちと住んでいる世界が異なる。そのため、ウィンドウは使えない。二人の話を聞いて、その能力をまとめていく。


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【巫唯依】身体強化3P/武具創成7P

固有武器:神環の鈴(しんかんのすず)、千蛇螺の籠手

身体強化Lv3

保有スキル :結界術

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神環の鈴は、7Pもつぎ込んで創った神具である。土着の神に語り掛け、その御力を広く作用させる触媒の音色を奏でるらしい。

巫さんの結界術は、これまでの戦闘でも多用している。神無き世界では、巫さんの触れた物くらいにしか作用させることができないらしいが、便利極まりない術だ。指印や祝詞によってさまざまな奇跡を起こす。

巫さんの世界では、日本を覆う大結界を張っているという。参考までに、もし巫さんの世界で千蛇螺や逆翼に対面したらどうなるのかを聞いてみた。


「私は、戦う術はほとんどないんです…ですが、おそらく封印するか…遠い大陸まで()()させることはできたと思います。」


うーん。とんでもない。巫さんの結界術は、準備さえすれば()()()()()ことだってできるそうだ。



つづいて、大活躍のフニちゃん先生。もはや、フニちゃんと呼べないかもしれないほどに活躍している。


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【ハラフニルド】身体強化10P/武具創成0P

固有武器:千蛇螺の籠手、幽影

身体強化Lv7

保有スキル :霊魂冥鎖(れいこんめいさ)魂材創成(こんざいそうせい)霊獣使役(れいじゅうしえき)

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かっこいい…。全く分かんないけど、すごくかっこいい…。さすがフニちゃん先生。

身体強化特化仲間だ!フニちゃん曰く、身体強化は体自体を強化しているわけではないらしい。存在としての格を引き上げるものらしく、それにつられて肉体が強化されているとのこと。なんかお得な気分だ。

幽影は武器枠に記載したけど、ペット枠を作った方がいいのかな。

霊魂冥鎖は、霊魂を一時的に使役すること。

魂材創成は、死せる体に魂を固着させること。それで作った装備は、神具となるらしい。

霊獣使役は、幽影のような非物質系のモンスターを使役すること。なんでも、巫さんが幽影の心を折ったことで成功したらしい。ナニしたの?


こうしてみると、私だけ普通すぎない? そもそも、私もこもじも【代表】じゃないしさ。なんで私達が来ちゃったんだろ。



:(´・ω・`):「寒いっス。」


こもじが帰ってきた。すでに4日目早朝。

4人で焼いた魚を食べる。白身に脂がのっていておいしい。分厚い皮も、火を通せばプルプルとしていて絶品だった。焼く際に腹に詰めていた香草の香りは爽やかで、程よい酸味が旨味を引き立てる。


「ぽよちゃんは、ほんとに良く食べるノ。料理も上手だワ。」


「ええ、武士は食わねど高楊枝と言いますが、腹が減っては戦はできぬとも言いますしぽよ。」


(´・ω・`)…今度それ真似しよっと。


そうして、しばらくぶりに、体を横にして休むことができた。前と同じく、巫さんを挟む形で抱き合って寝る。フニちゃんと私で、巫さんの争奪戦だ。わいわい騒ぎつつ、徐々に眠気がしのびよってくる。


明日は遺跡の探検だねえ、神様いるのかな。そんなことを話しながら平和な休息に入った。


事態が急速に動いたのは、その翌日。5日目の朝のこと。

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