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英雄の戦場~帆世静香が征く~  作者: 帆世静香
第三章 少しは進化の箱庭を進めましょう。
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閑話休題 マジカルバナナ バナナと言ったら(´・ω・`)

「あついぽよ~」


「暑いですね。」


「あちぃ~」


「あ゛ー、ビール飲んでいいか?」


(´・ω・`)そんな暑いっスか?


皆さん信じられるだろうか、2040年にもなって、こもじ家にはエアコンが存在していない。

年々地球温暖化が騒がれ、TVは歴代最高の暑さと毎年のように煽り、実際マジで気温が上がってきている昨今の風潮を、この男だけは40年間無視し続けて生活してきているのだ。


もっとも地球温暖化について、ぽよちゃん的見解は世間一般の物と少し異なる。地球は温暖化と氷河期を繰り返しており、氷河期になるくらいなら温暖化するほうが良いと思っているのだ。海面が上昇して沈む島があれば、毎年雪に埋もれて生活できない大地が解放されるともいえる。そうした大自然の循環に、人間如きが文句をつけてもしょうがないと思っているのだ。


お?反論か?

こっちにはアクシノムがついてるんだ、いつでも答え聞いてきてやんよ。


(´・ω・`)ぽよちゃん、カッカしないの。都市部の温暖化はアスファルトや人口密度によるものだとすれば、納得っすよ。


「んで、なんでエアコンないのさ」


(´・ω・`)心頭滅却すれば火もまた涼し。って子供のころに覚えてから、かっこいいなあって実践してたっす。ここまで来たら、今更買うのもなって。


とにかく、日本の夏はとても暑い。

湿度100%の蒸し蒸しとした空気がその不快感を数倍にぶち上げている。


「はぁ…でもここまで暑いというのは、私の村では無かったですから…はぁ…ちょっと新鮮な気持ちですよ。」


「ほらぁ!ミーシャが汗ばんでなんかえっちな感じになってるじゃん!ぽよちゃんアイス買ってくるから、ミーシャ一緒に行こ。」


「はぁい!」


サンダルを履いて玄関を開けると、さっと一陣の風が吹いて一瞬の涼しさを届けてくれる。

近所のコンビニに歩いていき、かごいっぱいにアイスを買い占める。


「ミーシャはどのアイスがすき?」


「どれも美味しいですが…柚子のシャーベットが好きです。しずか様と初めて外を歩いた日に食べた味なので、何となく好きになっちゃいました。」


うんうん。買いたまえ。私もシャーベット系は好きだから、同じのを買おう。


「こっちのバニラアイスも好きでしょ~」


「えへへ、しずか様はお見通しですね。故郷でもミルクをつかって色々つくっていましたから、懐かしい味です。しずか様が好きなのは、これですよね。レモンがのっかっているシャーベットアイス。」


「あったり~。ルカは抹茶アイスにはまってるし、エギルはちょっと高いブランデー風味のこれね~。」


「こもじさんは…どれにしましょうか。」


「んー、あっ!これにしよっと。」


「しずか様…?それは、違うような…?」



買い物を終えて、コンビニを出る。

家から出た時と違い、むわっとした空気に包みこまれてげんなりだ。


「ミーシャも、日本に慣れてきたねえ。それにPTメンバーとも仲良くしててうれしいよ。」


「ありがとうございます。皆さん、本当に良くしてくださいますから。」


「各人の好きな物とか、そういうのもパッと連想できるようになってきたよね。」


「あぁ~それは、そう思います。」


雑談をしていると、すぐにこもじ家に到着する。

男三人組が玄関の横にしゃがんで待っていてくれた。まあ、こいつらが待っているのは、私ではなくアイスだけど。


「ありがとうございます!」


「出迎えさんきゅ。ルカには抹茶アイスだよ~。」


「わぁ!ちょうど食べたかったんですよー!」


ルカにアイスと、薄っぺらい木のスプーンをつけて渡す。

そういえば、なんでこの手のアイスクリームはこのへんてこりんな形のスプーンを使うんだろうか。


「すまねぇな。俺のはどれだ?」


「うふふ、エギルさんにはこちらです。」


「おおー!俺ぁ、これが一番好きだぜ。良く分かったな!」


「帆世さんが選んでくれてましたよっ」


エギルは超強面だが、その実繊細な手先と舌を持っている。

大人な味のブランデー香るアイスがドストライクだった。

そして、こもじがわくわく顔で配給の列に並んでる。ぽよたんがこもじのために厳選したのは…


「ほい、こもじには熱々の肉まんを買ってきたぽよ」


(´・ω・`)ずっこー。え、ほんとに肉まん…


「汗を垂らしながら肉まんを食べるこもじをどうしても見たくて…はぁはぁ」


冗談だと思ったぽよか?

唯一別袋に入れられている肉まんを笑顔で手渡す。肉まんを食べさせて、豚汁味の汗を流させてやんよ。


(´・ω・`)ミーシャさんや、この変態をどうして止めてくれなかったんすか


「えへへ…こもじさんには、私がアイス買ってますよ。ガリ〇リ君ソーダ味です。」


(´・ω・`)疑って悪かったこも。はふはふ。敵はこいつ一人だったこも。はほはほ。


「いうて、肉まん食ってんじゃねーか。俺にも一口くれよ。」


エギルとこもじが肉まんを半分こして、そのまま縁側でアイスを食べる。

時々吹き抜ける夜風が風鈴を揺らし、夜だというのに蟻さんがせっせと働いている。


「寝れないし、しりとりでもしよー」


(´・ω・`)どの言語でするつもりっすか。


そっか、普段はウィンドウで同時翻訳が入るから気にしていなかったが

この場には出身地がバラバラであるため、三言語も存在しているのだ。しりとりをやっても、訳わからんことになるのは間違いない。


「じゃあ山手線ゲーム…もあれだし、マジカルバナナでどう?」


「ばなな?」


説明しよう。

マジカルバナナとは、リズムに合わせて言葉を連想させていくゲームだ。

連想とは十人十色。その人の個性や性格、知識や経験がもろに出るゲームであると言える。

出会ってから間もないチームの結束力を高める素晴らしい提案であるぽよ。


「では、ぽよこからいきます。」


ぽよこ「マジカルバナナ。バナナと言ったら、こーもーじ」


(´・ω・`)ちょっと待てぃ。なんで俺なんすか


早速物言いが入った。


「そりゃ、ゴリラとこもちんのダブルミーニングで…」


(´・ω・`)直球下ネタやめるっすよ。


「ほ、帆世さんって意外とそういう一面もあるんですね」


ルカが意外そうだ。


(´・ω・`)身内へのセクハラお化けっすからね。


「じゃあ、こもじからやってよー」


(´・ω・`)「へいへい。マジカルバナナ バナナと言ったら、黄色。」


ルカ「黄色と言ったら、太陽」


エギル「太陽と言ったら、目印」


ミーシャ「目印と言ったら、歌声」


ぽよこ「歌声と言ったら、孤児院」


そういえば、人生で二回も孤児院で育った。

生まれてすぐに自我と前世の記憶を持っていた私を、両親はなかなか自分たちの子供だと思えなかったようだ。すぐに孤児院に預けられ、六歳になるころには政府機関で一人暮らしをすることになった。その時の孤児院は特に何の感情も沸かなかったが…二度目の孤児院は魂の安らぐ私の故郷のような場所だ。もう行くことはできないけれど。


(´・ω・`)ムズカシ…「孤児院と言ったら、子供」


ルカ「子供と言ったら、夏休み」


エギル「夏休み?と言ったら、夏休みってなんだ?」


終了~。

思ったよりすぐ終わってしまったが、エギルが夏休みを知らないのは無理もない。

もっとワイワイなるかと思ったが、それぞれが一癖も二癖もある人生を送っている。何となく連想される物が難しかったようだ。


「夏休みってのはね~頑張った人が、暑い夏に休みを取ってバカンスに……私達も行きましょうか、バカンス!」


そうと決まれば、早速手配だ。

UCMCに依頼されていたクエストのついでだし、色々準備してもらおう。


「えー、明日の朝出発で海にいきまーす!持ち物を準備して、寝ますよー!私はちょっと色々準備にUCMCに行ってくるから、明日ここで集合にします!」


(´・ω・`)ぽよちゃん、判断が速すぎて皆を置き去りにするっすよね。


「帆世さんが行くなら、私もついていきたいです。」


本人の希望もあり、ミーシャを連れてUCMCに赴く。

準備をお願いすると、ミーシャは40秒ほどで二人分の水着とその他必要な物を揃えてしまう。これなら海賊に採用されるね。


「海賊?エギルさんですか?」


そういえば、うちには本物さんがいたわ。

ごめん。わすれて。


UCMCに到着すると、明日から七月使徒を攻略するために向かうことを通達する。

そのために必要な船、物資、前から依頼しておいた物を大至急準備してもらう。沖縄まで飛行機で移動し、そこからは船で現地に向かう手はずとなった。


「ここは涼しいですね。空気がぱりっとしてる気がします。」


「そうねえ。文明の進歩ってやつね。それじゃあ、今日はここの私の部屋に寝ましょうか。」


「いいですね!そうしましょう!」


心なしか、ミーシャのテンションが高い。

涼しい土地で育った分、蒸し暑い日本の空気には耐えられなかったのかな。もう少しで私達のクランハウスもできることだし、それまでの辛抱よ。


「…二人で寝るのも久しぶりね?」




そして翌朝。

うきうきの三人組を拾って、飛行機にのって一路沖縄へ。飛行機に乗ってしまえば2時間で那覇につくし、意外と近い。飛行機の中ではずっと寝ていて、特に記憶に残るようなことは無かった。昨日の夜は()くて寝れなかったからしかたがないでしょ…?


港につくと、周囲の船を圧倒する巨大なクルーザーが停泊してあった。

これが、私が無理を言って手に入れた、今回の私達の足である。


「こいつぁ…すげぇな。」


「スーパーヨット、名を希望の船…」


(´・ω・`)ギャンブルでもするんすか?


「冗談よ。DRENGRSKIP(英雄達の船)、船長はもちろん我らがエギルよ!」


全長46m、トライデッキの美しい流線形フォルムをしたスーパーヨットだ。鼻先が槍のように尖っており、非常にかっこいい。


チタンを使った三重構造の船体は、クジラを轢いてもへこまないし、穴が開いても沈まない。

CAT3512B(2000馬力)というバカみたいに大きなエンジンを三つも搭載しており、最大航海速度は50ノット(時速約90㎞)を出すことができる。燃料も6万ℓ入れることができ、どんな海だろうと息継ぎなしで横断してしまうことが可能だ。


その代わり、過度な内装は取り除き、徹底した機能美だけを追求するつくりとなっている。本来の豪華クルーザーというなりは潜め、駆逐艦に近い風貌で周囲を威圧するように碇を下ろしていた。

規格外の大きさとパワーを備えた分、扱いが非常に難しいじゃじゃ馬のような船だ。


「かっけーー!!!」


(´・ω・`)うひょー!


ルカとこもじが、我先にと飛び乗り、エギルは丁寧に船の全体を確認している。

その目つきは、医師が患者を診るような、侍が刀を視るような、両親が子供を見るような、厳しくも丹念で丁寧なものだった。


「DRENGRSKIPードレングルスキップ出航ー!」


ゆっくりと港を出て、沖に向かう。

四人で船内を探検したり、エギルの操舵を眺めたり、水着に着替えて釣りの準備をしたりと退屈しない。


「野郎どもォ!アゲてくぜぇ!」


「あいあいさー!」


エギル船長の気合十分、沖にでたドレングルスキップ号は速度をグングン上げていき、トビウオのように海面を疾駆する。その高速操縦のなかにおいても、エギルは完璧に波の流れを読んで、船を手足の如く動かすことができた。


あっという間に、本日の目的地である慶良間諸島に到着する。

那覇市からそう遠くない南国の海に浮かぶこの島は、昔は知る人ぞ知る観光スポットとして人気を博していた。深い緑の森、白い砂浜、蒼い海、黄色い太陽。透き通った海に、一度潜れば色とりどりの生命が出迎えてくれる。


しかし、使徒が襲来するようになったことで社会が変わってきている。

人々は、このような離島や僻地からできるだけ都市部へと移動するしかなかった。いつ怪物が襲ってくるかもわからない上、都市を守るにはそれなりに人手が必要不可欠だ。そうした事情から国は人々の移住をサポートしている。


もとから人が住んでいなかったこの島は、今や当然無人島である。



「さ、上陸するわよー!」


これは訓練でもあり、バカンスでもある。

大いに海で遊び、水中での活動に慣れることが目的だ。


「今日は海鮮BBQよ。各自、めいいっぱい食材をとってきなさーい!」


(´・ω・`)「「おっす!」」


男三人組がこっちを向いて筋肉を見せつける。

こもじは太い、エギルはデカい、それに比べるとルカはまだ細く見える。

私達の夏休みが始まった。



挿絵(By みてみん)




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