閑話休題 制裁
ウィンドウの存在は、まさに人類にとって技術的ブレイクスルーをもたらしたと言える。
全人類が必ず携帯していて、スマートフォンでできる機能を十全に…いやそれ以上に内包しているのだ。ウィンドウの機能は日夜アップデートされ、既にスマートフォンを持っている人は絶滅危惧種のようになっていた。
しかし、インターネットも手紙も、完全には無くなることは無い。
昨今では闇スマホなるものが流通し始め、特定の団体が提供するインターネット回線をもちいて、ウィンドウではやり取りできないような暗い仕事に使われている。
その闇スマホが、とある団体の逆鱗に触れたお話をしよう。
俺の名前はルカ・サンティス。隣に連れているのは、ミーシャさんだ。
今日俺達が向かっているのは、≪白の英雄を称える会≫、通称ぽよたん教の幹部会合である。ちなみに、この通称だが、我々の信仰する帆世さん自身の提案であるため、近いうちに組織名が変わるという。
“堅苦しい名前だとガチ信仰されそうだから、ゆるく活動しなさい”
というお言葉だったらしい。俺とミーシャは、進化の箱庭を出てすぐに加入した。
帆世さんのPTメンバーである俺たちの加入は、ぽよたん教組織を大変に騒がせ、こうして緊急会合が行われることになったのだ。
「ここ、みたいですね。」
俺達の泊っているこもじさんの家から、川沿いに歩いて2㎞ほど。
着いたのはロームシアター京都という大きな建物だった。続々と人が集まっており、俺達も中に入る。
「ルーカ様。ミーシャ様。ご案内いたします。」
流れるように連れていかれた先は、この建物のメインホール。
オーケストラの演奏を行う舞台を想像してほしい。その舞台の上にはアンティークな大テーブルが設置され、ぽよたん教幹部がずらり勢ぞろいしていた。
2000人を超える収容力を誇るホールにも、一席の空席が見当たらないほど人が集まっている。
俺達二人の着席をもって、緊急会合が実施されることになった。
まずは自己紹介を促される。
「名前はルーカ・ディ・サンティス。ヴァチカンの黒聖堂で悪魔に囚われていたところを、帆世様たちに救って頂きました。現在はクラン:英雄の戦場に所属しています。本日は、もう一人のミーシャと共に作成した教義草案を届けに来ました。」
簡単な自己紹介に、ホールが割れんばかりの拍手で歓迎される。
本日の議長が拍手をおさめ、続いてミーシャの番だ。緊張しているかな、と思ったが、その瞳には微塵の揺らぎも無い。
「私の名前は、ミーシャです。進化の箱庭第六層で命を落とし、二度目の生命を帆世静香様に救われました。帆世静香様のために、この命尽きるまで。」
これだ。ミーシャは、帆世さんのことになると、普段は見せない雰囲気を宿す。
その覚悟と力は会場に集まっていた全員の心に刺さったようだ。万雷の拍手が送られる。
「ありがとうございます。お二人を、我らがぽよたん教の最高幹部に迎えること、この拍手をもって採択とさせていただきます。」
議長の言葉だ。
そして議題は、俺達の作った教義草案に移行する。帆世さんは圧倒的功績と奇跡を残している反面、人々と語らう時間はほとんど取っていない。
俺達の役目は、帆世さんに代わって、彼女の言葉を人々に伝えること。かつては、聖パウロやイグナティオスが果たした役目であるといえる。
さてさて、帆世さん自身からお墨付きをいただいている教義は順調に採択され、本日の緊急会合は無事お開きとなった。しかし、問題はこの後。幹部陣だけが残され、もう一つの問題に話し合うことになった。
「皆さま、こちらをご覧ください。」
議長がスクリーンに映したのは、とある掲示板のスレッド。
【悲報】帆世静香さん晒されるwwwwwwwwスレ296★
1 :名無し戦術民:2040/07/08 (日)16:48:21.955 ID:???????
ここは"ぽよたん"こと帆世静香のアンチスレです。
・信者の自演はスルー推奨
・信者の突撃禁止。信者は巣に帰れ
・sage進行でお願いします
・次スレは>>970が立てること
【過去スレ】
★1:https://…
★2:https://…
★3:https://…
【関連スレ】
帆世静香エ〇画像 part68:https://…
こもじスレ part15:https://…
---
2 :名無し戦術民:2040/07/08(日) 16:49:15.798 ID:???????
今京都にいるってマジ?????
情報スレにそれっぽい写真上がってたが…
3 :名無し戦術民:2040/07/08(日) 16:49:16.823 ID:???????
ぽよたん教とかいうマジの洗脳集団ww
4 :名無し戦術民:2040/07/08(日) 16:49:44.497 ID:???????
こんなとこに引き篭もってないで働けよ ゴミ共
5 :名無し戦術民:2040/07/08(日) 16:49:58.114 ID:???????
/⌒ヽ
⊂二二二( ^ω^)二⊃ 信者がまた発狂してて草wwww
\_/
/ \
/ \
6 :名無し戦術民:2040/07/08(日) 16:50:22.782 ID:???????
アメリカ大統領襲ったテロリストだろ。
世界の平和守る英雄気取ってるの気持ち悪すぎる。マジでこいつ嫌いだし、その信者も嫌い。
俺の職場は外資系IT企業だけど信者多すぎて不快だわ
7 :名無し戦術民:2040/07/08(日) 16:50:51.364 ID:???????
真面目に何が支持されてるのか分からん
チート能力貰っていきってるだけじゃん。
8 :名無し戦術民:2040/07/08(日) 16:51:30.452 ID:???????
>>6 唐突に始まる自分語りww
---
「このように、取るに足らない戯言が投稿されている一方で、こちらもご覧ください」
【京都】帆世静香情報総合66
1:名無しの捜索隊
前スレ
【京都】帆世静香情報総合65
帆世静香の情報総合スレです。
目撃情報や過去の情報を収集しています。
情報の売買は個人DMで行いましょう。
次スレは>>950で。
2:名無しの捜索隊
これまでのまとめ
★昨日京都市内で目撃情報多数
★金髪イケメンとのデートの目撃情報多数
★金髪カップルに同行してるだけ説?
3:名無しの捜索隊
>>2
全然まとめれてなくて草
住所分かってんだから、京都にいるやつは突撃推奨
4:名無しの捜索隊
住所ここな
https://maps.app.goo.gl/2hDgyrGslRlmns
5:名無しの捜索隊
昨日俺が買った写真晒します。
極秘写真もあるので情報持ってる人で交換希望
https://i.imgur.com/hdoutr743r.jpeg
https://i.imgur.com/gofdeu03k.jpeg
https://i.imgur.com/YyuihdQ7J.jpeg
6:名無しの捜索隊
>>5 ありがとう。有能。
幾らで購入したか聞いてもよろしいでしょうか?
7:名無しの捜索隊
>>5 眼福です。極秘写真の詳細知りたいです。モザイク有りでいいので
8:名無しの捜索隊
>>6
>>7
これは本物って確認が取れたから1枚1万で買った
極秘写真は着替え中と、夏祭り中の写真だ。絶対に極秘と言われてるが、帆世静香の尻を触ってる動画もある。
https://i.imgur.com/HduwyfKL8.jpeg
9:名無しの捜索隊
【緊急】大阪スレで目撃情報あるらしい
10:名無しの捜索隊
>>3 お前が池
11:名無しの捜索隊
↑マジで行かない方がいい。
ただし家の中を覗けるスポットがある。
12:名無しの捜索隊
なんで行っちゃだめなんだ?
13:名無しの捜索隊
過去に大怪我したやつがいる。詳細はこのスレッド見てくれ
【突撃】帆世静香の家にカチコミにいきまーすwwwwwww
14:名無しの捜索隊
有名なヤツな。グロ注意だから苦手な奴は見ない方がいい。
ところで、大阪スレの情報デマじゃね?新しい情報全然更新されてねえぞ。
15:名無しの捜索隊
>>8 買います。
16:名無しの捜索隊
:8です。下記QRコードに送金確認できた人に送ります。
https://i.imgur.com/hdsdtr79Jr.jpeg
17:名無しの捜索隊
話の流れ切ってすまん。
今京都のロームシアターで信者が集合しているらしい。そこに突撃する配信やってる。
https://www.yuutube.com/live/udowgiy=duwJAShpidy8bwy
マジで突入するらしいwww
18:名無しの捜索隊
“本物”っているよな。俺も見てる。
コイツの過去投稿スレッド特定したからおいておく。
【真実拡散】使徒襲来の原因はこの人です。【騙されない】
抜粋↓
帆世静香の大統領襲撃事件の真実判明
この映像をよく見てくれ、俺じゃなかったら見逃していたが、銃に
対して の 周囲の動き!
で、ここも 動きが変。追加画像も よく見ろ!
奇妙なことに皆さん気が付きましたか???
そう、だから 帆世静香のせい。帆世静香が行った場所に、使徒が襲来しているのが その証拠です。
この後アメリカでも ダンジョン できました。帆世静香が つくったのです。それを攻略している 真の英雄から 私は依頼されました。
こういうと 陰謀論者扱い されるけど
俺だけは真実を発信しないと この世界がおわってしまう!!
気が付いた 人 力をかしてほしい!!俺が世界を救う!!
19:名無しの捜索隊
>>16 こいつ嘘です。詐欺!
8は俺です。DMでしか話しません。
20:名無しの捜索隊
>>19 エ〇画像は、エ〇画像スレにいってどうぞ。
>>18 香ばしいww でも政府とマッチポンプだと俺も思うわw
スレッドは似たようなものが無数に乱立しており、これは海外のサイトでも同様だという。
特に写真には盗撮された物もあるが、大半はAIを用いて作られた偽物が出回っていた。
目を覆いたくなるような下品でグロテスクな写真や動画が溢れ、それらが高値で売買されているのだ。
一部には俺やミーシャの加工された画像もあった。
「そして、実際に今日乗り込んできた男を捕まえています。」
議長が合図すると、別室から拘束された男が連れてこられた。
ぼさぼさの髪の毛は、汚くまだらに染められている。じたばたと暴れながら、唾を飛ばして怒号を飛ばしている。
「おまお前らが世界をははめ破滅にってんだろがぁああ」
「静かにさせてください。話もできん。」
議長が犯人を黙らせ、その持ち物を机の上に出していく。
火炎瓶にダイナマイト、改造銃、百均の包丁、水、眼鏡ケース、そして闇スマホ。
「お集まりいただいたみなさん。これをどう思いますか?」
問いかける議長。
「最近この手の輩が増えましたわね。」
「我々に手を出すならまだしも…帆世様を穢すとは許しがたい…」
「我々が行っている都市防衛壁の工事にも、時々妨害デモが発生しています。」
答える幹部会。そこで、俺は持ち物の奇妙な点に気が付く。
「すみません。この持ち物、何かおかしくないですか?明らかに常軌を逸した人が、ダイナマイトや改造銃を入手できるわけがない。民間人に武装許可が出たのも最近ですし、それは正式に申請しないと買えないはずです。」
殺傷力の高い武器と、そうでないものが混在している。
包丁に至っては買ったばかりなのか、レシートが出てくる始末だ。
「たしかに、こんな男に準備できるとは思えん…」
「私が、直接聞いてみましょう。」
幹部会に参加していた女性がすっと立ち上がる。
暴れる男の前に歩いていき、すぐ目の前で膝を地面についてしゃがみこんだ。
「手荒な真似をしてごめんなさい。あなた…そんなに悪い人に見えないんだけど、今日はどうしてこんなことをなさったのですか?」
剣呑とした空気を、優しく包み込むような声。
彼女を前にした犯人は、次第に声が小さくなっていった。その様子を見た彼女は、犯人の肩に手を置いて、背中をさすりながら話を聞き出していく。
「世界の破滅を、俺が止めなきゃいけないと思って…」
「そう。あなたの正義感がそうさせたのですね。」
「あぁ…あの、俺…どうなっちゃうのかな…」
「悪いのは貴方ではありませんよ。誰か、貴方のお仲間がいらっしゃるのですか?」
「みんな、俺を応援してくれるんだよ。そう、世界の真実をみ、見つけたんだ。だから俺がやらなきゃいけないんだ!」
「人望があるんですね。あのスマホを見せていただけますか?」
「いや、スマホは人に見せてはいけないって…無理だよ!」
「そう言われたんですね。無理にお願いはしませんよ。他に、貴方の仕事はなんですか?」
「た、探偵をしてるんだッ アメリカで仕事をすることだってあるんだぞ!」
「まぁ。凄い方なんですね!」
「あぁ!帆世静香の写真を取れば、凄く金にもなるんだッ だから…」
「はい。もう十分です。指、貰いますね」
グギッ 犯人が手をあげて語り始めた瞬間、それまでに温かかった声は絶対零度の響きに変わり、広げられた人差し指を根元からへし折った。
絶叫する犯人の頭を踏みつけ、スマホの指紋認証に指をかざす。
パッと画面が明るくなり、スマホのロックが解除された。
「良かったですわね。一本目で開いて。お前のような者が、帆世様の足を引っ張らないためにわたくし達がいるのです。」
闇スマホの写真や動画フォルダには、無数の肌色がひしめき、そのほとんどが帆世さんの顔を加工して作成させたものだ。
それらの写真を掲示板で売って小銭を稼いでいた形跡も残っている。インターネットの掲示板では昼夜問わずあらゆるスレッドで誹謗中傷を繰り返していたことも分かった。
「おぞましい…」
「おそらく、彼に指示をしていた男はこれですね。数分前に投稿履歴を消して、トークルームから退出しています。」
杜撰に残された数々の軽犯罪の証拠。
逆に、奇麗にすべて削除されたトークルームが怪しさを際立たせていた。このスマホから相手は特定できないが、やはりこの男は使い捨ての末端にすぎない。
「比較的大きな組織がいるのかもしれません。帆世様を食い物にして金を稼いでいるとは…」
「むむ、送金履歴に八坂連合がいますね。」
スマホを調べていた人が、一つの名前を口にした。
「八坂連合?」
「ええ、このあたりにある反社集団ですよ。一時は、極めて暴力的だったことで有名なんです。今でも良くない噂が…」
「八坂連合か…この画像を作ってるのも彼らだろうか…」
会議が重たい空気に包まれたその時、ここまで一言も発していなかったミーシャがすっと立ち上がる。
そして、俺の手を引いてこういった。
「そろそろ帆世さんが帰ってくる時間です。シチューを作る約束ですよ?」
「あぁ、そうだった。」
ぐいぐいと手を引っ張られ、俺たちは会議を抜けることになった。
犯人は警察に引き渡し、今後も調査と警戒を続けるということだ。
ホールから出ると、ミーシャは近所のスーパーに向かって歩いていく。
「ルカさん、私達が一番大切にすることは、帆世さんです。」
五人分のシチューをつくるのに十分な量の食材を買いながら、ミーシャがそう言った。
なるほど。ミーシャとしては、犯罪者に関わるよりも帆世さんとの約束を優先すると。
「ああ、間違いないぜ。でもなぁ…胸糞悪い連中だ。さっさと忘れないとな。」
はぁ、とため息が漏れる。
帆世さんの写真を盗撮し、あまつさえ酷い加工をして売りさばく。そうやって小銭を稼いでいる人間や、彼らから金をさらに巻き上げる反社組織まであるのだ。
帆世さんがどれだけの覚悟を持って、人類のために血を流して戦っているのか。彼らには欠片も理解できないに違いない。
考えるだけで、むかむかと腹が立ってくる。画面越しに、ぶん殴ってやりたい気分だ。
いかんいかん……気持ちを切り替えようと頭を振る。
「あれ?ミーシャ?」
顔をあげると、隣を歩いていたミーシャが居なくなっていた。
人通りを避けて、少し入り組んだ細い道を通っていたのがいけなかったか!
さっきもテロ犯を見たばかり。顔写真が出回っているミーシャがターゲットにされてもおかしくはないと、どうして失念してしまったのか。
「ミーシャ!どこにいるんだ!?」
声をあげて探そうとしたとき、影から出てきたように、ミーシャが姿を現した。
その手を見て、驚愕する。
「うわっ…誰それ?」
ミーシャが気絶した男の首をつかんで、ずるずると引きずってきたからだ。
その男をみぞに投げ捨て、さらに手にしている闇スマホを地面に叩きつけて踏みつぶす。
「この方が誰かは存じませんが、八坂連合の場所を教えてくれました。」
ミーシャが足早に動き始め、俺もその後を追いかける。
太陽が山に隠れていくなか、薄暗がりの街を影から影へ滑るように走っていく。
「ここが、八坂連合のアジトか。」
着いたのは街の外れ。廃工場と、隣接するように鉄筋コンクリートのビルが建っていた。
遠めに見ても柄の悪い男どもがちらほら見え、鉄筋コンクリートのビルは分厚い扉で閉ざされている。
「ミーシャ、どうするんだよ。こいつらに関わらないんじゃなかったのか?」
「一番目が帆世さんです。それを穢した人たちを許すわけがないじゃないですか。」
俺はようやく気が付いた。
激怒した時、ミーシャは静かに黙る性格だったらしい。いつも儚げに微笑んでいる彼女の目には、今や剣呑な光が宿っている。
「ベルフェリア。」
『はい。ここにいますよ。』
ミーシャが銀爪ベルフェリアを引き抜き、八坂連合のアジトに向かって歩いていく。
その後ろ姿は、磔にされた俺を背に守って戦った帆世さんに重なって見えた。
ガッシャーンッ!!!
乱暴に横なぎに振るわれた刀が、黒紫の稲妻を走らせて、分厚い門を轟音と共に吹き飛ばす。
門の破片が宙を舞う。鉄骨の軋む音、爆ぜる火花、舞い散る粉塵。スズメバチの巣をバットで殴ったように、中から男達が飛び出してくる。
「オンドレ 何晒してくれとんじゃコラァ――!!!」
怒声を発して出てきた大男。その名は八坂烈道。彼の情報がウィンドウの検索によってヒットした。
八坂連合の看板ともいえる武闘派のヤクザであり、数多くの殺人事件を起こしていると噂されている。
なぜ、噂なのか。それは、実際に裁判が行われていないため、詳細が明らかではないからである。
司法取引によって裁判を受けることなく刑務所に入り、刑務所内では強烈なカリスマ性と暴力によって一大派閥を築き上げた。刑務所内の王として君臨し、正式に出所して以降、刑務所内で知り合った犯罪者を傘下におさめて八坂連合を結成。
京都で猛威を振るった最大の犯罪集団となっていたが、ある時期を境に構成員が相次いで大けがをしたため規模が縮小している。
最近は、八坂烈道に二つのスキルがあることが判明し、一部報道されるなど名前が再度広まった。
スキルの詳細は不明だが、八坂の刑務所の伝説を裏付ける証拠と言える。
剛腕武闘:素手での戦闘に補正?
逆鱗撃:怒りにより攻撃補正?
この二つのスキルの存在もあり、現在のような軽犯罪を警察は見て見ぬふりをしているのではないかと予想する人もいる。
「てめえら!!出口を固めろ」
八坂烈道が、吹き飛ばされた鉄の門を掴み、片手で持ち上げるとビルの入り口に投げつける。
ミーシャが粉塵により見えなくなってしまった。
ただ声が聞こえる。
『貴様は私の主を侮辱した。』
「私は私の主の穢辱を許さない。」
裁きは天から下るとは限らない。
地の底から響き、異界より飛んでくる罰だってあるかもしれない。
『響け福音 主の成すままに』
「照らせ我が剣 主の征く道を」
――【顕現】――
銀爪・ベルフェリア。
「お待たせしました。彼らはもう立てません。」
ミーシャが言う。
振るった刀はビルを両断し、それを見ていた者の魂を折った。
地に這いつくばり、糞尿を垂れ流している彼らの事は既に目に入っていないらしい。
「ハハ…何がどうなって…」
「もうこんな時間っ。シチューが間に合わなくなっちゃう」
やばいよーと、おれの背中を小さな手がぐいぐいと押してくる。
そこにはもう、剣呑な光もなければ、ビルを両断する力も籠っていなかった。
「帆世さんってそんなにシチューが好きなのか?」
「ええ、私の夢の話なんですが――」
八坂烈道が強い理由は、キーンと同じです。
「魔王キーンの計画」、R18でノクターンノベルズにて掲載中。
八坂連合が弱体化した理由はEP52にちらりと。
ミーシャが強い理由は、帆世静香と夜にあれこれしてる情熱がベルフェリアに力を供給しているからです。
「ミーシャの告白」など同じくR18ノクターンノベルズにて。