エピローグ:春の訪れ
冬の奇跡が起きてから数ヶ月。冷たく閉ざされていた大地は、ゆっくりと春の訪れを告げる兆しを見せていた。
リオが救った村々では、雪解け水が川を満たし、山々には柔らかな緑が広がり始めていた。村人たちは、冬の災厄の中で失われた日々を取り戻すように、土を耕し、種を蒔き、未来への準備を進めていた。
村の広場では、子供たちが元気に走り回り、春の訪れを祝う祭りの準備が進められていた。その中に、リオの姿があった。彼女は祭りの中心で手伝いをしながら、どこか穏やかな笑みを浮かべていた。
「リオ!新しい花冠を作ったの。これ、被って!」
少女が差し出した花冠は、春の花で編まれたもので、明るい黄色と緑が鮮やかだった。リオはそれを頭に乗せて、笑い声を上げた。
「ありがとう、とってもきれいね。」
その時、風に乗ってどこからか聞き覚えのある冷たい気配が漂ってきた。リオが振り向くと、遠くの森の影からフロストの姿が現れた。
「フロスト!久しぶりね。」
リオは駆け寄ると、彼に笑顔で声をかけた。フロストは相変わらず無表情だったが、どこか柔らかな眼差しを向けていた。
「リオ、君が幸せそうで何よりだ。」
フロストの言葉にリオは頷いた。
「あなたのおかげだよ。みんな、こうして新しい春を迎えることができた。」
フロストは少しだけ笑みを浮かべると、再び森の影に溶け込むように姿を消した。
祭りが夜になると、広場には無数のランタンが灯され、空に舞い上がった。それぞれのランタンには村人たちの願いが書かれていた。
リオもまた、一つのランタンを空へ放った。その中にはこう記されていた。
「すべての人が自分らしく生きられる未来を。」
ランタンが星空に吸い込まれるように上昇し、彼女の願いがこの広大な世界に広がっていくようだった。
その夜、村の外れにある湖に、再び虹色の光が差し込んだ。それは、かつてリオが奇跡を起こした「願いの湖」だった。湖面には柔らかな花が咲き始め、春の風に揺れていた。
村人たちはその光景を見て、リオが成し遂げた奇跡がこの世界に残した痕跡であることを確信した。
翌朝、リオは静かに村を後にした。肩には簡素な荷物と、春の花が一輪飾られている。
「まだまだ見たい景色があるから。」
彼女の旅立ちは誰も止めなかった。むしろ、村人たちは彼女の背中を見送りながら、新たな希望を胸に抱いた。
リオの歩みはやがて世界を巡り、新たな物語を紡いでいく。それがまた、誰かの春を呼び起こす奇跡となるだろう。
雪解け水が小川を満たし、花々が咲き乱れる中、リオの旅路は続いていった。やがて、その背中が朝陽に溶け込むように見えなくなると、村にはまた一つの春の風が吹き抜けた。
それは、リオがもたらした未来への希望の風だった。
初投稿でした。楽しんでいただけたら幸いです。
私の冬の物語は昨日大掃除で布団とか断捨離だぜ!とバンバン捨てたら、気づいたらメインの布団捨ててしまって夏用シーツにくるまって寝たことですかね。
召されるかと思いました。