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第四章:氷の鏡の試練

宮殿の大扉をくぐると、リオは息を飲んだ。内部は広大な氷のホールになっており、無数の柱が天井まで伸び、淡い青い光があたりを包み込んでいた。柱には古い文字が刻まれており、それが何かを語りかけているように感じた。


「これが……氷の宮殿……」


リオが呟くと、フロストが静かに前に進んで振り返った。


「この先に“氷の鏡”がある。だけど、その前に、もう一つ試練を乗り越えなくてはならない。」


「また試練なのぉ……」


リオは肩をすくめたが、その言葉に隠せない緊張が混じっていた。




ホールの奥に進むと、巨大な氷の彫像が目に入った。それは人間の形をしているが、片手に剣を、もう片方に盾を持っている。まるでリオたちの到着を待っていたかのように、彫像がゆっくりと動き始めた。



「侵入者よ。この宮殿に足を踏み入れるには、自らの真実を語れ。」




低い声がホールに響く。リオは一瞬たじろいだが、フロストが冷静に言った。


「君の心にあるものを偽りなく答えるんだ。この守護者はそれを見抜く力を持っている。」


「私の心にあるもの……」


リオは目を閉じ、胸の鍵を握りしめた。村での暮らし、夢で見た宮殿、そして氷の魔女の話――すべてが頭の中を駆け巡る。




「私は……自分が何者かを知りたい!」




リオの言葉に守護者は静かに動きを止めた。しばらくの沈黙の後、守護者は頷くように首を動かし、道を開いた。




「その心に偽りなし。進むがよい。」




奥の扉を抜けると、そこには大広間があり、その中央に巨大な鏡が立っていた。鏡は普通のものではなく、氷でできているにもかかわらず、表面は完全に透明で、奥深い光がゆらめいていた。


「これが氷の鏡……」


リオが近づこうとしたその時、鏡の中に自分の姿が映り込んだ。しかし、それは単なる姿ではなく、まるで別の世界のリオが映し出されているようだった。鏡の中のリオは、剣を手にし、目に強い決意を宿していた。


「……これは……私?」


リオが呆然としていると、鏡の中のリオが口を開いた。


「リオ。君が探しているのは、単なる知識じゃない。自分がどんな存在でありたいのか、その答えを選び取ることだよ。」


「選び取る……?」


「そう。君がその鍵をどう使うかで、この世界の未来は大きく変わる。魔女を完全に封じる道を選ぶのか、それとも彼女の力を受け入れて、新たな秩序を築くのか。」


リオの心臓が大きく脈打った。自分がそんな選択を迫られるなんて、夢にも思わなかった。


「……私にそんな選択をする資格本当にあるの?」


鏡の中のリオは微笑んだ。


「資格は自ら作るものだよ。君の覚悟が、この道を切り開く。」


その瞬間、鏡の中から眩い光が広がり、リオは思わず目を閉じた。

気がつくと、手の中の鍵が微かに熱を帯びていた。



フロストが近づき、優しくリオの肩に手を置いた。


「よくやったよ、リオ。鏡は君に選択の重みを教えたんだ。」


「でも……私にはまだわからない。この鍵をどう使うべきか……」


「焦らなくていいよ。これから先、君が見て、感じて、選んだ道が答えになる。」


リオは静かに頷き、鏡を最後に振り返った。そして、心に決意を宿して歩き出した。


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