表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

ep.01

よろしくお願いします。


あーーーー、腹減った。



手足を放り出して夜空を見上げた。魔法があまりにも楽しすぎてつい夢中になってしまったのだ。気がつけば知らないところまで来ていた。朝から出たのに景色は暗かった。


困ったなぁ、、、。


夢中になったら魔力が枯渇するまで続けてしまう。我に返った時にはもう活動限界を軽く超えて動けない。昔からの悪い癖だ。仕方ない。それが僕だ。


「さて、どうしよっかな...」



 働かない頭でぐるぐる考えてはみるが、


ーーーよし、何も浮かばない。




その時だった。

向こうのほうから人が近づいてくる気配。


数は...二人か


どんな者が来るかわからない今、出来るだけ息を潜めるしかない。と、いっても地面に大の字。格好が格好だ。気配を潜めても簡単に見つかってしまうだろう。

見つかったら見つかったで仕方ない。どうにもできないのだから考えたって仕方がない。

なるようになる。それだけだ。


「ロネリア様、どちらへーーー」


 男の声がする。近づいてくる気配は二人。声を発していない方の魔力が化け物なみに凄い。なんだこれ、僕死ぬの?


そんなことを呑気に考えつつ、とうとうここまで来てしまったニ人の姿に驚いた。

、、、女の子?

先ほど聞こえた声の主は予想通り壮年の男だった。それはいい。予想通りだ。

ところで、このものすごい魔力を溢れさせていた人物。この子は一体何者?

煌めく白銀の髪と、黄金の瞳。王都一の職人が作ったドールのような完璧な美しい顔と、生気を感じさせない無表情。あまりにも美しすぎる少女に息を呑んだ。


ーーーーーーあれ...この子どこかで


「そなた、何者だ...」


僕の姿を見て驚いた壮年の男は少女を背に庇い、地面にひっくり返っている僕を見下ろした。警戒しているその声音に苦笑いがこぼれる。そりゃあびっくりするよな。こんなところでこんなボロぞうきんみたいなのが寝転んでいたら。でも安心して欲しい。僕今、動く力がない。お腹減ったし。


「あ〜...驚かせてすみません。元気になったら動くので放っておいてもらえるとありがたいのですが」


なんてへらへら答えていたら男は怪訝な表情で僕の全身を上から下まで眺め、口を開いた。


「ここはサウンズハイド公爵家の敷地内。侵入者を防ぐ結界が張ってあったはずだ。どうやってここまで入った。それにその怪我...どうやって動くつもりだ」



あ〜なるほど。

まっずいなぁ...

そういえば、このあたりに来た時から魔力を大量に消費していたし、通りで色んな仕掛けが飛んでくるはずだ。お陰で至る所の骨はバキボキ折れるし、右腹に穴が開くし大惨事だ。そして、僕の集中を切れさせるのだからとんでもないところだなと思う。さすが公爵家だ。すごい魔法使いがいるにちがいない。なんて、ワクワクする気持ちを必死に抑えながら冷静を装った。


「まさか、公爵様のお屋敷だったなんて。

大変申し訳ありませんでした。どうかご容赦を。怪我は放っておいたら治りますので、動けるようになったらすぐ出て行きます...」




眉尻をこれでもかというほど下げて懇願してみる。格好が残念ではあるが動けないから仕方がない。

そんな僕の言葉を聞いてさらに困惑の表情をみせた男は少女を見た。どうやら、彼女がこの男の主人らしい。っということはサウンズハイドの令嬢か。こういうことは疎いからなぁ僕。

少女はすでに男の背からずれ、こちらを相変わらずの無表情で眺めている。


弱々しく微笑んでおくか...

と、表情を取り繕ったその時、

少女が口を開いた。静かに、そして誰もが聞き惚れてしまいそうな美しい声で...



「苦しんで死んで



ーーーーこの人を殺して」








なんて物騒なお姫様だ、、、


その後、御意と返事をした男に手を翳され僕は意識を手放した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ