真実の愛もどき
「ルトナ・レベント!お前との婚約を破棄する!」
学校のパーティー会場で私の婚約者であるバルド・カレンダ第一王子がそう宣言した。
バルド王子の腕にしがみついているのは、確か同じクラスのアメリア・リンド伯爵令嬢ね。そんな勝ち誇ったような顔をされても、別にくやしくなんかないわよ?だって私バルド王子にくっつきたいと思ったことないもの。……彼、香水臭いもの。
それにしてもに大きな胸をしてるわね。私の十倍はありそうだわ……ゼロに何をかけてもゼロだって?う、うるさいわね!!ゼロにはゼロの良さがあるのよ!
「私は真実の愛を見つけたのだ!横にいるアメリアとのな!」
バルド王子は驚いたか!と言わんばかりに胸をそらす。
でしょうね。むしろそれ以外の発言が飛び出たら驚いていたわよ。
それにさっきからなぜあなた達は偉そうなのかしら。倫理的におかしな行動をしているのはあなた達の方だと思うのだけれど……はっ!もしかして私はサイコパスだったのかしら!?
「そうなのです!バルド王子と私は赤い糸で結ばれているのです!」
アメリアさんが大きな胸をバルンバルン揺らしながら、私に訴えかける。
わかったから胸を揺らすのをやめてくれないかしら。そのうち根本から脂肪の塊が取れてしまうわよ?……妬みじゃないわ。純粋に心配しているだけよ。
……あとバルド王子はガン見するのをやめなさい。
しかしあの大きな胸、クラス以外のどこかで見たことある気が……
「赤い糸は結構なのですけど……アメリアさん、あなた仮面舞踏会でナキサス伯爵令息と踊られてませんでした?」
「なっ!?アメリア、それは本当か!?」
仮面舞踏会、それは顔を仮面で覆い、自らの地位や立場を全て捨て去った状態で行われる舞踏会のこと。
その性質から仮面舞踏会では真実の愛を見つけることができるのだとか。
「いえ!私はバルド王子と一緒に踊りました!あの銀色の髪の毛は間違いなくバルド王子でした!」
アメリアさん、胸を張っているとこ悪いのだけど銀色の髪の方はもう一人いらっしゃるわよ。後ただでさえ大きな胸をさらに張るのはやめなさい。切り落とすわよ。
それに……
「ア、アメリア。それは私ではない……」
「そうです。バルド王子はその日体調が優れておらず仮面舞踏会には出席されておりません。つまりあなたが踊られた方はもう一人の銀髪であるナキサス伯爵令息なのですよ」
私の発言にアメリアさんは固まってしまった。その隣のバルド王子は灰のようになっている。
……なんだか少し可哀想ね。
「……バルド王子。申し訳ございません。私の真実の愛の相手はあなたではなかったようです」
「ア、アメリア!」
「私のような女のことはどうか忘れてください!!」
「アメリア~~~!!」
アメリアさんはそう言うとどこかに走り去ってしまった。
私は一体何を見せられているのかしら……
あれからバルド王子は人間不信になったらしい。真実の愛だと思っていたものが勘違いだったなんて、普通に考えたら可哀想なものではある。
ただ私からしたら、被害者面すんなよ、と言いたいところでもある。
アメリアさんの方はあの後ナキサス伯爵令息に告白をしに行ったらしい。そして見事に玉砕したのだとか。
ナキサスさんは、婚約者がいるから、と断ったそう。まあ当たり前の行動と言えば当たり前の行動なのだけど、他の人がおかしすぎてナキサスさんの素晴らしさが目立ってしまうわね。
私?私は今胸が無いことのメリットをひたすら考えているところよ。
……別にくやしくなんかないわよ!!
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