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旅路  作者: 青雨
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                   Ⅲ



 その男は追い詰められ、しかも手負いだった。腹を斬られている。肩でおおきく息をし、壁につかまりながら逃げまどっている。その壁に、血の跡がつく。恐怖で歪んだ顔には大粒の汗が浮かんでいる。自分の死を予感しながらも、必死で逃げるその顔には一片の余裕もなかった。

 ひたひたひたひた・・・という足音がした。びくりと怯えて、男はもつれる足を励まして逃げた。しかし、斬られた場所が痛む。出血も夥しい。思うようには動けなかった。抜けるように青い空、一面の白い壁、その白い壁に、線を描いて血のしみが続く。男がどう逃げたかを知るには、その血の跡を辿りさえすればよかった。どのみち長くはもつまい。

 男は逃げ続け、そしてとうとう行き止まりまでやってきた。絶望が顔ににじむ。

 カタ・・・。

 微かな物音にぎくりとして振り向くと、死神が剣を提げて立っていた。ふらつく身体で逃げようとした。しかし逃げ場所はなかった。

 その青い瞳に、大きな恐怖が湧いた。



 荷物を受け取るためにきた郵便局で待たされた。大層混雑していて、待つのも仕方がなかった。

 座れるだけ有り難いとじっと待っていて、だからその男の視線に気がつかなかった。男は大きな柱の陰に隠れてじっと機会を窺っていた。プランシェットが窓口に行き、荷物を受け取ってそこから離れようとする隙をみて、男はブランシェットに襲い掛かった。

 ドサッという荷物が落ちる音と共に、ブランシェットが手を突き出してきた----------男が理解できたのはそこまでだった。男の喉はブランシェットの突き刺した奇妙な形をした武器によって貫かれており、男はそこで絶命したからだ。

 悲鳴が起こった。逃げ出す人々。衛兵を呼ぶ声に、ブランシェットは舌打ちした。後ろ暗いところがいくつもある上手配書がどこでどうまわっているかもわからぬ。逃げるのが得策であった。

 グラディに不意打ちをくらって以来、ブランシェットはかなりの金をかけて護身用の武器を隠し持っていた。懐にしまえる、円の端から牛の角状に刃の突き出したジュール、両端に鋭い円筒がのびて刺せる峨眉刺、鋲を打った短い持ち手に革の貼られた鞭がしなるカマチなど、いずれも軽く、小さく、扱いが簡単で、それでいて殺傷能力の高いものばかりだった。

 混乱状態となった郵便局、逃げ惑う人々にまぎれてまた、ブランシェットもそこから逃げ出した。

 奇妙なことに、逃げる途中、ふと薔薇の香りがした。



 裏道の井戸で血まみれの手を洗うと、ブランシェットはふう、と息をついた。面が割れている。居場所が知られているのだ。今いる宿もほどなく割り出されるだろう。移ってきたばかりだが、またよそへ逃げなければならない。髪もまばらに伸びてきた頃、ブランシェットは大分遠方までやってきたつもりだった。しかし、追手はすぐそこまでやってきている。

 手配書がまわっているのは知っていた。しかし、その内容までブランシェットは知らない。グラディが言っていた、大金貨が自分の首にかけられていることぐらいしか、彼女は知りえない。本当はその手配書をじかに見たい気もするのだが、それがあるような場所に行ったところで、命を狙われる確率が高まるだけなのは目に見えている。自分の顔は知られてしまっているのだ。

 ゴボ、と咳が出た。その拍子に激しく血を吐く。口の中いっぱいに血の味が広がる。

『吐け!』

 ----------。

 その拍子に記憶がよみがえった。傭兵であった頃、敵の捕虜になったことがあった。縛られ、吊るされ、鞭で打たれた。

 ぺっと血を吐き出した。石畳に赤いしみができる。

 あのときもそうだった。自分は口の中に溜まった血の唾を吐き出し、

「舐めるな」

 と言った。

「傭兵に身代金を払う間抜けがどこにいる」

 と。

 そのあとも拷問を受けたが、なにも言わなかった。なにも知らなかったからだ。隙を見て逃げたが、ろくでもない目に遭ったものだった。今もまた血を吐いているが、状況はまったく違っていた。自分はもはや傭兵ではない。どころか、日々日常のことすら満足に行えない。皮肉なものだ。それでも先程のように、人を殺すことはできるのだから。とにかく、宿を引き払わなければならない。ブランシェットは悲鳴を上げる肺を押さえながら、ゆっくりと歩きだした。走り出したい気持ちでいっぱいだった。



 自分に関する記憶は一切なかった。最後に覚えているのは、人が大勢いる場所で、空が赤く、ドン、ドンという轟音が鳴り響く場所にいることだ。自分は怪我をしたらしく、仰向けになって倒れた。ライアン! という声がしたことは覚えているが、それが自分なのかはわからない。なぜなら人々は叫びあい、名前を呼び合っていたからだ。恐ろしい場所だ。わかるのはそれぐらいのことで、気が付いたら自分は病院のベッドに横たわっていた。 足を負傷したらしく、もう一生このままだと言われた。足を引きずって歩くようになった。

 記憶喪失であろうというのが医師の看立てであった。自分の名前すらも覚えていない、そんなことがあるというのだろうか。

 男はよくものを考えていた。そしてその考えを口にした。たちまち、病院では哲学するひと、というあだ名がついた。金だけは持っていたらしく、退院しても細々と暮らしていくことはできた。彼は日夜歩いてはものを考えることに勤しんだ。自分が何者であるのか、思い出すためにはそれしかないように彼には思われた。不自由な片足を引きずりながら、彼は街を歩いた。初めは遠巻きに見ていた人々も、やがて彼の人柄を知って街角で声をかけるようになった。名前を憶えていないので、みんな好き好きに自分のことを呼んだ。

 ナイジェルさんと呼ぶひともいれば、インレイさんと呼ぶひともいた。

 春も近いこの頃、男は公園までやってきていた。大きな公園で人々はよくここで憩い、池もある。

 子供がはしゃく声がするので顔を向けると、白鳥の群れが見えた。

 白鳥は優雅でおとなしい動物のように見えるが、あれで狂暴な一面を持ち合わせており、人を襲うこともある。襲われた方は腕の骨を折るほどの重傷を負うこともあるという。


   『美とは狂暴なものだ。一瞬にしてひとの心を奪うという面では、それは狂暴とい   うよりほかはない。』


 自分がなぜそんなことを知っているのか、そこまではわからなかった。どうして足が不自由になったのかも、どこにいたのかさえ。ただ、自分は街はずれで傷だけになって倒れていたのだという。

 見つかった時は虫の息だったそうだ。


   『もがき苦しむことは、こんなにも辛い。生きることは、もがいて苦しむことその   ものだというのに。』


 日々はうつろに、しかし確実に過ぎていった。毎日散歩することが日課であった。なにかを考えては、また考える。考えは浮かんでは消え、また浮かんでは消えていく。初めは書き留めていたものだったが、量の多さに閉口してとうの昔にやめた。

 自分が何者かわからないということは、水に漂うような不安があるものであった。自分の腕にはマイクロチップが埋め込まれていて、それは『鉄銀行』に記録されたものであったが、名前までは登録されていなかった。名前などなくとも、指紋と虹彩登録したマイクロチップがあるからいいというのだ。名前ぐらい記録してくれればよいものを。男はよくそのことに思いを馳せて舌打ちをしたものであった。名前はいくらでも偽ることができますから、と冷たく言われたのみであった。

 足をひきずっているというのに、男はよく歩いた。汗をかくことぐらい、なんでもなかった。家にいると身体がくさっていくような気がしたから、男は歩き続けた。日差しはまぶしく、風が気持ちよかった。

 春であった。

 桜が並木道に咲こうとしている。まもなく満開という今頃、人は桜を見るためだけに集まってくる。並木道添いにある大きな建物には、駅にさしかかる陸橋がある。その陸橋は吹き抜けのため、そこから桜を近くに見ることができる。男は桜を見るためではなく、駅への近道で陸橋を使っていた。もとより、花に興味があるわけではない。咲けば美しいとは思うが、わざわざ見に行くほどのものでもないと思っている。陸橋は、桜を見に来る人人で賑わっていた。

「おじいちゃん、こっち!」

 小さな子供が走り寄ってきて、立ち止まり桜を指差しながら後ろを振り向いた。遅れてやってきた年配の老人を見ると、期待で顔が照っている。

 桜の開花に、人の顔は晴れやかだ。 

 その晴れやかさにまぶしいものを感じながら、男は駅へ歩いて行った。


 絶叫が聞こえた。

 悲嘆に暮れた、はげしい叫びであった。

 耳を塞ぐ者もいれば、面を下げてじっと耐える者もいた。絶叫はこだまとなって屋敷の中に響き渡った。それは一度ならず二度、三度と繰り返され、絶えるということを知らないようだった。嘆き、苦しむ声。憚ることを知らないかのように、繰り返されるそれ。

 その中を潜るようにして、扉がノックされた。答えはない。一瞬の戸惑いののちに、扉は絶叫の主の返事を待たずして開かれた。

 医者であった。

 この医者は、嘆きに満ちた屋敷の中にいて胸ざわめいていた。ひどい知らせであった。

 屋敷は既に悲劇に満ちているというのに、さらなるひどい知らせを運ばねばならないことに疑問を持っていた。しかし、医者として彼はやってきた。伝えねばならぬことは伝えなければならない。

「閣下・・・」

 ラ=ヴォイは机に突っ伏してひとり嘆いていた。医者の言葉にも、顔を上げることなく泣き続けていた。

「閣下、検視の結果が出ましてございます」

 その言葉に、慟哭はさらに激しくなった。ラ=ヴォイはこたえることはなかった。

「奥様は、残念なことでございました」

 その言葉に、激しく上下していた肩がぴくりと反応した。

「・・・なんの話だ」

「は」

 声は冷たかった。思わず医者は怯んだ。しかし自分は医師。伝えるべきことは、伝えなければならぬ。

「お腹のお子様のことでございます」

 ラ=ヴォイが初めて顔を上げた。長い髪に隠れて、その容貌ははっきりとは見えない。

「残念なことでございました」

「なんの話だ」

 ラ=ヴォイは立ち上がった。

「は?」

「なんの話をしている」

 ゆっくりと、ふらつきながらラ=ヴォイは医者に詰め寄った。肩を掴み、叫ぶ。

「いったい何の話だ」

「お、お子様でございます。女の子でございました」

「子・・・?」

 


   『秘密? はて教えてくれないのかな』

   『もう少しの辛抱ですわ。そうしたら教えてあげます』



「子供がいたというのか!」

「ご、ご存じなかったので」

 医者のか弱い言葉は絶望の叫びにかき消された。

 屋敷は悲嘆に満ちた。


 列車の揺れは慣れないものだった。

 がたがたと時々音をたてる。カーブなのか、大きく揺れることもある。向かい合わせの客席で、ブランシェットはひとり旅をしていた。自分を殺そうとしたグラディというあの男が何気なく言った言葉に引っ掛かりを感じたのだ。

 オレストが自分を探している。

 その言葉に何かを感じて、ブランシェットは旅に出ることにした。どうせ静養しながらの逃げる旅路、何をしていても同じなら、目的があった方がいいというものだ。傭兵のいる場所に行けば、話は早いだろう。そこでは情報が錯綜しているからだ。しかしお尋ね者の今、それは自殺行為に近い。仕方なしにブランシェットは金を使って調べた。足環の魔道石はあと三つに減った。

 大陸を二つ隔てたところに、どうやらいるらしいということがわかって、ブランシェットは飛行艦に乗るため列車で移動しているのだった。

 駅に着いて、列車ががたんと揺れて止まった。人が行き交う。斜め前に人が一人座ったが、気にせず景色を見ていた。列車は間もなく動き出し、車窓の風景が流れ始める。一面の草原であった。オレストは、傭兵をやめて荘園を買ったらしい。そこの主をしているとか。あの男、砂漠で死にたいと言っていたくせに、やはり実を求めたか。

 しかし、傭兵をやめて荘園を買うとは堅実なやり方だ。傭兵は一生続く稼業ではない。 若い内に金を貯めて、農園や荘園を買ってそれでやっていくというのは、ありそうな話でいてなかなか難しいことだ。誰もが、目先の酒や女や刺激を求めて生きていくからだ。 ガタン、と列車が大きく動いた。その拍子に、斜め向かいにいた人影が動いた。

「!---------」

 一瞬のことであった。

 小柄な男はブランシェットの首を物凄い力で絞めていた。列車内のことゆえ、刃物を避けてみたととれる。ブランシェットは身動きができなかった。小さいのに凄い力だ、朦朧としながらそう思った。

「く・・・っ」

 本能的に手が伸びた。周りに人はいない。それを狙ったのだろう。

 肋だ。

 腹に手を伸ばす。骨に沿ったくぼみに指を立てた。ぐっと押す。

 ブランシェットの反撃は予想もしなかったのであろう、男の、首を絞める力が抜けた。 よし、と思った。いける。

 ぐぐぐぐぐぐぐぐ、と肋骨のくぼみを押した。ブランシェットの左手には、早くも小さな刃物が握られている。

「ぐはっ」

 男が叫びともとれぬ声を出した矢先に、ブランシェットは持っていた刃物で首の後ろを刺した。男は声も出さずに絶命した。

 人がいなくてよかった。

 男を座らせ、瞼を閉じらせると、もうそれは死体ではなく眠っている乗客に見えた。

 ブランシェットは辺りを見回して人目がないことを確認すると、ひっそりとそこから移動した。次の駅で降りるつもりであった。



 男はこの日も歩いていた。

 記憶は相変わらず戻らなかった。元の生活に戻ることなど考えていない男は、記憶を取り戻すことに固執していなかった。ただ、名前もなくなにも覚えていないということに不安を抱きつつも、もはやそれにこだわることはやめにしたようだ。

 日々は平穏であった。

 季節は百花の時期となっていた。

 花水木、躑躅、薔薇、小手毬、藤、石楠花、芍薬、牡丹、菖蒲、梔子。あらゆる花が咲いている。公園の彩りと香りは最高潮となっていた。これには、植物に興味などない男もさすがに足を止めるほどだった。

 立ち止まって汗を拭いていると、子供たちが駆け回りながら脇を通り過ぎていく。一組の男女が歩いているのも見えた。


   『気持ちは永遠に続かない、ゆえに愛も永遠に続かない』


 ふわり、と風が吹いた。花が揺れている。どこかで鳥が啼いている。


   『壁の絵の鳥と飾られた花の影 どちらが本物か、あるいは幻か』


 尽きることのない考えをめぐらせながら、男は駅に向かって歩いていた。目的があったわけではない、ただ、人が自然と集まるほうへと足が向いただけのことであった。

 近くまで来ると、ちょうど列車が着いたようだ、大きな荷物を持った人々がどっと溢れるようにやってきた。足を引きずりながら、男はその人の波をかき分けかき分け、なんとか歩いているところであった。

 あちらから女が歩いてくる。黒い髪、白い肌。名前の由来ともなったその容姿も、男の記憶を蘇らせるだけのことはではなかった。

 ブランシェットは移動する人の多さに閉口しながらも、先ほど返り討ちにした男がまだこの分では発見されていないことに安堵しつつ、逃げるように駅から出てきたところであった。向こうから、人をかき分けるようにして足の悪い男が歩いてくる。気に留めるでもなく、そのまま二人はすれ違っまだ記憶している。

 一瞬生じた違和感に、ブランシェットは思わず振り向いた。

 ライアン・・・?

 知ったような顔であった。名前が思わず出た。しかしすぐに頭の中で警告灯のようなものが光って、ブランシェットは首を振った。

 昔の仲間は今の敵。自分は今、天下のお尋ね者なのだ。声をかけるなどとんでもないことだ。それに、よく話したこともない男に声をかけてなにをしようというのだ。あの男は少々変わり者で、仲間内で「哲学する男」として揶揄されていたのをよく覚えている。傭兵が哲学なんざするもんじゃねえ、と吐き捨てるように言う別の仲間の顔を、ブランシェットは忘れてしまっていた。

 男がなにも覚えていないことにも、自分のことすら忘れていることなど露とも知らずに、ブランシェットは逃げるように駅を去った。この土地から飛行船に乗るつもりであった。

 あまりの人の混み様に閉口したブランシェットは、裏道から行くことにした。この土地は未知のものだが、地元の人間らしき者たちがサッと道を曲がるところを幾度か見れば、裏道があることは間違いなかった。なに、違っていれば戻ればよいこと。軽い気持ちで裏道を選んだ。

「ノワール?」

 突然、人がいなくなった途端に後ろから声をかけられた。反射的に振り向くのと、頭を棍棒のようなもので殴られるのとほぼ同時であった。奥歯ががん、と鳴った。ブランシェットは昏倒した。

 ぽん、と何かを胸の上に置かれた。

「あんた、心臓が悪いんだってな」

 遠くで男の声がした。どくん、と心臓が不吉な音をたてた気がした。それは気のせいではなかった。

「特殊磁場を持つ磁石だ。ペースメーカーの調子を乱れさせる」

 とくん、とくん、とくん・・・

 心臓の音が耳に響き渡る。

 心臓にペースメーカーが入っているからな、と何度も念押しされたのを思い出す。


 『強力な磁場に近づいちゃだめだぞ』

 『近づくとどうなる』

 『不整脈で死ぬよ』


 とくん・・・とくん・・・

 見る見るうちにその鼓動がゆっくりとなっていく。

 目が霞んだ。男の顔がよく見えない。胸が苦しいのは、持病のせいだけではないはずだ。

 早く。早くこれをどけないと。男が剣を引き抜くのが霞む視界でも確認できた。

(くそっ)

 手が震えた。うまく動かない。心臓が痛い。胸が苦しい。

 舌を噛んだ。痛みで意識が跳ね上がる。

 力一杯胸の上の磁石をはねのけた。それと同時に短剣を引き抜き、男に向かって投げつけた。む、という声と共に、剣で弾かれた。なんとかして立ち上がると、倒れ込むように相手の懐へ飛び込んで行った。一対一で剣を抜かれたら圧倒的に不利だ。ジュールを懐から引き抜くと、相手の首目掛けて刺した。牛の角状になった刃が男の喉笛を貫く。

「ぐっ・・・」

 それが男の最後の言葉だった。

 ブランシェットはしばらくそこに座り込んだ。動けなかった。


 戦場で腹と背を刺されたブランシェットは、その場で応急手当を受け、本人の意志などまったく無視されたまま、昏睡状態で運ばれてきた。瀕死の重傷であった。

「この女を死なせてはならんぞ」

 ラ=ヴォイの怒号が医務室に響き渡った。

「なんとしても救い出すのだ。生かせ。これは命令だ」

「ですが閣下、急所が・・・」

「生かせ!」

 医師の言葉を遮って、ラ=ヴォイは怒鳴った。

「なんとしても生かすのだ。むざむざと死なせるわけにはいかぬ」

 そこへ、若い医導師が入ってきた。ザルダである。

「閣下、わたくしにお任せください」

 入ってきたのが医導師とみて、ラ=ヴォイはむ、と唸った。予想外の客であった。

「わたくしの術でこの女の命を救ってみせましょうぞ」

 言うなり、診察台に近づいてザルダは印を結んだ。異議を唱えて止めようとする医者もいたが、無視された。呪文の詠唱は長くは続かなかった。ザルダがメスを握ったからである。しばらくして、また詠唱が始まった。

「な、なんと・・・」

「閣下、この者・・・!」

 医者たちが驚きの声を上げる。それはそうだろう。詠唱しながら手術ができる医導師など、いないわけではないが片手で数えるほどしかいないはずだ。しかも、よほど年齢を重ねた者に限られている。このような若い男ができるとは仰天ものの騒ぎであった。ラ=ヴォイもこれには歯ぎしりするほど驚いた。ラ=ヴォイは、医導師などと中途半端なものたちを側におくことはせぬ。しかしザルダのメス捌きは素人目にも見事で、素早く、それでいて無駄がなく、うつくしいと言っても決して過言ではないものであった。

「この女は助かりますぞ」

 室内の視線を一点に集めていることを知りながら、ザルダは淡々と言ってのけた。

「わたくしめにお任せください」

 ラ=ヴォイはザルダを信用した。

 それが、恐ろしい計画の始まりであった。


 医師たちはこぞってザルダを遠のけようとした。が、ブランシェットの命を救ったのが紛れもなくザルダであることは間違いがなく、発言権は彼にあった。ラ=ヴォイは次第に医師たちと話すことをやめ、ザルダを側に置くようになった。

 ザルダは文字通りブランシェットを救った。が、ラ=ヴォイの思惑までは図りかねた。 なぜそこまでしてこの女に執着するのか。ザルダは知りたかった。

「閣下、おそれながら」

「なんだ」

「なにゆえあの女を生かそうとなさります? 確かあの女に・・・」

「賞金首をかけた。そうだ。大金貨一千万枚をかけた」

「それでは死なせたほうがよいのでは」

「ならぬ!」

 ラ=ヴォイの怒鳴り声は鋭かった。

「簡単に死なせてなるものか。地獄の苦しみを味わわせて、じわりじわりと恐怖を感じながらゆっくりと死なせてゆくのだ」

「なにゆえあの女にそこまで執着なさります」

 若い医導師は普段ラ=ヴォイの側にいないがゆえに事の次第を知らなかった。

 ラ=ヴォイの政敵が傭兵を雇い、ラ=ヴォイの暗殺を企んだことを。そして雇われたブランシェットが、たまたま留守であったラ=ヴォイでなく、五歳になる息子とラ=ヴォイが誰よりも愛してやまない妻を惨殺したことを。

「復讐だ」

「復讐・・・」

「あの女はわたしのすべてを奪った。幸せも、希望も、家庭も、なにもかもをだ。わたしはあの日誓ったのだ。あの女を死の淵まで追い詰め、再び生き返らせてから恐怖に怯えつつじわじわと殺してやるとな。誓ったのだ。妻の亡骸にかけて誓ったのだ」

 善き心を失ったラ=ヴォイは復讐の鬼と化していた。ザルダは知る由もなかった、首がほとんど胴体から離れた状態で見つかったラ=ヴォイの妻が、新しい命を宿していたことを。その母を守ろうと勇敢にも立ちはだかった五歳の息子が、腹を割られて内臓が飛び出るまで容赦なく切り刻まれたことを。

 のちにそのことを医師から知らされたザルダは、自分の野望を叶えるのにはラ=ヴォイの狂気を利用するのが一番だとすぐさま閃いた。一度助けておいて、瀕死の重傷を与えた上で放免し、賞金をかけてじわりじわりと死の恐怖を味わわせて殺そうとするのは、最早狂気の沙汰と言ってよかった。ラ=ヴォイは鬼になったのだ。

 半ば狂ったラ=ヴォイを操るのは簡単だった。ラ=ヴォイは尊敬すべき人格者ではあったが、狂気に蝕まれて残酷な一面をむき出しにもしていた。

 死んだ人間に固執する人間がいかにもすることを、ラ=ヴォイは実行していた。

 すなわち愛する妻と息子の遺体を埋めずに、保存液に浸して保管するという恐ろしい行いであった。ラ=ヴォイは一日中、大きな大きなガラスの中に浮かぶ妻を眺めながら慟哭していた。そして誓った、妻と息子の遺体にあの女の首を見せるまで、自分は決して手を緩めないと。どんなことをしてもあの女を殺すと。

 ザルダは見事にブランシェットの命を救った。しかし傷は深く、感染症に侵された身体は病に取りつかれることとなった。ブランシェットは二度と、戦場で人を殺すことはできないだろう。しかしまた、戦場こそがブランシェットの居場所であることをそれまでの情報で熟知していたザルダは、瀕死の状態の彼女を見事に放免してのけた。宿も手配し、彼女の与り知らぬまま、ブランシェットは名も知らぬ街の宿で病気を抱えながら目が覚めたというわけだ。

 ザルダの野望は始まったばかりだった。ブランシェットが手配した宿から消えたという報告があっても、彼は慌てなかった。賞金は吊り上げられている。そして女の居場所は戦場しかない。だとすれば、遅かれ早かれブランシェットは戦場で見つかるだろう。自分はその時を待てばよいだけだ。追手はすぐにでも彼女を追い詰めるだろう。

 死体が近くにあるのも都合がよかった。誰でもよいというわけではない、実験するに相応の価値を見出せねば、ラ=ヴォイの協力は得られない。案の定、ラ=ヴォイは話に乗った。恐ろしい話を聞いてもラ=ヴォイは平気であった。悪魔と契約することですべてを取り戻せるのなら、それはそれでよかろうと鬼は思い至ったのである。

 ブランシェットが昏睡から覚めるまで、監視は続けられた。

 やがて彼女が目覚め、自由のきかない身体に成り果て、追手に追われる恐怖を味わう様を、ラ=ヴォイは高見の見物と決め込むつもりでいた。

 しかしラ=ヴォイにもザルダにも意外であったのが、ブランシェットの体力という一点であったことだろう。彼女は監視の目を潜り抜けて、あの町医者と出会い、そして自立するまで回復したのである。

 ブランシェットの手配書は世界中にまわった。恐るべき速さであった。そしてその首にかけられた賞金の金額も、また恐るべきものであった。大金貨一千万枚。庶民の一か月の生活が銀貨三十枚、傭兵の一度の戦場の報酬がだいたい金貨十枚となれば、金貨一枚の百倍の値がつく大金貨での賞金は、味方ですら簡単に裏切るであろう金額であった。天文学的な数字であった。予想通り、ザルダの知らないところで暗殺者たちは暗躍した。その悉くが返り討ちに遭ったのも知らずに、ザルダは計画を進めていた。研究は最早最骨頂の域にまで達し、理論上では実験は成功するものと見えた。そう、生きている人間の臓器を使って、死者を蘇らせるという禁断の医術が。

 死体が残っているのが好都合だった。ラ=ヴォイはどのような手を使ってもよいから奥方を蘇らせるようにと言った。それが、仇であるブランシェットの内臓を使うことになろうとも。

 ザルダの恐ろしい計画は着々と進んでいた。

 ブランシェットは消えたが、ザルダはあの女が戦場に戻ることを知っていた。殺戮しか知らない人間が、街中で生活できようはずもない。あの女は必ず戦場に戻る。そして討たれるであろう。その時こそ、ラ=ヴォイの復讐は果たされ、ザルダの野望も叶えられる時なのだ。

 待てばよい。

 ザルダは忍耐強く待った。

 時はもうすぐ熟しようとしていた。


 飛行船に乗ったブランシェットは大陸を二つ越えた場所にいた。そこから列車に乗り、山を二つ、谷を三つ越えた。

 途中、井戸があったのでそこで顔を洗っていたら後ろから首を掴まれた。何事かと思う余裕もなく、そのまま桶に顔を沈められた。刺客だ。水中に顔を沈められ、ブランシェットは抗った。しかし見知らぬ腕は容赦なく、空気はどんどん失われていく。

 くそ。ここでおれはやられるのか。

 ラ=ヴォイが自分の首に賞金をかけた理由も知らぬまま、このまま死ぬのかと思うと無念であった。が、また、ようやく安らぎを得られる安心があったことも否めなかった。死ぬべきときなのかもしれぬ。

 しかし傭兵の本能がそれを許さなかった。力が抜けていくブランシェットの身体に刺客が油断した一瞬の隙をついて、ブランシェットは相手の足を払った。

 ガタン!

 桶が倒れ、男が倒れるのが見えた。懐から短刀を取り出し、素早く馬乗りになって腹を刺す。どんな時でも殺すときは冷静だった。刃物で刺す時、刃を寝かせれば肋骨に邪魔されずに刃を内臓まで到達させることができる。男は一瞬抵抗したが、刺した途端にがくりと動かなくなった。

 肺に疾患を抱える身体にはきつい体験であった。肺に水が入り、ひどく咳き込んだ。その拍子に血を吐いた。

「くそったれが・・・」

 ぜえぜえ言いながら、ブランシェットは毒づいた。こんなところまで追手が追ってきているのか。自分は果たしていつまでこんな生活を続けなければならぬのだ。その行程を考えるだけでうんざりした。

 そこにへたり込んだまま、しばらくブランシェットは動けなかった。

 

 足環の魔道石はあと一つまでに減っていた。これがなくなったらもう、自分の手元にあるものはなにもなくなる。それまでに目的地に着けるか・・・ブランシェットの胸に一抹の不安がよぎった。

 目指す荘園はあと谷を二つ越えたところにある。馬に乗る体力はない。乗り合い馬車に乗るのが精一杯だ。

 ブランシェットは食料を買い、水を補充して馬車に乗った。目指す荘園は田舎だが、そこへ帰る人間は一定数いるらしい。乗り合い馬車はそこそこ混んでいた。この中の誰かが、刺客かもしれぬ。そう思うと昼寝もままならなかった。身体は限界を迎えている。かつては三日三晩寝なくてもよかったものだが、今は一日に数時間の昼寝が必要不可欠となった。 馬車に揺られながら、いつしかブランシェットは睡魔に負けて眠り込んでしまっていた。 

        青い瞳は裁きの瞳


 どこかから歌が聞こえた気がして、はっとブランシェットは目を覚ました。周りを見ても、誰も歌など歌っていない。夢でも見たのか。身体中、汗でぐっしょり濡れていた。寒気で目が覚めたのだ。馬より楽とはいえ、馬車に揺られるのもまた体力を削る。移動すること自体、彼女の今の身体には無理なのだ。

 青い瞳は裁きの瞳、か・・・

 自分の指輪の青い石を見ながら、ブランシェットは揺られながらかつて殺した青い瞳の男のことをふと思い出していた。恐怖に満ち満ちた瞳。名も知らぬ男。

(くそ・・・)

 ブランシェットは拳を握った。

 あの女は一体何が言いたくて、あんな身の上話をしたというのだ。自分とは一切関係のない話だ。これまで会ってきた顔がいくつも浮かんでは消えた。

 乗り合い馬車の旅は窮屈で、単調で、退屈だった。なにかに思いを馳せること以外、なにもすることなどなかった。

 オレストはどうしているか、とふと思った。

 こうまで苦しい思いをして、会いに行った男に殺されたとしたらお笑い種だ。追手の罠かもしれぬ。しかしまた、追手がブランシェットの戦場での人間関係まで洗い出したとは考えにくい。天涯孤独、瀕死の重傷を負った自分を探しているという男がたった一人いる。 それになにかの希望を見出して、ブランシェットが旅を進めていることは確かだ。

 かつて戦場で戦った同士が、自分に会いたいと言っている。

 自分の首を狙っているのかもしれぬ。大金貨一千万枚を手に入れようとしているのかもしれぬ。しかしそれで殺されるのなら、もうそれでいいと思うほどまでには、ブランシェットは疲れ切っていた。いついかなる時も刺客に狙われ、寝起きもままならぬ身体を引きずって生きていくというのなら、いっそ知り合いに殺されたほうがましだと思ったのかもしれない。

 そうこうするうちに馬車は谷を一つ越え、二つ越えて、とうとう目指す荘園のある村まで辿り着いた。

 宿を決めるのももどかしく、ブランシェットは村人に荘園の場所を聞き出しそこへ向かっていた。

 荘園はすぐに見つかった。

 大きな土地、何人もの小作人、なかなか豊かな暮らしぶりが見て取れた。

 目指すオレストは今頃、さぞかし太って引退後の生活を謳歌していることだろう。殺伐とした傭兵の生活に別れを告げ、荘園で毎日、退屈だが確かな生活を送る。結婚して子供の一人や二人、いるかもしれぬ。一介の傭兵がやり遂げるには充分すぎる生活といえよう。

 入り口で名前を告げ、オレストの知り合いだと告げると、いかにも胡散臭いものを見る目で一瞥された。それはそうだろう。これだけの大きな荘園の、ご主人様に会うにしてはみすぼらしい身なりだ。

 玄関でしばらく待たされた。家の中は静かで、ひんやりとしていた。

「どうぞ。ご主人様がお会いになるそうです」

 幾分ほっとした。

 このまま追い返されても仕方がないかなと思っていた矢先のことであったからだ。

 階段をいくつものぼるのには閉口した。肺がついていかない。息を切らせながら、ブランシェットは主の部屋まで案内された。

「旦那様、お連れしました」

 予想に反して、中は薄暗かった。

 中に入ると薬のにおいがたちこめていることに気がついた。しばらくして目が慣れてくると、それと同時に音も耳に入ってきた。ぜえぜえ言う声だ。

「オレストか?」

 ブランシェットは訝しげに声のする方に問いかけた。そこにはベッドがあって、誰かが横たわっているのが見えた。そろりそろりと近づくと、薄闇にかつて見知った顔が横たわっているのが見えた。

「ブランシェットか・・・」

 ぜえぜえ言っているのは紛れもなくオレストであった。しかし、かつての筋骨逞しい姿とはかけ離れ、骨と皮ばかりにやつれ果てている。その痩せぶりにまず驚いた。

「よく来たな・・・何年ぶりだ・・・?」

 そこでオレストは激しく咳き込んだ。ブランシェットは眉を顰めた。自分のする咳とよく似た咳だ。

「座ってくれ」

 弱々しく側の椅子を勧められ、ブランシェットは言葉もなくそこに座った。元気か、と聞く言葉はとうに引っ込んだ。

「おれを探しているという伝言を聞いてな・・・たまたま近くにいたものだから気になって寄ってみた」

 最早罠だとは思わなかった。罠だとすれば手が込んでいる。

「よく来てくれた…」

 オレストは右手を差し出した。黄色い、多分トパーズだろう、おおきな石のついた指輪をしている。

「ここに来るまでにお前の荘園を見て回ったぞ。すごいな、ご主人様ときた」

 ふっ、とオレストが自嘲気味に笑うのが気配でわかった。この男はいま病気なのだ。しかも、多分もう長くはない。

「肺をやられてな・・・今じゃこのざまだ」

 また激しく咳き込む。

「そこの薬湯を取ってくれ」

 テーブルの上の盃を指差され、黙ってそれを渡す。この男はなにをもってして自分に会いたいなどと言ってきたのだ。

「もう長くない・・・医者がそう言っていたよ」

 荘園はどうなるんだ、という言葉を飲み込んだ。どうでもいいことだ。

「なあ・・・覚えているか・・・・・・あの砂の地で話したことを」

「死にたい場所の話か」

「そうだ」

 オレストは渡した盃の中身を震える手で飲み干した。眼窩は落ちくぼみ、頬骨が浮き上がっている。人はここまで痩せられるのかと思うほど、オレストはやつれ果てていた。

 激しく咳き込みながら、オレストは起き上がった。ブランシェットは枕を起こして支えにしてやった。

「俺はもうすぐ死ぬ。俺には家族はいない。一人だ。一人で死んでいくんだ」

 ぜえぜえ言いながら、オレストは続けた。

「ここを終の棲家にするつもりだった・・・・・・しかし毎日思うことはあの砂漠のことだ。俺は砂漠で死にたい。こんな薄暗い、湿っぽい部屋で死にたくない」

「使用人は信用ならねえ・・・俺のことをご主人様とは言うが、名ばかりだ。裏じゃあ傭兵あがりのくせにと陰口を叩いていやがる」

 それも間違いじゃないがなと言いながら、また咳き込む。

「荘園を見たと言っていたな。こんな豊かな土地にいても、毎日思い出すのは戦場にいた記憶ばかりだ。砂漠のことばかりだ」

 がしっ、と腕を掴まれた。トパーズの指輪が骨に当たって痛かった。

「頼む、俺を砂漠に連れて行ってくれ。こんなところで一人で、みじめに死にたくねえ。 砂漠で死にたい。砂漠の砂に埋もれて死にたいんだ」

 ブランシェットは性にもなく焦った。オレストは死にかけている。自分がやってきた道のりを考えると、今の彼が旅に耐えられるとは到底考え難い。願いは聞いてやりたいが、それは現実的に考えて無理というものだ。

「お願いだ。俺は砂漠で死にてえ。お前に頼むのが筋違いなのは重々承知だ。これをやるから」

 と、右手のトパーズの指輪を外してブランシェットに握らせると、

「頼む・・・!」

 と、ブランシェットが怯むほどの必死の形相で身を乗り出してきた。

「頼む・・・・・・」

 激しい咳に言葉はかき消された。


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