本日休みではないですよ。
赤いパーカーを着た女性はお姉さんに「星奈さん。あなたは採用担当ではないですよね?」と少し怒っているような感じで言ってきた。女性の顔は笑顔ではあるが虫唾が走っていた。「えーっと久米井さんが休みのときは採用の仕事もしてますよ私は。」とおどおどしたような声でお姉さんが言い訳すると、赤いパーカーの女性はぶち切れて「私、久米井 真弥は、本日休みではないですよ。」と言い、お姉さんの腕を引っ張って会議室から連れ出した。この様子を見て唖然としていると、女の子が「さっきの方から何かされてませんでしたか?」と私に聞いてきた。「いや。何もされていないですよ。」と答えると、「さっきの方は若い女性が大好きで、暇さえあれば採用担当装って新人にちょっかい出すんですよ。まあ、夢野タクシーで働くなら気をつけてください。」と返した。そして、「もう少ししたら、本物の採用担当の方が来ますのでしばらくお待ちください。あと、さっきは変な態度を取ってごめんなさい。」と言って女の子が頭を下げるとそのまま会議室を後にした。会議室には私一人が取り残された。この時、「これ以上この場にいても話がややこしくなってしまうので、もう帰ったほうがいいのでは」と思い、「イケメン」タクシードライバーへのお礼はあきらめ、会議室を出ようとした。しかし、扉を開こうと取っ手を持った瞬間、先ほどの赤いパーカーの女性が中に入ってきた。結局、会議室を出ることができず、もう一度先ほどと同様に椅子に座った。赤いパーカーの女性は、私が座ったのを確認すると話し始めた。