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97/202

97,ライオネル、よく働いた。

 


 翌日のお昼ごろ。


 ようやくサンディさんが起きてきた。二日酔いに苦しみつつも、晴れやかな表情で。体内から〈倦怠艶女ミスティナ〉さんがいなくなったからね。


「アリアちゃん、やっぱり生きていたんだね。ベロニカさんたちは信じていたよ。ロクウさんはアリアさんを探すため、いまも【覇王魔窟】攻略しているはず。アリアさんが生きているなら、【覇王魔窟】攻略しているはずだからって」


 さすがロクウさん、良い着眼点。ただ残念ながら、私は995階の〈攻略不可能体〉として再創造されたので、【覇王魔窟】内で確実に会うためには、995階まで来てもらわなきゃなんだけども。


「私と〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉が相打ちになったあと、何が起きたんですか?」


「まずミリカさんとロクウさんの身体が消滅して──と思ったら、ロクウさんは本棚の後ろから出てきた。ミリカさんも遅れてやってきて、なんでも厨房で目覚めたとか。あれは、いまだに謎現象」


擬態幻魔ミミクリーデビル〉の〈擬態遊戯〉は、攻略した私でさえも意味不明度がいまだ高し。とにかく、重要なのはマグレでもなんでも、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉の裏をかいて仕留められたということである。


「そのあとは、どうなったんです?」


「うん。まず、もう一体魔物が──いや、あれは魔物というよりも悪魔の化身。思い出すだけでゾッとするよ。それが現れて、私の体内に入ってきて──寝だしたんだよっっ!」


 サンディさん思い出したようで、顔面蒼白になった。その『悪魔の化身』とは、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんのことだな。私が死んだので、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんは居心地のよいベッドから這い出さなければならなくなった。

 そして次なるベッドとして、サンディさんを見出したのだ。

 不運なのはサンディさんで、それから昨日まで、体内に爆睡する〈攻略不可能体〉を飼うハメに。それで酒浸りの生活に陥っていたのだねぇ。修道女さんなのに。


「というかサンディさんって、お酒飲んでいい年齢でしたっけ?」


「え? わたし、24歳だけど?」


「……………ですよね」


 17歳くらいかなと思っていた。外見が幼いというか、精神年齢が、うむ、何も言うまい。

 サンディさんは怪訝そうながらも、本題に戻った。


「でね、アリアちゃん。大事なのはここからで、まずアリアちゃんの亡骸がちゃんとあって、ミリカさんやベロニカさんは、泣き崩れた。あとロクウさんに至っては、切腹とかいう風変わりな自殺方法を試そうとしたので、わたしが死ぬ気で止めたよ、さすがに」


「グッジョブです、サンディさん」


「ところが、しばらくするとアリアちゃんの亡骸が消えてね──それでロクウさんたちは、『まだアリアちゃんはどこかで生きている』と信じるようになったんだけど」


 私の肉体が〈攻略不可能体〉として再創造されるために、人間のころの遺体は消滅したのか。

 サンディさんは、『不思議なことって多いよねぇ』という顔で続ける。


「結局、その場に残った死体はひとつだけ。えーと、なんだっけ、ミミクなんたら」


「〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉ですね。王に成り代わっていた〈攻略不可能体〉」


「じゃ、それは嘘だね」


「え?」


「〈攻略不可能体〉という名称が。アリアちゃんが、攻略したわけだし。なんだかんだで、たった独りで。そういえばあのとき、アリアちゃんが自分で自分の首を刎ねたときは、頭おかしくなるかと思ったけども……いまだに悪夢に見ることも」


「そのせつはお騒がせしました。ところで、よくミリカさんが女王に即位できましたね? 王位継承順位は、かなり低め低めでしたのに」


「うん。そこは、ライオネルさんの異常な働きのおかげ。ライオネルさんは、熱く語っていたよ。『すべては自らの命を捧げて国家を救ったアリア殿の遺志なのだ!』と。わたし、胸が熱くなっちゃった」


 さすがライオネルさん。自分が爵位を得るため、何がなんでもミリカさんには即位してもらう必要があったのだ。だから私は、ライオネルさんを信じていた。


「それで、どうしたんですか?」


「まずライオネルさんは、廷臣たちを集めて、王が偽物だったことを証拠の死体とともに提示したわけ。もちろん宮廷は大混乱。ただその中で、ライオネルさんがある方向へと、廷臣たちの意識を向かわせていった。

 それはつまり『王が魔物の成りすましだったのならば、王に近しい者たちはどうなのだ? 彼らも実は魔物では?』と。つまり前王に近しいってことは、王位継承順位の高い人たちのことだよね。そういう疑いをもたせて、継承順位だけで王を決めるのはリスク高めでは?という空気感を作った。

 そこでさらに、ライオネルさんが『偽王を討ち、ラザ帝国との大戦勃発を阻止したのは、ミリカ様だぞ』という手柄話を流したわけ。『次の王にふさわしいのは、ミリカ様だぞ』と。

 ただこれについては、ミリカさん自身が、『あれはアリアさんの手柄なのだ』と訂正したんだけどね。ただこの訂正が、逆に『ミリカさん偽王を討つ』に信ぴょう性を持たせた。ここ、人間心理の変てこなところだけど、『私がやりました』と宣言するより、『私はやってないんだよ』と言うほうが、なぜか『本当はこの人がやったのだな』とまわりに思われやすいという。

 ただそこまでいっても、まだまだミリカさんの即位には反対する勢力も多かった。ミリカさん、次期王になるため地盤固めとかしていたわけでもなかったし」


「急なことでしたからね。その点は、私も懸念していましたよ。ハーバン伯爵家とライバル関係にある貴族が反対することも」


「ただ、最強の後押しがあってね」


「最強の後押し?」


「ラザ帝国から使者が来て、『皇帝陛下よりお祝いの言葉』とやらを、『新たなアーテル国の統治者、ミリカ女王陛下に』って」


「ははぁ。ラザ帝国から暗に、『次の王はミリカさんにしろ』というメッセージですか。内政干渉も甚だしいですが、ラザ帝国なら有りですね。ただでさえ、偽王のせいで国内は混乱。はっきり言って、ラザ帝国が攻め込んできても、対処はできない状況でしたでしょう。その上で、『次の王はミリカさん』メッセージ。もしもそのメッセージを無視すれば、ラザ帝国がどう出るかは分からない。これは反対派も黙るしかないでしょうね」


「うん。それで、めでたくミリカさんが即位。で、アリアちゃんの国葬が執り行われた──形ばかりって、ミリカさんは言っていたけども。もしかすると、ミリカさんは諦めていたのかなぁ。あ、女王陛下とお呼びしないとね今は」


「まってください。私、国葬されたんですか」


「アリアちゃん、王都の中央広場に銅像が建っているくらいなんだよ。国葬のひとつやふたつ、されるって」


 私、国葬されたのかぁ。

 なんだかなぁ。


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