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91/202

91,995階の新たな主。

 


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 目覚めると、ドロドロした黄緑色の液体の中だった。

 透明な、人サイズの水槽の中で。

 溺れる、と思ったけど、この気持ち悪い液体で溺れる心配はなさそう。もっと別の心配をしたほうがいいみたい。


 私はいま、ほぼ生首状態。


 生首からむきだしの脊髄だけが漂っている。その周辺では、バラバラの肉体がやはり液体内を泳いでいた。不思議だなぁ。生首だけで声は出せないはずなのに、さっき私は叫んで目覚めたよね? それを言うなら、そもそも生首だけで『生きている+思考している』のも異常事態だけども。

 やることがない。それはそうでしょう。生首だけだよ、何もできない。ところが──鼻が、鼻がかゆい。鼻がかゆいのに、生首だけなのでかけない。


「うぅぅ、誰かぁぁぁ、誰かぁぁぁぁ」


 とダメ元で嘆いていたら、意外や意外、この場には私以外にもいたのだ。


「呼んだ?」


 と気軽に水槽内を覗き込んできたのは、なんとジェシカさん。


「どうしたの、アリア?」


「……………鼻がかゆいです」


「あいよ」


 ジェシカさんに鼻をかいてもらったので、これで気持ちよく眠ることができる。いろいろと気になることはあるけれど、混乱したときは眠ってしまうのがいいのさ。もしかしたら、状況も少しはマシになるかもだし。目をつむる。


 次に目覚めたとき、私の身体はだいぶ再生されていた。ふむ、再生? ちょっと感覚的に違う気がするけども。ところで、どうしてはじめのとき、私の肉体はバラバラに? ああ、そうか。〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉の《螺旋回天》か。《人形殺し》でダメージを保存していたのが、バトル終了で、私という本体に返ったのだな。とはいえ、私は中枢神経を引きちぎられて、その前に意識を失っていたけども。

 ふと見ると、まだジェシカさんはいた。驚きだ。なんたって夜逃げの前科があるエルフっ娘だものね。だけど可愛いから、許しちゃう。


「ジェシカさん。これは〖女神の泉〗なんですか?」


「違うよー。前にも説明したけど〖女神の泉〗は、キミの四肢を再生するときにリソースを使いきったからね。キミがいま浸かり、肉体を『再創造』しているのは、〖覇王魔窟の泉〗さ」


「はぁ」


 ジェシカさんが右手を差し出してきたので、私は『再創造?』されたばかりの右手を持ち上げて、その 手を握った。なんだこの握手?


「キミは、新たな〈攻略不可能体〉に選ばれた。【覇王魔窟】始まって以来のことだよ。やぁ、おかげで『後見人』であるボクも、こうして【覇王魔窟】995階まで来ることができた。ありがとね~」


「はぁ。いえ、私は何も………………………………………………………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! ちょっとまってください! なんですかそれ! 新たな〈攻略不可能体〉って! 〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉の後釜ってことですかぁぁ? それじゃ、もう【覇王魔窟】攻略できないじゃないですか! プレイヤーはプレイヤーでも、そっちは嫌です! 嫌ですぅぅぅ!!」


「そのことはさ、あとで話し合う。とりあえず、いまは五月蠅いから」


 ジェシカさんが液体に右手を突っ込んできて、私の中枢神経を脳から引き抜いた。意識がぷつんと途切れた。


 次に意識が戻ったとき、すなわちジェシカさんによって中枢神経を再接続されたとき。私は、黄緑色のドロドロした水槽(すなわち〖覇王魔窟の泉〗)の外にいて、なんと天蓋つきベッドに寝かされていた。おお天蓋つきベッドとは、初めての体験だ。変なところ感動。


 起き上がると、一糸まとわぬ姿。目の前には全身のうつる鏡がある。自分で自分の身体を確認しておけということかな。さて、私はといえば──誇り高き貧乳、全身が継ぎ接ぎだらけ、首の接続箇所にいたってはオリハルコン金属が使われていて、なんか痛々しい。顔の右半分の、毒液で溶かされた痕は相変わらず(そういえば最近は面倒なので、仮面も付けていなかった)。

 また〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉に貫かれた腹部にも、禍々し傷跡が残っていた。あれ、その傷跡の隣に、肌にじかにメッセージ書かれている。

 なんてメッセージの残し方だ。

 読みづらい。えーと、なになに。


『破壊された子宮は元に戻りませんでしたまる、あしからず』。


 ふーむ。同性婚予定だし、養子コースは確定していたので、別にいいけど。

 いいのか? いいかぁ。というか首を動かすと、中枢神経あたりが凄い音でグキグキいうのだけど。こっちのほうが心配だい。これ、接続不良を起こさない? 大丈夫? 


 私は視線を転じた。ジェシカさんはいない(また夜逃げした?)。そして何もない空間だ。何もない、しかし紛れもなく、ここは995階なのだ。

 そうか、新たな995階のあるじとなった私が、家具などを調達してこないとダメなのか。

 だが、『相棒』はいた。わが親友、魔改造鍬〈スーパーコンボ〉は。


 そばには、〈擬態幻魔ミミクリーデビル〉の強化素材まで置かれている。ふむ、このサービスは、悪くないぞ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔物の次は攻略不可能体ですか!( ̄□||||ナンダッテー!? アリアさんには驚かされてばかりですよ(笑) そしてサラッと登場ジェシカさん。お久しぶりですわ~♪ ジェシカさんが身体…
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