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82/202

82,伸びしろ。

 


 上空より急降下し〈蜘蛛女魔スパイダークイーン〉に、《電光石火》でぶち当たる。


 つづいて着地と同時に、魔改造鍬〈スーパーコンボ〉を振り回し、〈蜘蛛女魔スパイダークイーン〉の脚を破壊していく。

 見た目どおり脆い脚で、通常攻撃でも楽々と破壊可能だった。

 最後にひっくり返して、腹にある糸いぼを、《桜吹雪打》で完全破壊。これで《鋼鉄糸》を飛ばせなくなり、動きも封じた。


 しかしまだ足りないか。腹に〈スーパーコンボ〉を叩き込みまくり、大地を耕すようにして穴状の傷口だらけにした。

 ここまでやれば、もういいだろう。私は〈蜘蛛女魔スパイダークイーン〉から飛び降りて、サンディさんを手招きした。


「さぁ、トドメをさしてください」


「無理、無理無理、無理無理──!!!」


 泡を吹いて気絶してしまった。

 私はそんなサンデイさんを抱え上げて、〈蜘蛛女魔スパイダークイーン〉の傷口から、体内へと押し込む。

 蜘蛛の体内で目覚めたサンディさんが、パニックになって暴れ出す。私は傷口という出口を塞ぎ、サンデイさんが出て来られないようにした。


「獅子は可愛い子供を、崖から突き落とすといいます。私はいま、サンディさんを崖から突き落としたのです! さぁ、這い上がってきてください! 私は信じていますよっ!」


 ついに聖杖〈愛と抱擁〉が、〈蜘蛛女魔スパイダークイーン〉を突き破って出てきた。〈蜘蛛女魔スパイダークイーン〉が死に、強化素材だけ残して消える。一方、サンディさんは全身についた蜘蛛の液体を取ろうと、大地を転げまわり出した。


「気持ちわるい気持ちわるい気持ちわるい気持ちわるい」


「頑張りましたね、サンディさん!」


 ハッとして立ちあがったサンディさんが、詰め寄ってきた。


「頭、おかしい! 絶対、頭おかしいからぁぁぁぁぁ!!!」


「まぁまぁサンディさん。これであなたも、強化素材によって〈魔統武器〉を強化した、数少ない人類の仲間ですよ。なんたって〈死の楽園〉は、長らく誰も入れないよう封じられていたのですからね。さぁ、この〈蜘蛛女魔スパイダークイーン〉の強化素材を使ってください!」


 と言って脚を差し出したところ──サンディさん、勢いよく吐いた。虫が苦手ならば、早く言えばいいのに。だがこの強化素材だけは、ちゃんと使ってもらう。


 するとサンデイさんは、聖杖〈愛と抱擁〉を見つめながら、驚いた顔をした。


「す、凄い。武装Lv.が一気に85に上がった。こんなの初めての体験」


「それはそうでしょう。さっそくスキルツリーを開拓してください。ああ、その前にまず乗ってください。他の皆さんを探さねばならないので、パネル解放は飛行しながらで」


「え、飛行?」


 サンディさんを〈スーパーコンボ〉の後ろに座らせて、飛翔。後ろでなんか叫ばれているけど、振り落とされないように気をつけて。


〈死の楽園〉とは、広いようで狭い。どこまでも続いているように見える大地も、実際には行き止まりがある。小さな島くらいのサイズ。ようは箱庭世界だ。

 ここで離散した残りのメンバーを見つけるのは、そこまで難しくはないはずだ。とくに戦闘にでも入れば、その戦闘環境が目安となる。


 渓谷の上に出た。見下ろすと、渓谷の底では複数の〈髑髏兵(スケルトン)〉が、誰かに群がっていく。

髑髏兵(スケルトン)〉は、地上階でも何度か見かけたことがある(下層階だけで中層階からは見なくなった)。それだけ頻繁に登場する雑魚枠だが、〈死の楽園〉のオリジナル個体でも複数体いるのか。とすると、強化素材の質も、たいして期待できそうにない。


 私の後ろから、サンディさんが言った。


「お、襲われているみたいだけどっっ!」


「はい?」


「あの、さっきのおじさんが!」


 おじさんとは、ライオネルさんのことだ。複数の〈髑髏兵(スケルトン)〉と戦っているのは、ライオネルさん。

 地上階の〈髑髏兵(スケルトン)〉コピーとは違って、ここのオリジナルたちは骨太な敵だろう。ただ、それでも〈死の楽園〉の弱肉強食ランキングの中では、最下層に位置している。

 ライオネルさんが自力で撃破するのは、可能だろう。だから助けない。あんまり甘やかすのは良くないし。


 そこで私は、別の脅威を対処することにした。

 あれは【覇王魔窟】250階のことだった。そこでも今更の〈髑髏兵(スケルトン)〉複数体で、辟易したものだ。ただ、すぐに〈髑髏兵(スケルトン)〉の中に〈髑髏将軍(スケルトンジェネラル)〉という、強い個体がいるのに気づいた。


髑髏将軍(スケルトンジェネラル)〉の固有スキル《士気上昇》は、他の〈髑髏兵(スケルトン)〉の能力を上昇させるものだった。それはオリジナル個体でもいえることだろう。つまり、どこかで指揮を執っているだろう〈髑髏将軍(スケルトンジェネラル)〉の《士気上昇》を見逃してしまうと、ライオネルさんの自力生還率がぐーんと下がる。

 ここは先んじて、潰しておこう。


 しかし、どこにいるのか──あぁ、いた。

 指揮官というのは高いところにいたがるものらしい(バカも高いところに上りたがるらしいけど)。渓谷全体を見下ろせる岩場の上で、いまにも《士気上昇》を使おうとしている。

 私は〈スーパーコンボ〉を急降下させ──後ろでサンデイさんが叫んでいる──突撃。通常攻撃を〈髑髏将軍(スケルトンジェネラル)〉に打ち込んで弱らせてから、サンディさんを手招きする。


「殺してください、さぁさぁ」


「うわぁぁぁぁ、こうなったら自棄だよぉぉぉ!!」


 サンディさんの聖杖〈愛と抱擁〉から、《鋼鉄糸》が噴き出し、〈髑髏将軍(スケルトンジェネラル)〉の頭部に巻き付いた。そのまま、捻りつぶしてしまう。


 ほう。サンディさん、〈蜘蛛女魔スパイダークイーン〉強化素材から、《鋼鉄糸》スキルのパネルを解放していたのか。伸びしろが高そう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 伸びしろがあることは良いことです。(洗脳済み) [気になる点] 早起き→誘拐→進化(糸による遠距離攻撃も可能に)→…殺戮? 結論:サンディさんのSAN値はもうゼロよ! [一言] …
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