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43/202

43,200階?

 


 テンポ重視で、まずは160階まで攻略する。


 前回は161階の〈鎌鼬カッティング〉に手も足も出ず、逃げ帰ったわけだけど。攻略方法への仮説はあるので、あとは試してみるしかない。

 ただこの攻略方法仮説は、やはり【覇王魔窟】への一種の信頼によるものが大きい。

 すなわち、このまだ下層階で『防御不可』+『攻撃を当てるのも難易度の高い神速』の魔物を、唐突に出すまいという。

 そして、私は前回、〈鎌鼬カッティング〉の神速に恐れをなして、『これ』をしていない。すなわち──


 161階に上がるとともに、とにかく目の前の空間へと、魔改造(くわ)〈スーパーコンボ〉を振るった。

 とたん手ごたえあり。

 どこからともなく現れた〈鎌鼬カッティング〉が、撃破された状態で床に転がる。魔素に分解され、〈スーパーコンボ〉が回収。


 ふぅ、思った通りで良かった。


鎌鼬カッティング〉の攻撃は、こちらの防御力に関係なく、致命的なダメージを与えるようだった。その上で、攻撃を当てるのも難儀する神速である。

 しかし、本当に当たらないのだろうか? 

『〈鎌鼬カッティング〉からの攻撃は防御不可』。このチート的に対して、下層階クラスの魔物にとって妥当な弱点とは何か? 

 それはまさしく、『こちらの攻撃は必ず当たる』だろう。

 神速に惑わされたが、実際に〈鎌鼬カッティング〉本体に攻撃をヒットする必要はなかったのだ。161階において、どでもいいから『攻撃する』。

 それが事実上、〈鎌鼬カッティング〉へのヒットとなる。おそらく、どんなに脆弱な攻撃でも、一撃で撃破できる設計だろう。


 攻略法さえ分かれば、ある意味では、【覇王魔窟】最弱。しかし見た目の神速に騙され、『どうせ攻撃しても当てられないぞ』と思い込まされていては、一生かかっても勝てない敵でもあった。


 何はともあれ、162階へ。

 その後はまた、力技系の魔物ばかりが配置されていた。こちらの戦略はシンプルで、《爆雷舞》(『《爆打》と《雷打》の効果をあわせ、相乗効果で威力も増幅した連続攻撃』)一択。

 というのもこれは攻撃力が高く、攻撃速度も速い。防御への切り替えも素早くできるので、最も無難かつ、手持ちでは最強のスキル(単純な破壊力でいえば、《破嵐打》だろうが、こちらは敵に回避された場合のフォローが難しい)。


 しかし攻略が順調なときこそ、定期的な休息が大事。前は中毒状態となり、まわりが見れなくなって自滅した。【覇王魔窟】の1001階という最上階へとたどり着きたいのならば、できるだけ自制することも大切。

 もちろん、テンション高め高めになっちゃうのは仕方ないこともあるけど、せめて階移動のときくらいは、ひと呼吸いれていこう。水分補給も忘れずに。


 そんなこんなで──ついに200階までたどり着いた。ここの出現魔物を撃破すれば、二個目の攻略記録ポイントを解放できる。しかし、そういう時こそ足元をすくわれかねないのだ。さて、どんな魔物が出てくるのか──


 そして、そこはスタート地点だった。

 迷宮のスタート地点。

 前方には複雑に入り組んだ通路が伸びており、しかも一定距離の先は暗闇の中。天井は存在せず、上空にあるのは『黒い靄のかかった異次元の空』。


 前にジェシカちゃんは、『【覇王魔窟】の各階がワンフロアなのは下層階のみで、上層階に行けばまさしくダンジョン的な迷宮化が行われるだろう』という仮説を述べた。

 私も同感だったけど、いきなり200階で? それにさっきまでと比べて、なんというか『異空間』レベルが爆上がりしている。

 もちろん【覇王魔窟】の中は、ずっと異空間だったわけだけど。たとえば天井は、これまではそれでもあった。今やその天井はなくなり、異常な空が広がっている。どこかの異世界に飛ばされた、といってもおかしくない感覚。


 なんだろう、これは。200階にしては、凄みがありすぎる。

 とにかく、この階層にいる魔物を全撃破しないと、201階に行けない。といっても、まず201階へと続く階段を見つけなきゃだけど(見つけたとしても、迷宮内に撃破していない魔物が残っていたら、結界は解かれないわけだけど)。


 迷宮へと進みだす。

 そして──迷った。


 迷いに迷いながら、MAPが必要だと気づく。もっといえば『ダンジョンMAPを作成する』スキルが。それがないと始まらない。

 さらにいえば、私はすでに確信していた。

 ここは、200階ではない、と。


 おそらく、もっと上層階。やはり【覇王魔窟】内では起こるのだろう。基本的な階上がりとは違う、時おり発生する階のランダム化が。

 以前ミリカさんたちのパーティが壊滅したのも、上層階の〈寄生操魔パペットマスター(〈攻略不可能体〉一体の疑惑もあり)と遭遇したのも、このランダム化のせい。


 ところでランダム化によって上層階にたどり着いた者は、場合によっては、そこで詰むようだ。ミリカさんは下階へ自力脱出できた(つまり階段があった)ようだけど、このランダム化で入り込んだ上層階には、199階に戻る階段が消失していた。

 これは【覇王魔窟】上層階には、引き返すことのできない階も存在するということだ。私の場合、〈緊急脱出トンカチ〉があるから脱出できるけども(ジェシカちゃん、ありがとうっっっ!!)。


 せっかくだから、もう少しこの上層階を探索してみよう。いろいろ学べるだろう。すでに『ダンジョンMAPを作成する』スキルがないと上層階はキツい、と知ることもできたし。


 とある曲がり角を曲がったとたん、敵魔物と遭遇した。

 身の丈5メートルはある、牛頭人体の魔物。〈魔物図鑑:視覚版〉によると、その名は〈牛頭人体(ミノタウロス)〉。うん、なんかこれは、〈魔物図鑑:視覚版〉の力を借りなくても名前の予想がついた。


 よし、やるぞっっ! 

 と気合いを入れたとたん。〈牛頭人体(ミノタウロス)〉の体内から、何かが突き破ってきた。それは、女性。額につのが二本生えた、裸の女性。

 わぁ、このお姉さん、おっぱいが大きい!(というアホな感想を抱いている場合ではないぞ私。でも、そこ大事)。


 ちなにその女性は、〈牛頭人体(ミノタウロス)〉の血で全身が真っ赤だった。まずは床に降り立ち、伸びをする。


「あー、よく寝たぁぁぁぁぁ。2千年は、寝たかも」


「あのう」


 つのの真っ赤な女性さん、眠たそうにこっちを見た。


「はーい?」


「ここ、実際のところは何階なんです?」


「んー? 998階だよ~」


 へぇ。私、死んだ。



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