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199/202

199,心地よい眠りを。

 

《死体堆肥》スキルにより、スキル実がほぼ一瞬で収穫可能になる。


《電光石火:雷神》で飛び抜け、耕地より〈眠り姫の憂鬱のカブ〉を収穫したよ!


 そう。もちろん最後はカブに決まっているよね。


 齧り食す。《眠り姫の憂鬱》スキルを獲得。

『〈倦怠艶女ミスティナ〉に対してのみ効果がある。子守歌を聞かせることで、永遠の安らかな眠りにつかせてあげることができる』。

 安らかなる眠り。まさしく、それが〈倦怠艶女ミスティナ〉さんの、真の望みに違いない。


《電光石火:雷神》で方向転換。紙一重で、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんの《無涯弾》スキルを回避。あの弾に直撃をくらうと、こちらのスキル発動が遅延される。

 ここでの遅れは、命取り。


 私は《怠惰人生》発動を連発していた。これは〈倦怠艶女ミスティナ〉に《時間進行》スキルを使わせることで、時間停止系スキルの発動をさせないため(私の《怠惰人生》は実際には発動していないため、連続起動を試せるのだ)。


 にしても、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんが自主的にくれた強化素材のおかげで、【怠惰領域】を開拓できたんだよね。そのおかげで〈倦怠艶女ミスティナ〉さんの時間停止系スキルを制止できている。つまり〈倦怠艶女ミスティナ〉さんは『敵に塩を送る』真似をしたわけだけど。もしかすると、それこそが──


 ところで子守歌ならば、知っている。いまは天国のママが、よく歌ってくれたものだ。


 私が子守歌を歌いだす。瞬間、〈倦怠艶女ミスティナ〉がふわりと横になる。そこには優雅さがあった。


「〈倦怠艶女ミスティナ〉さん!!」


 私は駆け寄り、〈倦怠艶女ミスティナ〉さんを抱き起す。私の体内で、長く居眠りしていた人だ。私と最も近い相手ともいえるのだ。そんな〈倦怠艶女ミスティナ〉さんは眠たそうにあくびしてから、


「心地よい眠り。あなたにも、いつか味わわせてあげたい、アリア」


「そうですね。そのうち、私も眠りますので、そのときはまたよろしくです」


倦怠艶女ミスティナ〉さんは微笑んでから、最期の眠りについた。

倦怠艶女ミスティナ〉さんから、強化素材をいただくことはない。もう私の戦いもこれで終わったのだ。うーむ。実に疲れたなぁ。


 あとはオーディン神に最上階の権限を取り戻してもらえれば──ただオーディン神って、結局はどうなっていたのだろうね。誰かに封じられたのか、自ら雲隠れしたのか。または──


 ふいに空間が裂けて、次元の狭間から巨大なる男神が現れる。その登場は、まさしく神来るという感じ。どこからともなくファンファーレが聞こえてくるし、男神の背後からは直視できない光が爆発するし。これぞましく、オーディン神だよね。


「我こそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ最高神なるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 そしてオーディン神さんをひとめ見るなり、私はガッカリしてしまった。あー、この神様は、あれだよ。頭がおかしいよ。目は血走り、口から泡を吐いているし。なにより、狂気臭がするのだから。もう長く長く生きすぎたせいで、神様さえも正気を失ってしまっているなんて。


「オーディン神さん。申し訳ないのですが、あなたに【覇王魔窟】管理権を渡しておくわけにはいきませんね。ようやく分かりましたよ。すべての混乱の原因が。それはクラウディアさんでもエルフ勢力でも、〈攻略不可能体〉でもなかった。全てはあなただったわけですね、オーディン神さん。

 あなたのせいなのだから、ここはけじめをつけてもらいますよ。ここは勇退してください。堂々と、【覇王魔窟】管理権を後進に託すんですよ。恥じることはないのです。あなたはこれまで頑張ってきたけれど、ちょっと精神がおかしくなってしまった。別に構わないじゃないですか」


 ところで、このような説得が通ずるのならば、それは『正気を失っている』とは言わないのかもしれない。なんといっても、相手は気が触れても【覇王魔窟】を創った神である(最高神というのは自称なので、当てにできないけども)。

 とにかくその力は、〈攻略不可能体〉の次元ではない。


「この最高神である我が、【覇王魔窟】を譲るだとぉぉぉぉ?!?! このふざけた人間人間人間人間人間人間がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」


 身体中をかきむしりだしたのは、怒りをあらわにしているらしい。いや、それにしても引きかいて落とした皮膚が、これまた小さな蟲魔物と化して、這い回り出している。


「ふむ。では、私もそれなりのことを────」


《耕作:神の農業娘》を発動しようとしたけど、発動しない。それどころか他のスキルも、どれをとっても機能しないのだ。次の瞬間には、魔改造鍬〈スーパーコンボ〉も持っていられず、落としてしまった。


 どんなに狂気に落ちていても、ここぞというときは、奇妙な論理性を思い出すらしい。何が言いたいかといえば、ふいに正気性を取り戻して、オーディン神が言うわけだ。


「我が最強のスキルは、《超越王》!! 《超越王》スキル発動のもとでは、誰も我に害を及ぼすことはできんのだ! すべてのスキルは無効化され、すべての攻撃は意味をなさなくなる! 我こそが、ゆるぎない神なのだ! 誰も、我に逆らうことはできんぞ!!」


 オーディン神が、ハエを叩き潰すようにして、私を吹き飛ばした。


 なんという破壊力。または私の防御Lv.が無効化されたためかな。どっちでもいいけど、肋骨がへし折れて、肺を突き抜けたらしい。この程度のダメージは、これまでも数々受けてきたけど、苦しいのに変わりなし。


 オーディン神さん、両手を高々と突き上げて、勝利の雄たけび。


「どうだ元人間よ、これが我と貴様の力の差だぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 私はふいに困った。その場の勢いで、オーディン神を()()()しまったけれど。

 そのあとは、どうなるのだ?


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― 新着の感想 ―
[一言] ミスティナ、おやすみなさい。 そして最強かと思われた神は出オチという() ついでに思い出したんですけど行方不明1名と裏切り者1名はどこにいるんでしょうねぇ?
[良い点] ミスティナさぁーん!彼女はいいやつだったよ… アリアさんも空気を読んで(?)強化素材にしないの優しい。好き。 ていうか安らかな眠りにつかせてあげるのもめっちゃ優しい。好き(2回目)。 オ…
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