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144/202

144,探索中。

 


 ライオネルさんの探索スキルには、いくつか種類があった。


「最上級で5000万クレジット、上級で500万クレジット、中級で50万クレジット、下級で5万クレジット、というところだが?」


 ミィちゃんが愕然とした様子で、私に耳打ちする。


「師匠。この男、まさかと思いますが、カネを請求しているのでしょうか?」


「それでこそライオネルさんです。ですが、私の手持ちはありませんよ。あとで女王陛下御自身に請求してください。それでいいですか、ライオネルさん?」


「だが、いまはあんたが女王だろ、嬢ちゃん? 国庫金も自由にできるはずだぜ」


「ふむ。では最上級を買いましょう。いまは一秒でも早く、ミリカさんの居所を知りたいので。後払いでいいですね?」


「嬢ちゃんを信じるぜ。取引には信用が大事だからな。さて、まずはこの広大なるアーテル国のMAPを開こう。といってもラザ帝国と比べちゃ、小さな国だがなぁ」


 そんなことをいったら、ラザ帝国さえも、この惑星に比べたら小さなものだと思うけども。

 とにかく、ライオネルさんが探索スキル《探索β》を発動すると、私たちの前に、輝線で構築されたアーテル国の詳細MAPが出現する。

 

 ふむ。この手のMAPスキルがあると、【覇王魔窟】攻略も楽になるよね。だけど私は【探索領域】を開眼できそうにない。ならば強化素材に頼るしかないけれど──ライオネルさんは、強化素材を提供してくれる気はないよね?


「嬢ちゃん。物欲しそうな顔で、俺の人体素材を見るのはやめてくれないか? だいたい、俺は強化武器タイプなのだから、人体素材なんてものは存在しないぞ」


「ライオネルさん…………被害妄想も甚だしいですよ」


 ライオネルさんが右手を動かすと、アーテル国のMAPが動く。拡大したり縮小したり。ミィちゃんが、いらいらした様子で言った。


「師匠から多額の依頼料をふんだくったのだ。もっと真面目にやったらどうだ? 千回刻みにするぞ?」


「気の短い嬢ちゃんだな。いいか、《探索β》の発動条件は、おれが探索したい人物を知っていることだ。ミリカ女王のことは当然よく知っているが、捜索に成功するためには、間違いのないようにイメージする必要がある。お前さんも、離れ山まで行き、そこで見つけたと思ったら、なんとミリカ女王のそっくりさんだった──では笑うに笑えまい?」


「笑うとも。貴様の肉を千回刻みにしながら」


「なるほど。それは大笑いだろうな。そして──お前さんが邪魔してくれたものだから、スキルが不発に終わったようだ。いやまてよ──ははぁ、そういうことか。アリアの嬢ちゃん。どうやらミリカ女王は、もうアーテル国にはいないようだ。くそったれ。周辺国家は、ラザ帝国も含めて、俺は不慣れなんだがな」


 私は別の可能性に行き当たった。だが、もしもそうだとすると──私は強制的に、初心にかえることになるが……。

 いや、まだそうと決まったわけではない。ここは答えを焦って出さずに、ライオネルさんの探索スキルが、ひとまずの成果を出すのをまとう。


 ところでミィちゃんは、すでにライオネルさんをどう切り刻んだものか、という顔で見ている。


「やる気はあるのか、貴様貴様?」


 ライオネルさん、少しばかり顔色が悪い。《探索β》スキルの連続発動は体調にくるのかもしれず、単純にミィちゃんからのプレッシャーのせいかもしれない。


「やる気だって? もちろんあるとも。だから、そうカッカすることはないぞ拷問娘」


「なに? ミィの職業が、なぜ拷問吏だと分かった?」


「人体を股から裂く刃を〈魔統武器〉にしている小娘は、拷問吏か処刑人に決まっている。そのうえお前さんは、拷問法の千回刻みをやたらとやりたがっているからな」


《探索β》によるMAPは、さらなる広がりを見せる。ラザ帝国を含めた周辺国へと。だがミリカさんが見つかることはなかった。ライオネルさんはどっと疲れた様子で、近くの椅子に腰かけた。額の汗をぬぐい、ミィちゃんを注意深く見ながら、私に言った。


「どうやら失敗したようだ。依頼料は払わなくていいぜ」


 ミィちゃんが鼻で笑う。


「当然だ」


 だが私は、全額5000万クレジットを支払う、と言った。

 ミィちゃんが目を丸くする。


「なぜですか、師匠?」


「ライオネルさんは消去法という方法で、ミリカさんの居所を明らかにしたからですよ──」


 私はアーテル国内の、ほぼ北方領域のある一点を指さした。私のカブ畑があった、その近くを。


「【覇王魔窟】です」



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