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131/202

131,ベロニカ・ゾーン。

 

 サンディさんが酔いつぶれたころ、ベロニカさんがやって来た。


「ダ――――リンっっっ!!!! やっぱり生きていたのね!! これも、あたしの愛の力だわぁ!!」


「うーん。愛は関係ないと思いますよ、マジです」


 ベロニカさんが私に抱きついてきて、やたらと頬ずりしてくる。それから耳の後ろを舐めてきたところ、レイクさんが引きはがした。


「たとえカブ冒険者ギルドのギルマスだとしても、女王陛下にそのような無礼は許されませんぞ!!!」


「え、アリア、女王になったの? きゃはっ、それでこそアリアよ。ミリカじゃ力不足だと思っていたのよね~」


 私は玉座に座りながらも、座り心地の悪さにウンザリしていた。


「残念ですけど、これはミリカさんが『王の帰還』するまでの、つなぎですよ」


「ふーん。まぁミリカのことだから、しぶとく生きてはいると思うけれど。正直、ミリカもアリアになら喜んで、王位を移譲すると思うのよねぇ。国民にとっても、それが安心だわぁ」


「いまは有事だからいいですけど、平和になったら、国民は正当なものを王位にと臨みますよ」


「本当にそう思う? 昔は、『王を殺した者が新たな王』になったそうよ、アリア。分かる? 何も『強い者が総取り』というわけじゃないのよ。王というものは、その国家の代表というだけじゃぁないのよ。この国の象徴であり、それはたとえば国土とかも体現しているの。ならば、最も強い者こそが王として君臨するべきでしょう? それこそが国家は強く、うるおい、国民の幸福度も上がるというものよ。血筋とか、政治とかで決めるのが、つくづくバカげているわけ」


「じゃあ、選挙というので決めたらどうです? 最近、南方諸国では流行りらしいですよ」


「多数決は無能を選ぶ、の理論、知らないの?」


 まぁ一理ある。投票では無難なものが選出されるし、無難と無能は隣同士だ。


「ベロニカさん。話を戻しますけど、私は女王をやり続けるつもりはありませんよ」


 ここのところを、ちゃんと断言しておかないと。いまはただ、オートルさんのような『棚から牡丹餅』で王位に就こうとする者を阻止するため、王位を空白しないために、私はここに座っているのだから。


「それはそうと、ベロニカさん。王都のほうは、どうです? いえ、まず騎士団からの報告を聞きましょうか。レイクさん?」


 私が騎士団長に任命したレイクさんは、先ほどまで騎士たちを引き連れ、王都内を駆けまわっては、逃げ遅れた人たちを救出していたのだ。


「はい。王都内では、ゾンビの数が増えるばかりです。その中で、陛下にはこちらを見ていただきたいのですが──」


 レイクさんの部下が、布にくるんだゾンビ死体を運んでくる。それにしてもゾンビがそもそも死体なのに、さらに『死体』がつくというのは、頭痛が痛いの世界だよね。


 レイクさんが自身の手で布を取り払う。

 さて、私にはただのゾンビ死体に思えるが。ところでゾンビ死体である以上、頭部はちゃんと破壊されている。そのため生前の顔は分からないわけだが、腐敗度からして、土葬されていたものが這い出てきたのは確実。

 この国が正常に戻ったら、火葬を義務づける法律を作ろう。それを私の女王としての最後の仕事にしよう。


 レイクさんが、ゾンビ死体の衣服から、なにやら銀貨を取り出した


「こちらの銀貨は、黄泉の河の渡し舟に乗ることができるよう、土葬のさい遺族がポケットに入れるものです。アーテル国の流通貨幣ではなく、古いものを使用するのが習慣なのです」


「そんな習慣は、はじめて聞きましたね」


「はい。アーテル国の南方領域のみで続けられている風習ですので」


「なるほど。つまり、このゾンビさんは南方領域からやって来たと。それが自力の『ゾンビ歩き』で来たのか、死体のときに何者かに運び込まれたのかは分からないけれども、と。とにかく、王都のゾンビが増える一方のひとつの原因は、これですね。王都の外からも、ゾンビは供給されてくる」


 やはり、ゾンビ化を行っている源を断つしかない。〈寄生操魔パペットマスター〉ことジョアンナさんを討つのだ──しかし、私の直感からして、おそらくジョアンナさんは、〈攻略不可能体〉最強。どう攻略したものか。


「ところでベロニカさんは、カブ冒険者ギルドのギルマスとして、何か報告があるのですよね?」


「ええ、そうよアリア。あなたを愛するしもべであるあたしは、ちゃんとギルマスとしても、仕事をしていたの。これも、あなたへの愛の証明なのよ。さあ、受け取って!!」


 そうしてベロニカさんが差し出してきたのは、これもまた布にくるまった物体だった。そうして布を取り払うと、とんでもない形相の死に顔を残した、女の生首だった。


「……だれですか?」


「邪教の教主だった女の生首よ、ダーリン」


「うーん」


 玉座の間に、ゾンビ死体やら、凄い形相の女の生首やら持ち込むなんて。さすが終末。


「なぜに邪教教主の生首を刎ねる必要があったのですか?」


 ベロニカさんは生首を床に置いて、溜息まじりに説明しだす。


「この邪教が、あたし達ととても縁のある魔物、あの〈悪鬼羅刹ザ・ボーイ〉を崇めていたから、よ」


寄生操魔パペットマスター〉と〈魔創造人イマジネ〉に続いて、こんどは〈悪鬼羅刹ザ・ボーイ〉まで出てきたのかぁ。本当に、アーテル国が亡びるかどうかの瀬戸際だね、これは。

 いや、アーテルだけではないよね。きっといま、私たちは世界が滅びるかどうかのところに立っているんだよね。


 まぁ、〈悪鬼羅刹ザ・ボーイ〉が外に出てきたのならば、都合がよい。ベロニカさんの体内の魔素爆弾を解除するため、ここで殺させていただこう。


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