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[ 第3回小説家になろうラジオ大賞 ] の

オーパーツカレー(甘口)

作者: 塩谷 文庫歌


「なっ! ……なんてこと!」



 地層の奥深くから発掘したソレを目にして、私は愕然とした。

 発見された場所や時代にそぐわない遺物の異物、オーパーツ。



「水分が無い、ミイラ化? ……そうか、この環境」



 かさかさに乾いた固形物、それを包む霜柱。

 低温環境下でミイラ化、これは一般常識だ。

 薬品を顆粒にする際、低温で乾燥させる製法もある。


 それにしても、何故、今日この時まで放置されていたのか。何度も調査されて、一度くらい人目に触れていて当然。まるで「見つけてくれ」と語りかけるように、真っ先に掴んでいた。


 我に返って時計を見る。

 あまりにも奇妙な出来事に、随分時間が過ぎていた。



「このままではマズイ!」



 決意も新たに、扉を閉めた。

 この邂逅、無駄にできない。




     ◆




 結婚から10年。


 主人は帰宅すると無言でダイニングテーブルに座った。

 すぐにテレビでニュースを眺め、特に会話は無かった。

 ゴトリ、と手元に大ぶりな深皿を置く。



「はい、今日はカレー」



 いつもどおり無言でスプーンを手に取った。



「今日は具沢山だな?」


「え? ……そ、そうね! 野菜は体に良いのよ?」



 1つずつ調べ始めた!?



「人参、じゃがいも、ブロッコリー、カリフラワー」


「健康志向、でしょ?」



 ブロッコリーとカリフラワーの違いを知っていた。

 でも首を傾げて皿へ戻した、()()()()()()()()()

 所詮その程度の知識。


 よぉし、そのまま……



「この()()()()()、どうやって切ったんだ?」


「えっ?」


「どうやったら、こんなに綺麗に切れるんだ」



 気付かれたか?

 否、断じて否。



「百均だったかな? ……どうして?」


「キャラ弁に凝ってる若い子がいてさ」



 女子ウケを狙っただけか。

 さぁいけっ、そのまま……



「お前は食べないのか?」


「え? 私?! ……洗い物があって」


「じゃ、お先」



 食べた! 咀嚼している。


 どうだ?


 ()()()()()()()()()()を煮込んだ、カレーの味は?





 ……なんの感想も無し?


 味気ない男、無味乾燥。

 夕食と文句だけは一人前の配偶者め。



「お味は?」


「カレー味」


「そうよね」



 さて、と。


 泡を吹いて倒れたりしない。

 どうやら毒じゃないらしい。



「でも、新婚当時っぽい味がする」


「……っへ?」


「共働きで時間無くてカレーとか多かっただろ?冷凍野菜をチャッチャと炒めて、丁度こんな感じだった。不景気で給料上がらないのに、そっちは倒産したからな。来年40になる、だから10年か。なんてカレーだ?」



 ……それ?





「オーパーツカレー」


「初耳だ、新商品?」


「そんなとこ」


「……ところでさ。この、気色悪い物体はなんなんだ?」

「キクラゲ」

「あぁ、これがキクラゲ?!」

「そう」

「クラゲだからグニャグニャ。中国人なんでも食うな?」

「キノコよ」


 やっぱり知らなかった。


「おかわり」

「こっちは2人前!?」

「こっち……なにが?」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「キクラゲは知らない」で、はじめてオーパーツ=何年も眠っていた冷凍食品だと気づきました! 霜柱で気づけなかったのが悔しい。すっかり騙されました! いやー、リアルですね。うちにも魚とかミー…
[一言] 冷凍庫の中にずっと置いたままにしてある食品……ありますよねぇ。 定期的に掘り起こして処分しないと、本当にオーパーツになっちゃう。 そう言えば昔、冷蔵庫のCMで発掘調査みたいなことしてたなぁ…
[良い点] 長く一緒にあゆんだからのイタズラが可愛い奥さんと、 ちゃんと昔の味を覚えている旦那さん。 オトナ可愛い作品、堪能させていただきました( *´艸`) 日常なのにさりげない激甘を出せるなん…
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