リョウちゃんのお母さん
僕は四国の片田舎で生まれ育った。近所の人や友達からは「ケンちゃん」とか「ケンくん」と呼ばれていた。これから僕の少年時代、青年時代の思い出を書くのだが、特に性に関する艶恋話ということで、紫式部の源氏物語にちなみ、名前は、「ヒカル ケンジ」とでもしておこう。
僕が性に目覚めたのは、小学校6年生の夏休み、昭和40年代の後半である。しかも、結構、常軌を逸した性の目覚めであった。
その日僕は近所で仲良しのリョウちゃんの家の近くで一人で遊んでいた。
仲良しと言ってもリョウちゃんは僕よりも三つ年下で、その時は小学校3年生だった。
リョウちゃんがウチの近所に引っ越してきたのは、その時よりも3年前で、僕が3年生でリョウちゃんは幼稚園生の時だった。
僕の近所の同級生はみんな女の子で、下級生もほぼ女の子。男の子は、かろうじて僕より二つ下のトモ君がいるだけだった。
なので、いつも遊ぶ相手は女の子。遊びも小さい頃は、ママゴトやおはじき、あやとりなど女の子が好む遊びばかりであった。
そんな時に、うちのすぐ近くに越してきた数少ない男の子だったので、三つ下とはいえ、とてもうれしくて、毎日リョウちゃんの家に遊びに行っていた。
しかも、お母さんがとてもやさしく美人だったので、お母さんと話をするのもとても楽しみだった。
お母さんは、いつも髪をアップにしており、本当にきれいで、そのころテレビで放送されていた宇宙ヒーロー物の実写版に出てくる、僕が大好きだった女性隊員に似ていた。
リョウちゃんのお父さんは、近くの縫製工場に努めており、よく出張に出かけて家にいることが少なかったので、ほとんど会うことはなかった。
そんなリョウちゃんの家にその日も遊びに行った。
6年生になって、少し下級生と遊ぶのが恥ずかしくなってきていたので、遊びに行く回数は少なくなっていたが、その日は夏休みで、特にやることもなく、暇を持て余していたので、リョウちゃんのきれいなお母さんに会いたいという気持ちもあって、リョウちゃんの家を訪ねたのだ。
でも、その日、リョウちゃんは少し離れた所に住んでいるおばあさんのところに行っており、家にいなかった。
「ケンちゃん、ごめんね。リョウタは今日はおばあちゃんちに行ってるの。今週の末には帰ってくるけん、帰ってきたらまた遊んでやってね」そう言って、おばさんは優しく僕を玄関で追い返した。
その日は、本当にやることがなく、リョウちゃんと遊ぶ気満々だったので、僕はなかなかあきらめきれず、リョウちゃんの家の近くで、何をするでもなく、行列を作って、バッタの死骸を運ぶアリの大軍を眺めていた。
そんなことをしていると、突然後ろから「おう、ケン君か。何しよるんや?」という図太い声が聞こえた。
驚いて後ろを振り返ると、そこには、坂の下で酒屋をやっている白石のおっちゃんが立っていた。
「もう昼やぞ。はよウチに帰らんと、お母ちゃんが心配するぞ」
ウチの母親は心配性で、少しでも僕の姿が見えなくなると、すぐに「ケンジ、ケンジ」と探していたので、少し皮肉も込めての忠告だった。
僕は「ウン」と言って、家の方に走って行った。
この白石のおっちゃんは、機嫌のいいときはニコニコして、先ほどのように、僕になんだかんだと話しかけてくる人だったが、機嫌の悪いときや、酒を飲んで酔っ払っているときなどは、僕たちを大声で怒鳴ったりして、何よりも、かによりも、頭はつるつるの禿げ頭だし、その上、身体も大きかったので、見た目にもとても怖そうな人だった。
なので、僕はこのおっちゃんのことが好きではなかった。
この前も、リョウちゃんと二人で遊んでいた時のこと・・・・・・
リョウちゃんが葉っぱの上で二匹のカタツムリが引っ付いているのを見つけて、僕に「ケンちゃん、このデンデンムシ何しよるん?」と聞いてきた。
そのカタツムリは、二匹が引っ付いて、もんどりうっており、しかもネバネバの白い液が周りにいっぱい付着していて、とても気持ちが悪かった。
僕は、なんとなく、最近理科で習った「交尾なのか?」とも思ったが、白いネバネバ液のことが分からず、間違ってるかもしれないと思い、黙っていた。
そこに、この白石のおっちゃんが来て、僕たち二人に声をかけてきたのだ。
「おう、ケン君とリョウちゃん、いっつも二人で仲良しやの~」
その声で、僕らはおっちゃんの方に振り向いた。
「おっちゃん、このデンデンムシ何しよるん?」リョウちゃんが、先ほど僕にした質問と同じことを白石のおっちゃんにも尋ねた。
おっちゃんはリョウちゃんが指さす、その二体が引っ付いたカタツムリの方を見た。
「ハハハ、これは、エエことしよるんや。ケン君なら分かるやろ?」と意味ありげに、おっちゃんが答えた。
僕は、これが交尾であるという事に自信はなかったが、おっちゃんのスケベそうな笑いに、おそらく間違いないと確信し、小さく「うん」とうなずいた。
リョウちゃんは、今度は僕の方に振り返り僕に「ねえ、ケンちゃん教えて」と言ってきた。
僕は答えが合っているかどうか自信がなかったので、小さな声で「コウビ」と答えた。
リョウちゃんは、「コウビ?」とその言葉の意味が分からず不思議そうな顔をして言った。
「ねえ、コウビってナニ?」僕は、その質問には答えなかった。
すると、白石のおっちゃんが、「リョウちゃんとこのお父さんとお母さんも、夜になったらしよるわ。裸になって引っ付いとるとこ見たことないか?」と言ってきた。
リョウちゃんは、その言葉に「あるよ」と答えた。僕は、リョウちゃんのホラだと思った。
でも、おじさんはニヤニヤしながら「ほう、いつ見たん?」と言ってきた。
リョウちゃんは「この前、僕が寝よるときに目を覚ましたら、お父さんがお母さんに裸で抱きついとった」と言った。
「ほう、それでどんなかった?」さらに、おじさんはリョウちゃんに質問した。
リョウちゃんは、「お母さんが、『はあはあ』言いよった」と答えた。
おじさんは、その答えに前のめりになり「それから?」と、嬉しそうに質問してきた。
リョウちゃんは「僕、眠たかったけん、その後は知らん」とめんどくさそうに言って、そっぽを向いた。
おじさんは、「そうか、それは残念なことをしたな」と言って、高笑いしながら、もと来た道の方に去って行った。
白石のおっちゃんとは、そんな人だった。
僕は、走り去りながら、後ろを振り返ると、その白石のおっちゃんが、リョウちゃんの家の玄関を開けて家の中に入って行くのが見えた。
僕は、妙な何かを感じ、このスケベな白石のおっちゃんが何をしにリョウちゃんの家に入って行ったのかが気になって仕方なくなった。
でも、もうお昼前だったので、お昼ご飯を食べに家に帰らないと、白石のおっちゃんが言うとおり、心配性の母が僕のことを探し回ると思い、ひとまず昼食を食べに家に帰ることにした。
家に帰ると、案の定、母はすでに僕がお昼になっても帰ってこないことを心配しており、「ケンジどこに行っとったんよ。もうお昼ご飯できとるんよ」と言って、少し不機嫌であった。
お昼ご飯は、そうめんであった。母のそうめん出汁は、今から思うと、とてもおいしかったが、子供の僕はあまり好きではなかった。一気に一玉だけ流し込むと、僕は「ごちそうさま」と言って、すぐに家を飛び出した。
白石のおっちゃんが、何をしにリョウちゃんの家に入って行ったのかが気になって、一時でさえ無駄にしたくなかったのだ。
「こら、ケン、もう食べんの?おなかすくよ」という母の声が後ろに聞こえたが、「うん、もうおなか一杯」と言って、僕は走ってリョウちゃんの家に向かった。
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少しエロくて、ちょっぴり切ない、そして少しだけ、問題提起もしながらの、社会派官能恋愛小説を目指します。
まだ、慣れていないので、章立て等失敗しながらの連載になるかもしれませんが、なにとぞよろしくお願いいたします。
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それでは、完結までお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。