地方大会予選1
「それじゃあ、行ってきます」
「「行ってらっしゃい!」」
「頑張ってこい」
「無理しないようにね」
今日は、地方大会の予選の日。父も母も早朝から起きて見送ってくれた。
家を出て電車で会場へ向かう。
とある武道館で大会は開かれる。結構な団体が参加するのだ。
会場に到着し、自分の団体の元へと向かう。
周りの皆緊張しているようで、雰囲気が堅い。
「それでは、各員気を引き締めて試合に望むように! 時間を確認して自分の試合に各自向かうように!」
バラバラに散らばる。
試合のトーナメントを見ると5試合勝てば優勝できるようだ。
一試合目はもう少ししたら始まる。
心を落ち着かせて、精神を統一する。
これまで十蔵さんと十色さんに指導され、格段に強く、上手くなっているはずだ。自分に自信を持って戦うんだ。冷静になれ。
自分に言い聞かせながら試合の順番が来るのを待つ。
防具をつけて、待つ。
「次の試合を行います。」
きた。
中央へ向かう。
「お互いに礼!」
「始め!」
ビュッ
相手の突きが迫るが上半身を傾けて避ける
シュッ パシッ
上段蹴りが来るが受ける
あぁ。十色さんに比べれば、遅すぎる。
「セェィッ!」
相手の首元へ突きを放ち胴体へも突きを放つ
「やめ!」
「赤有効! 始め!」
疾風には相手の攻撃が全て見えていた。
一回有効を取れてからは
一方的だった。
ポイントを積み上げながら、最後
「セェイッ!」
スパァンッ
上段蹴りが決まる。
「やめ!」
「赤の勝ち! お互いに礼!」
礼をして立ち去る疾風
少し遠くで誰かが騒いでいる
ふと見ると悠人が泣いていた。
「あいつが……グスッ……勝てた!……勝てたぞ!……グスッ……やった!」
人一倍俺が勝てないのを気にしていたんだな。そう思うと本当に勝ててよかった。
近くまで行くと
「ちょっと何泣いてんのよ! 1回勝っただけで大袈裟なのよ!」
朝陽が叩きながら悠人に文句を言っている。
「なぜ?泣く?」
結陽にも弄られていた。
悠人と目が合う。
笑顔でガッツポーズをすると
「よかったな!……グスッ……見てたぞ!……グスッ」
ははっ。ホントに喜んでくれて嬉しい。扱かれた甲斐があった。
「あんた! こいつどうにかしてよ!」
朝陽に言われるが、事情を知らないのだ。そういうのも仕方ないだろう。
手を振って通り過ぎる。
晴れやかな気持ちで次の試合に望む。




