十蔵の指導 現実編3
「では、気を取り直して指導をしていこうかのぉ」
パンッパンッ
「何かご所望でしょうか?」
影からスッと執事さんが現れた。
「十色を連れてきてくれるかのぉ」
「畏まりました」
お辞儀をするとスッと居なくなった。
しばらくすると
「じいさん、もう話の方は終わったのかい?」
「うむ。ちとワシと手合わせしようではないか」
「じいさんと? まぁ、構わないよ」
二人は向かい合って構えた。
「じゃあ、私からいくよ!」
一瞬で十蔵の前へ行くと踏み込んで掌底を繰り出す。十蔵は受け流して、体制を崩させたところで中段突きを放つ。
それを身を翻して避けると飛び上がりながら前蹴りを放つ。十蔵はそれを下からすくいあげるように足を上へ弾く。空中に放り出された十色に十蔵が回し蹴りを胴体へ放つ。
ドスッ!
十色を見ると何とか腕でガードしていたが吹き飛ばされる。
ズダンッ!
受身を取り立ち上がる十色。
その目には闘志が宿っていた。
『ゴクッ』
疾風は息を飲んだ。
すごい威圧感だ。強い人達はみんなこんな気を発するんだな。
「この位にしておこうかのぉ。いいウォーミングアップになったわい。」
「なんだ、もう終わりかい?」
「十色はのめり込むと長いでのぉ」
十色は端の方に座る
「では、疾風君、ワシが相手をしよう。遠慮はいらないでのぉ。ワシに万が一当たったとしても平気じゃて。思う存分、かかってきなさい。」
十蔵の前に行くと、目を瞑って気持ちを落ち着かせる。
自分を許す。自分をしがらみから解放するんだ。
「押忍!!」
気合を入れて構える。十蔵も構えたまま二人は間合いを計るように回りながら様子を見る。
「来なければ、ワシが攻めるぞい?」
「フッ!!」
顔目掛けて上段突きが放たれる。咄嗟に受け流そうとする。
チリッ!!
頬を拳が掠める
冷や汗が背中に流れる。
今のが当たっていたらどんな怪我をしていたか。油断してはダメだ。十蔵さんは本気だ。俺も本気でやらないと。
「そりゃ!」
上段蹴りを放つ十蔵。何とかガードする。
ドスッ
「くぅっ」
蹴りが重い……。
疾風は下がってしまう。
十蔵は容赦なく肉薄して中段突きを放つ。
ゲームの時の感覚のように、攻撃が来るのが気配でわかった。
その時、反射的に内側に受け流し、がら空きの胴体への逆突をくり出す。
バチッ!!
「ふむ。今のは鋭い突きじゃったよ。攻めれたじゃないか。確かに高校生にしては鋭いのぉ。同年代だと倒れるのも納得じゃ」
「後はのぉ、射程を考えて伸び切る距離の位置取りをすれば寸止めはできるのじゃよ」
「わかりました。やってみます」
また二人で組手を始めた。再び息を吹き返したかのように疾風は技術を吸収していく。




