第一話
面白かったら教えて下さい。
「いってえーなあー」
ダンジョンを出てすぐの宿屋で俺の声が響き渡る。僕の名前はギーラ。ダンジョンの最果てに憧れる冒険者だ。この街には試練のダンジョンと呼ばれるものがある。このダンジョンは駆け出し冒険者が初めての冒険に選ぶことが多い。理由は、死なない程度にダンジョンの厳しさを教えてくれるからなんだけど。
「まさか、一階層でゴブリンに囲まれて逃げることになるなんて思っても無かった」
俺はパーティーを組んでないからな~。明日受付でパーティー募集しようかな~。
¥
俺は受付嬢にパーティーの募集の件を伝えた。
「ギーラ様。パーティーメンバーはどのような人を希望しますか?」
俺はすこぶる悩んだ。どのような人・・・。う~分からん。とりあえず素行が悪くなくて犯罪歴が無い人が良いよな!
「素行が良いのと、犯罪歴の無い人をお願いします」
「受けたまりました」
受付嬢さんが後のことはやってくれるだろ~。俺は街でぶらぶらしようっと~。とりあえず、かっこいー武器を見に行こう。そうと決まれば武器屋だ~。ワックワックするな~。
¥
冒険者をするなら大切なのは、決まって武器だ。勿論、体が資本だし命以上に大切なものなんてこの世にないと思う。だけど、それでも武器は冒険者の生き方を決めるって点では大切だ。例えば、かっこいい武器を使ってダンジョンを踏破したら使っている人がかっこいいだろ~。
武器って言っても色々な武器がある。取り敢えずかっこいい武器が欲しいな~。とりあえず、そこら辺の武器屋入ろうっと。
「へい、いらっしゃい」
店主のおっちゃんが気前よく挨拶してきた。かっこいいは、正義。
「武器が欲しいんですけどー。これはもうかっこいいと思う武器ください」
「武器の種類は?」
俺の使うのなんて決まってるだろ。
「ハンマーで!」
ハンマー欲しいというとおっちゃんが目を点にした。
「かっこいいハンマーなんてものは無い。冷やかしなら何処か別の場所でやるんだな」
おっちゃんは何もわかってないな。
「酷いなーおっちゃん。冷やかしじゃねーよ。俺は本気でかっこいいハンマーが欲しいんだ」
「大体な坊主、ハンマーって大工が使ったりする工具であって武器じゃねえよ」
おっちゃん、俺もそう思っていた時期があるが俺はそれが嘘だと知っている。
「おいおい、おっちゃん。嘘はいけねえ。俺の親は大工だが親父は言ってたぞ。【これは俺にとって武器だ。そして俺はこれで毎日家族を食わせている。だから冒険者になってもギーラ、お前の命を守ってくれる。持っておけ】って」
おっちゃんは俺のことを残念な奴を見るような目で見始めた。
「坊主の親父さんかわいそうだな。こんなバカな息子を持ってしまって。大体なあ、親父さんが言ったことは大工の武器ってことを言っただけだぞ」
「はあ、俺はバカじゃねー。親父が言ってたんだ。天才だ」
「親父さんが言った天才は違うと思うぞ。天災の方だと思うぞ」
「取り敢えずおっちゃん。この際何でもいい、かっこいい武器売ってくれ」
「そもそも何で坊主はそんなに武器を探しているんだ?」
おっちゃんが漸く売ってくれる気になったのか武器買う理由を聞いてくれた。
「よく聞いてくれた。父ちゃんから貰ったハンマー壊れたんだよ~」
親父さんはゴミを見る目で俺のことを見た。失礼だなー。
「坊主の親父さんに代わって俺が教えてやるが、ハンマーは坊主の武器にする為に持たせたんじゃねーよ。それは、坊主の安全を願ってのお守りだ。こんの、バカがーーー」
な、なんだってー!やっべ、ぶっ壊したんだが。どーしよー。
「それなら、親父から貰った俺のお守りぶっ壊れてるんだけど。泣きそうー」
「泣け」
しばらく俺は泣いた。親父ごめん。お守り壊れた。
「まあ、いっか~。帰ろう」
「いや、全然よくねーよ。取り敢えず、武器買って」
あ、忘れてた。
「おっちゃん、武器何にしたらいいと思う?」
「坊主は頭も悪いし背も小っちゃいからなあー」
「は、何言ってんだおっちゃん。俺は親父にデカいって言われたぞ。頭悪いのは認めるけど」
「お前がデカいのは背じゃねーよ。態度だよ。態度ーー」
態度って。普通じゃん。何言ってんの。まあ、いいか。
「それはいいから~、どの武器が良いかさっさと教えて」
「頭が悪い坊主は、剣以外進められねーよ。だが、問題は何の剣にするかだよなー。んー。ハンマー使ってたんだから小さい剣が良いよな。ファルシオンがいいな」
「ファルシオン?それはかっこいいのか?」
「ああ、かっこいいぞ。さっさと買え」
「わかった買う。ありがとう。おっちゃん。また来るよ」
「二度と来るな!!!」
俺は無視をして武器屋を出ることにした。でも、最後に一つ言っておかないと気が済まない。
「おっちゃん、俺は坊主じゃねーよ。天然パーマだ!」
俺は武器屋に背をむけた。
後ろでヒステリックに叫ぶおっちゃんの声が聞こえたけど関係ないね!よくあることだし!
¥
翌日、パーティーメンバーが見つかったという報告を受けて受付に向かった。
「受付嬢さん、メンバー誰ですか?何処ですか?」
コツッ、コツッ、コツッ
俺が受付嬢に問い詰めていると後ろから足音がした。だからなんとなく振り返ることにした。そしたら、アホ毛が目立つ金髪の少年?みたいなのがいた。
「あんたのパーティーメンバーになったのは、この私よ!」
「変な奴だなお前。男なのに私とか言って。まあ、取り敢えず俺の名前はギーラだ。よろしく~」
俺は自己紹介をしといた。
「あなたには変な奴って言われたくない!何で、ダンジョンに行くのに半袖短パンなの!ふざけないで!それと、私は女よ」
「いや、そんな些細な事はどうでもいいから、名前教えて」
「些細な事?はぁー、まあ、いいわ。名前はルチル。よろしく」
なんか自己紹介をした後、ルチルは疲れた顔をしていた。疲れんの早っ。雑魚じゃんルチル。
「名前は雑・・・ルチルか。覚えておくよ~」
「あなた今何って言おうとした?雑魚って言おうとしたよね!聞いてたんだから」
何言ってんだ、こいつ。会話は聞こえるように言うだろ。バカなのか。仕方ない。それはつまり・・・。
「ルチル悪かった。そんなこ言うつもりは無かった。ルチルは疲れやすいんだね!ごめんね~」
「取り敢えず謝ったから許す。ただ、疲れた原因はあなたのせいよ!」
ルチルは自己中心的人間なんだろうなあー。すぐ人のせいにするし。ここは俺が教えてあげなくちゃ。
「ルチル。真剣に聞け」
俺はルチルに近づいて、ルチルが聞こえないフリをしないと思う位置まで行った。
「な、何よ!」
こいつの顔をよく見るとアホ毛がうざいな~。てか、何で顔赤くなるの?熱あんのか?まあ、どうでもいいけど~。俺の事じゃないし~。
「ルチルは、習わなかったんだな。人のせいにするのは良くないことだって。人のせいにするのは良くないよ。覚えた?」
俺はルチルにしっかりと教えてあげた。これでもう、人のせいにしないなー。俺、よくやった!偉い。かっこいいぞ~。
ん?ルチルが震えている。なんだ、そういうことか!
「ルチル、さてはお前、俺の言葉に感激したな?」
この震え方は間違いない。
「あんたねぇ。ぶっ殺されたいの?」
「な、何でルチルは怒っているんだ?」
だ、誰か教えてくれ。
「まさか何も分からないの?」
こ、怖い。ルチルが怖い。人生で初めて恐怖を感じた。こ、これは・・・ルチルは強いのか?
「分かりません。教えてくれ!」
俺は分からないから聞くことにした。
「いいわ、教えてあげる」
ルチルはそう言って俺に近づいてきた。ど、どうしたんだ?
「身をもって知ればいいわーーー!!!!」
ゴチっ
「!!!!!」
ルチルが俺の玉を魔力で強化した足で蹴った。
この蹴りは間違いない!逸材だ~。やるね~。
あっ、ヤバい。意識が薄れていく。
そして、おれの意識はブラックアウトした。
¥
「ここは、何処だ?」
俺は目を覚ました。寝心地が良い。どうやら俺は、ベッドに寝かされていたようだ。寝てる間に移動とは俺も偉くなったもんだ~。ん?俺の玉、大丈夫かな?ルチルに蹴られたときに不吉な音が出ていたような記憶があるんだが。
スーっ、スーっ
変な音がするぞ。俺は横を向く。
「おーい、ルチル。起きろー。てか、何で寝てるんお前?」
「・・・・・・・・・・・・スー・・。」
こいつ、一度寝たら起きないタイプの人間だなー。こいつの寝ている姿を見ると更に思うが、アホ毛がかなりうざい。アホ毛毟ることにした~。やーい、玉の恨みー。
プチっ。
「いっ、たいーーー」
あ、起きた。アホ毛女が起きた。
「やあ、いい朝だな。おはよー。それじゃあ、早速だがここ何処?」
「・・・・・・・・・・・殺すわよ。まず、言うべきことがあるでしょ?」
「ルチル。お前が何に腹を立てているのか俺には分からない」
「あんた、髪の毛毟ったでしょ?」
ルチルは何を言っているんだ?毟ったのは神の毛ではないぞ。お前の毛なんだが。こいつ、やっぱり頭悪いな~。
「何のことか分からんな」
「私、あんたの事大嫌い」
おー。いうねぇ~。だが、大丈夫だ。よく、友達に言われる言葉だ。ルチル、さては、ツンデレだなー。可愛いねー。アホ毛が目立つ上に頭も悪いルチルさーん。
「俺はルチルのアホ毛以外大好きだよ」
「は、何言ってんのお前?脳みそでも沸いてんのか?」
「あー、口が悪いな~。そんなんだから男と間違いられるんだよ。取り敢えずさあ、ここ何処?」
「それもそうね。あなたと話をしているとイライラが止まらないから、さっさと切り上げておきたいし。この場所は冒険者ギルドの二階よ」
「二階?そんなのあったんだー。そういえば、ルチルはどんな武器使ったりするの?」
「あんた、何でそんなこと知りたいの?」
「ルチルは頭悪いな~。そんなの決まってるじゃない。これから一緒にダンジョンに挑むからじゃないか」
「何言ってるの?私、あなたと組まないことにしたんだけど」
え、まじ?
¥
「ルチルさん。ごめんなさい。俺が全て悪かったんだーー。見捨てないでくれ。一人じゃゴブリンにも勝てないんだよー。お願い致します。仲間になってほしいです」
俺はルチルに縋った。それはもう恥や外見を気にも留めずに。ギルドの一階で。ちなみに、これは計算してやっていることだ。なんだかんだで起きるまで部屋に居てくれたルチルだから許してくれるでしょ~。それに一階だから大勢に見られているし。
「あなたよっわー。あなたの方が雑魚じゃない。よく昨日は威張り散らすことが出来たわね。まあ、いいわ。条件付きで良いのなら仲間になってあげる」
え、条件つけるのかよー。はあ、まあいっか。聞いてあげるとするかなー。あー、ダリーな~。
「条件とは何でしょうか?出来るだけ緩いのをお願いします」
「分かっているわ。簡単よ、報酬が私八割であなた二割よ」
え、ま、まじかー。超ー嫌だ。
「嫌です。もう少し譲ってください」
「駄目よ。ただでさえ私はあなたのことが嫌いなんだから。仲間になってあげるだけでも感謝してよね」
「分かったよ。それでいい」
「なら、改めてよろしくね!」
「ああ。よろしく」
¥
「なあ、ルチル。お前のダンジョンに潜る目的は何だ?」
俺は、いつもと違い真面目に聞いた。
「そんな質問するってことは、あなたにも目的があるってこと?」
当然あるに決まってるだろ。何の目的もなく潜って生き残れるほどダンジョンは甘くないんだからな。
冒険者になるやつの夢なんて決まっている。
「ある。世界の神秘への挑戦。つまり冒険者なんて名乗るのだから、俺は冒険をしたいんだ。子供の頃読んだ本に今でも憧れてる」
「私は、神秘のダンジョンを踏破することよ」
冒険者の間で一番偉大なことは神秘のダンジョンの踏破とされている。まだ誰も神秘のダンジョンは踏破できていないのだ。
「それは簡単ではないぞ、ルチル。ゴブリンに負けるような俺と組んで大丈夫なのかお前?」
「いや、大丈夫じゃないわよ。けど、あなたと組まないにしろ誰か他の人と組むことになっていたと思うし」
「ありがとう。ルチル。お互い夢を叶えるため頑張ろう」
「ええ」
俺はバカだからゴブリンに負けてしまう程弱いけど、そのおかげで武器について学んだ。俺はまだまだ成長できる。
「ルチル改めて質問するけど、武器は何使う。探索で何よりも重要なのは武器だと思う。だから、こればかりは聞いておかなきゃいけない。ちなみに俺はファルシオンを使う」
「あなたゴリゴリの前衛なんだね。私は弓と回復魔法よ」
弓か・・・。良いのか悪いのか分からんな。
「そーか。教えてくれてありがとう。じゃあ、早速だけど明日一緒に一階層を潜ろう」
「そのつもりよ」
¥
試練のダンジョンは、全50階層になっている。当然のことだが、試練ってつくだけあって初心者の冒険者を試すような構造になっている。
知っているか?生物を殺すことって思っているより簡単なんだぜ。
殺すってことの後悔なんて基本無い。
可愛そうなんて同情する奴がいたら、そいつは狂人だ。ただ、そんなエゴを押し付ける輩が偶にいる。そいつらは、皆、この試練のダンジョンで冒険者を辞める。ある意味ダンジョン自体が冒険者に成れるか見極めている風だから試練のダンジョンなんて呼ばれている。また、初心者に優しい構造ってことも理由ではある。
そして、俺達は現在、日銭を稼ぐために試練のダンジョンに来ている。
「ダンジョンに入っているだけでワクワクするよなー!」
「そうだね」
こいつとの会話はそこまで長く続かないな~。モンスター出ないなかなー。
「暇だー。あーあ。暇」
「うるさいわね。ここは、ダンジョンの中なのよ大声出しているとモンスターが来るわよ」
ん?モンスターって、大声出したら来るんだ。へ~。
「暇だから大声出していい?」
「だから、ダメって言ってるでしょ?」
このパターンはフリかな?なら、その期待に応えないとな。俺は大きく息を吸い込んだ。丹田の辺りに目一杯力を入れて凄まじい声を出した。
「ゴーブーリーン、出てこーいーーーー!!!」
フッ、やり切ったぜ。取り敢えず褒めて貰おうかな。そう思って後ろを向いた。
「あんたねーーーー!いい加減にしろよーーーーー!!!!!!!」
どうやら、さっきのはフリではなくてマジだったみたいだ。ルチルをよく見ると、肩を震わせている。そして、眼には薄っすらと涙があった。これは謝らないと・・・。
「ルチルごめん。お前の気持ちをしっかりと考えていなかった」
俺は、昨日と違い真剣に謝った。だが・・・・。
「あなた本当に何なの?ダンジョンを舐めているの?試練のダンジョンだから安全だと思ってそんなことをしているの?私昨日あなたに言ったよね?そして、あなたも私に教えてくれたよね。あなたの冒険に対する思いってその程度だったんだ。失望したわ」
俺は、何も言えなかった。俺はいつもふざけている。どんな時もふざけている。ただ、夢については真剣でいると思っていた。だから、過酷な冒険者に成ろうとした。だけど、言われてみればその通りなのかもしれない。俺は、ダンジョンを舐めていた・・・。
「ルチルごめん」
「・・・・・・・・」
「ルチル、俺はダンジョンを舐めていた。心の中で俺はお前のことも舐めていた。ごめん」
「・・・・。私は昨日と今日で何回あなたのごめんを聞けばいいの?あなたは、いつまでも子供なのね。あなたと居るのが本当に嫌になったわ」
その通りだ。俺はもう冒険者なんだ。いい加減子供を辞めないとな。ルチルに言われるまで気づかないなんて本当に、世界を見下していたんだな俺は・・・。
「ルチル・・・。本当に、・・本当に、ごめんなさい」
「もう、いいわ。今日これ切りににしましょう。あなたとダンジョンに潜りたくないわ、わたし」
俺は、人間として最低なことをしていると、この日、初めて知った。
♦
タッ・タッ・タッ・タッ
音が近づいているのが聞こえる。
「あなたの所為でゴブリンが大量にこっちに向かっているわよ。ねえ、どんな気持ち?楽しい?」
「ルチル・・・」
「まあ、いいわ。今はゴブリンを倒すのを頑張りましょう」
そう言って、ルチルは後方に下がって弓に魔力を流し始めた。俺が自分で蒔いた種なのに俺はルチルに拾わせている。
「俺はクズだな」
取り敢えずごちゃごちゃ考えるのは辞める。やったことは如何にもならない。ゴブリンを倒すのが先だ。
俺はファルシオンを抜いてゴブリンに切りかかった。見た感じだとゴブリンの数はざっと20~30ちょっとだな。
「ルチルっ。ゴブリンは20~30匹だ。俺が前の15匹をやるからお前は奥の15匹をやってくれ」
「分かったわ」
俺はファルシオンに魔力を通す。ファルシオンは、俺の魔力に呼応するかの如く青い色を纏った。ルチルは俺の方を驚いたように見てきた。
「あなた、それ・・・」
俺はゴブリンを切る。すると、ファルシオンの刃はバターのように敵を切り裂くどころか刃から魔力の斬撃が放たれた。その魔力の斬撃で一度に7匹を魔石にした。
「何だこれ?」
「通刃よ。自覚無く使ったのね」
通刃?初めて聞く言葉だ。ルチルは知っているみたいだな。まあ、俺はさっさとゴブリンを倒すか。そう思っていたら・・・。
「ギーラ、どいて」
ん?何でだ。ルチルがどいて欲しいと言ったから、言う事を聞いておくことにした。俺がどいた瞬間耳元で矢が風を切る音が聞こえ、そのまま奥のゴブリンに着弾した。すると、シュパァーって音と共に生き残っていたゴブリンを纏めて魔石に変えた。その後すぐに、ルチルはスタスタ俺のところに来た。
「ギーラ、あなたとのダンジョン攻略はここまでよ。帰りましょう」
「ああ」
そして、俺は初めての仲間と別れた。
全部俺が悪い。
作品に対する批判コメントでもいいので下さい。