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悪の嚢  作者: 髪槍夜昼
第四圏 カイーナ
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第七十三話


「ははは! こんなのはどうだ!」


笑いながらカイーナは長い髪を靡かせる。


その一本一本が蠢き、無数の蛇へと変化した。


「“ファルチェ”」


それを見てネロは自身の影を鎌へ変える。


変幻自在に襲い掛かる蛇の大群は、鎌の一振りで全て切り捨てられた。


「今度はコレだ!」


切り落とされた髪を瞬時に再生しながらカイーナは右腕をネロへ向ける。


グチャグチャと音を立てて肘から先が形を変え、巨大な竜の首となった。


ガパッ、と竜の口が開く。


「燃え尽きろ!」


竜の口から激しい炎が放出された。


炎は鎌ごとネロの腕を灰に変え、ネロは慌てて距離を取った。


「何なんだ、コイツは…! 髪が蛇になったり、腕が竜になったり…!」


「…カイーナは魔素を操る能力を持つ」


ネロの言葉にウェルギリウスは苦い顔で呟く。


今まで肉体を再生させることにしか使っていなかった能力を、最大限に利用し始めた。


カイーナに形は無い。


魔素の集合体である肉体は、その気になればどんな形にも変えることが出来る。


「奴は形無き魔素そのもの。人間の形に拘らなくなった今、どんな攻撃が来るか想像できない」


「…どうやって戦う?」


「倒し方自体は前と変わらない。奴を構成する魔素自体を全て削り取るまでだ」


脳も心臓も弱点ではないカイーナを殺すには、それしかない。


その肉体の全てを粉々に消し去ることしか。


「…なら俺達がやることも変わらないって訳だ」


「そうだ…しかし」


ウェルギリウスは油断なくカイーナを睨みながら告げる。


「塔が破壊された。奴の再生速度も戻っているぞ…気を付けろ」


「了解だ!」








「痛快な気分だ! 戦いとは、これほど愉しいものだったのか!」


上機嫌に笑いながらカイーナは言う。


「人が戦いを好む気持ちが私にもようやく分かったぞ! なあ、ルビカンテ…」


そう言ってカイーナは視線を少し離れた場所へ向けた。


自身の協力者であるルビカンテ。


戦いを好んでいた彼の気持ちが分かったことを喜び、それを分かち合おうと視線を向ける。


しかし、そこに在ったのは獣に喰い殺されたルビカンテの亡骸だった。


「……………」


歓喜に染まっていたカイーナの表情が消える。


こちらの戦闘に集中している間に、ルビカンテは既に殺されていた。


共に過ごした時間は短いが、カイーナはルビカンテを傍に置く程度には気に入っていたのだ。


「…所詮お前もただの人間か、ルビカンテ」


酷くつまらなそうに、カイーナはそう吐き捨てた。


「誰一人として私には追い付けない。この世で私だけが特別なのだ」


言葉とは裏腹に、カイーナはどこか悲し気に言う。


ジュデッカも、ルビカンテも死んだ。


カイーナは傍で生きることを認めた相手であっても、結局は死んでしまう。


生ある者は必ず死に絶える。


人間であろうと、悪魔であろうと、死からは逃れられない。


例外はただ一人。


カイーナだけだ。


「最強故の孤独ってやつか?」


ぼんやりと佇むカイーナへ迫りながらネロは呟く。


「終わらせてやるよ。その孤独も、その命も…!」


ネロは両手を前に突き出した。


立体化した影が重ねた両手に纏わりつき、形を変える。


漆黒の砲身。


それは、ネロの背丈と同等の長さを持った巨大な大砲。


「“大砲カンノーネ”」


自身が傷付くことも考えず、ネロは至近距離から大砲を放った。


黒い砲弾がカイーナを消し飛ばし、上半身を肉片に変える。


「まだ終わりじゃないぞ!」


間髪入れずに次弾が放たれた。


残ったカイーナの肉体を更に破壊し、欠片すら残さず消し去る。


「は…ははは…! これほどダメージを負ったのは、何百年ぶりだろうか…!」


霧散した魔素が収束し、段々とカイーナの肉体を修復し始める。


この程度でカイーナは死なない。


だが、全くの無意味でも無い。


再生する度に少しずつカイーナも消耗している。


今までの攻防でカイーナも確かにダメージを受けていた。


「いいぞ、お前は最高だ。私と戦っていながら、まだ生きているなど」


「………」


「どうだ? お前さえ良ければ、私と共に生きないか? この私に出来る範囲なら、何でも願いを叶えてやるぞ?」


「ハッ、お断りだ。恋人ならもう間に合っているのでね」


一秒も迷うことなく、ネロはそう答えた。


その答えに対し、カイーナは本気で悲しそうに息を吐く。


「…残念だ。本当に」

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