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あ、章ごとのタイトルって意味なのな。長編久々に手えつけるから全然覚えてなかったわ。紛らわしい書き方!
ニコちゃんはロシア人で筋骨隆々の偉丈夫だ。隙間に挟まるなど想定外の事情に、困惑を隠しきれなかった。
料理中だったボルシチが鍋の中からいい匂いを立てている。
赤紫色のスープはもう食べごろで、そろそろ火からあげないとしないと風味が飛んで煮詰まってしまう。
鍋の蓋の取っ手なんか、気にするんじゃなかった、と今更後悔しても仕方ない。
無理矢理引き抜いたりすれば食器棚に飾られたローヤルコペンハーゲンのお皿やティーカップが落ちて粉々にならないとも限らない。
それでも背に腹は変えられないと、ダルマ落としやテーブルクロス引きの要領で、摩擦より慣性が優先される速度で足を引き抜いた。