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誰が四天王最弱ですって?  作者: もちもち物質
一章:彼は四天王最弱……だった
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5話

その日の夜は酷く冷えた。

「寒いわね……」

寝台の中、清潔ながら古ぼけた毛布に包まって、あづさは寒さに耐えていた。

この城は隙間風が多い。昼間はそれほど気にならないが、こうして夜になると随分冷えた。空腹気味の状態も相まって、体の芯まで冷えるようだった。しばらくここに滞在しなくてはならないというのならば、何か対策をしなければならないだろう。

あづさはより深く、毛布の中に潜り込んだ。

……持ってるカードで勝負するしかないのだ。無いものが無いことを嘆いていても仕方ない。

無いものが欲しいなら……自ら、獲りにいくしかないのだ。

「明日から、頑張らなきゃ」

今日はもう暗い。異世界の夜は街明かりもなく、本当に真っ暗なのだ。ランプに入れる油すら節約しなければならない状況で、夜に働くのはあまりにも効率が悪い。

あづさは思い切って、眠るべく固く目を閉じるのだった。


が。


「無理無理無理寒い寒い寒いっ!」

あまりの寒さに、眠ることができなかった。目を瞑っても、体を縮こまらせても、全く眠気が訪れなかったのである。

荒野を歩いていた時は邪魔にさえ思えた冬用のセーラー服が、今はとても頼もしい。欲を言うならば、コートとマフラーも欲しいほどの気温だったが。

「毛布に包まっててもこれ、って……全く!」

あづさは思い切って寝台から出る。毛布を体に巻き付けたまま、部屋の壁に近づいた。

「もう我慢できないわっ!」

とにかく、冷える原因は分かっている。外気温の低さと、隙間風の多さだ。なら、壁の隙間を埋めていけば、多少はましになるはずだ。


あづさはこの世界に来る直前、幸運にも学校へ行こうとしていたのだ。当然、通学鞄の中にはそれなりの道具が入っている。

ひとまず、あづさは……不要であろうプリント類を取り出した。

壁の隙間を、埋めるために。




再生紙のプリント類は程よく質が悪く、引き裂いて壁の隙間に詰めるには中々都合が良かった。

隙間が埋まっていくにつれ、心なしか寒さが和らいでいく。結果がすぐに出るのは悪くない。あづさは勢いづいて、どんどん隙間を埋めていく。

公開授業のお知らせも保健だよりも、図書だよりも近隣の大学の学園祭のお知らせも、不要と思われるものは全て裂いて隙間を埋めるのに使ってしまう。

……そうして不要なプリント類があづさの鞄からすっかり消えた頃、隙間風は随分マシになっていた。

これで眠れる程度にはなっただろう。あづさは寝台に潜り込み、毛布に包まる。

……すると。

ひたり、と。

冷たい何かがあづさの首筋に触れた。

「ひゃんっ!?……あ、あんたねえ……」

反射的に身を竦めて、それからそっと首筋に触れてみれば……案の定、スライムがそこに居た。

「来るんならもうちょっと分かるように来て!触るにしても、手とか、あんまり驚かなくていいところにして!いい!?」

そう叱ると、スライムはあづさの首筋から離れて、腕の中にすぽんと収まった。

「……もしかして、一緒に寝に来たの?」

あづさが問うと、スライムはふるん、と元気に揺れた。どうやらそうらしい。

「はあ、まあ、いいけど……そっか、あなたも寒いのね」

毛布を被り直して、中にスライムを招いてやれば、スライムは何とも嬉しそうにぴょこんぴょこんと跳ねる。

「はいはい、もう寝るから静かにね」

撫でてやると、スライムは大人しくなった。初めは真冬の水のように冷たかったスライムだったが、撫でている内にあづさの体温が移って、温くなってくる。

……今度から、いっそ湯煎でもして湯たんぽ代わりにしてやろうかしら。あづさはそんなことを考えてくすくす笑いつつ……もう1人の、この城の住人の事を思い出す。

「……ギルヴァスはどうやってこの寒い中で寝てるのかしら……」

寒さなんて堪えないのかもね、と思いつつ、もし暖かく過ごす方法があれば聞いてみよう、と決めた。

明日からやるべきことを考えている内に、次第に眠くなってくる。あづさはスライムを抱きつつ、眠りに就くのだった。




翌朝。あづさが玉座の間に向かうと、そこには既にギルヴァスが居た。

「おはよう。早いのね」

「ああ、君もな」

特に何をするでもなく玉座に座っていたらしいギルヴァスは、あづさの姿を認めるとすぐに立ち上がってやってきた。

そういえば昨夜の内に翌朝の集合場所を決めていなかった。それでギルヴァスはここで待っていることにしたのかもしれない。

……玉座の間には、絨毯がある他、壁には何かの紋章を織り込んだタペストリーのようなものが飾られていたり、壁に重厚感のある緞帳があったりして、他の部屋よりは圧倒的に隙間風が少ない。待っている分には多少、快適なのだろう。

「さて、朝食にするか。とは言っても、麦粥だが……」

「十分よ。あとは食材を採ってきてなんとかしましょ」

食堂へ向かい始めたギルヴァスの後について、あづさも元気に歩き出した。




味気ない麦粥でも、温かいものが胃に入ると元気が出た。

人間は体温を上げるためにエネルギーを使う。だがそのエネルギーは食品から摂取しなければならないわけで……しかし、この城にはまともな食料がない。今日新たに採取してきても、毎日満腹、という訳にはいかないかもしれない。なら、こうして温かいものを食べることで、体温を上げる分のエネルギーを節約すべきかもしれない。

そんな事を考えつつあづさは食事を終え、片付けも手早く終えて、先に白湯を飲んで食事を終えていたギルヴァスの元へ向かう。

「お待たせ。じゃあ、行きましょ」

「ああ。……と、その前にこれを」

一体何だ、とあづさが不思議に思っていると、唐突にばさり、と布が広がった。

マントかケープのようなそれはあづさの前で広がると、そっと、あづさの肩に掛けられる。

「これは……?」

「防寒具だ。今朝方、倉庫にあったのを探してきた。古臭いのは我慢してくれ」

濃い茶色のそれは、確かに可愛らしいデザインではない。布がしっかりしているためか重く、成人男性用なのか少々大きすぎ、華奢なあづさの肩には余る代物だ。

「これをしっかり、着ておいてくれ。風を切るから冷えるぞ。さあ、行こう」

ギルヴァスに促されて、あづさはマントの前で留金を掛けた。古びた金属細工の留金は中々綺麗で、あづさは少し嬉しくなる。

「ところで、移動って徒歩、じゃないのよね?確認してなかったけれど……」

城の出口に向かいながら、あづさは尋ねる。『風を切る』というからには、やはり乗り物か何かがあるのだろうか。

「ん?……ああ、あの時君はもう、意識を失っていたか。ええと……とりあえず、腰を抜かさないようにしてくれ」

ギルヴァスが苦笑するのを見て、あづさは首を傾げた。




城の外は、林だった。

とはいっても、木々は枯れかけ、下草もまばらだ。きっとギルヴァスがこの城に居なかったなら、この林も単なる荒野になっていたのだろう。

「少し待っていてくれ。すぐ終わる」

ギルヴァスはあづさを伴って少し歩いて、木々の無い、開けた場所に出る。そしてそこであづさを下がらせて、1人、空を仰いだかと思うと……。

「……嘘」

あづさは目の前で起きた『魔法』に、言葉を失った。

天を仰いでぶるり、と震えたギルヴァスの体はみるみる固い鱗に覆われ、その体躯も膨れ上がっていく。頑健な手足に長い尾まで加わり、更に、翼までもが現れる。

そしてギルヴァスは、吠えた。

他のどんな生き物の声とも違う咆哮が、木々と下草とあづさを揺らす。

その咆哮が止んだ時、ギルヴァスは琥珀色の瞳でじっとあづさを見つめ……その長い首を動かして、そっとあづさに寄り添った。

「あなた……ドラゴンだったの!?」

黒い竜は、そうだ、とでも言うかのように小さく吠えた。




「まさか、ドラゴンに乗って飛ぶなんてね……」

竜になったギルヴァスの背に乗って、あづさは飛んでいた。

「風を切る、っていうのは本当だったわね!」

何せ、速い。比較的低空を滑空していくのだが、本当に速い。あづさ達のすぐ下を、木々が後方へ流れていく。疾走感は抜群だ。この手の爽快感を好む人間にとって、ドラゴンは最上の乗り物だろう。

「悪くないわ!気持ちいい!」

そしてあづさも、そういった人間の1人であった。ドラゴンの首に抱きつくようにして何とか乗っている状態だったが、温かな日差しの下、寒いほどに風を切って凄まじい速度で飛んでいくのはとても楽しい。

手の届く位置の、黒く固い鱗を一枚撫でる。

竜の鱗の1枚1枚は固く鋭く、まるで刃のようですらあった。だが、ただこうして触る分には、すべすべとして何とも触り心地がいい。まるでよく磨かれた木材を触っているような感触だった。

鱗の下に肉があり、血液が流れているのが分かる。鱗も温もって、風を切っている割にはそれほど寒さが堪えない。

……かくしてあづさは、この楽しい空の旅行をしばし楽しんだのだった。




やがて、眼下に見える大地の色合いが、茶からくすんだ緑、そして若々しい草色へと変わった頃。竜は緩やかに地上へと降り立った。

あづさは竜の首から地面に滑り降りて、少し離れる。するとギルヴァスは体を丸めるようにして唸り始めたかと思うとみるみる縮んでいき、やがて人間に近しい姿へと戻った。

「すごいわ、本当にドラゴンになったり人間っぽくなったり……魔法ってあるのね」

「ああ。……縮んでいた方が魔力の消費が少ないのでなあ、いつもは縮んでいるんだが。一応、本来は黒竜の姿をしている」

どうやら、ギルヴァスの素の姿はドラゴンの方らしい。人型の時は省エネモードなのね、とあづさは覚えた。

「速度は多少、落としたんだが……大丈夫だったか?」

「ええ。とっても気持ちよかった!最高ね!帰りはもっと飛ばしてもいいわよ!」

「それは頼もしいな。さて。じゃあ、行こうか」

あづさは高揚した気分のままギルヴァスに続いて森林地帯へと入っていくのだった。




「……ヘルルートって何よ、って、思ってはいたのよ」

「ああ、姿形の説明はしていなかったか」

「そうね。『地獄の根っこ』っていうぐらいだからさぞかしとんでもない奴だと思ってたわ」

あづさは足元を見て……何とも言えない顔をした。

「まさか、動く大根と人参だとは、思わなかったわね」


あづさの足元をウロチョロと動くのは、まるまると太った大根や人参が枝分かれして短い手足を生じたような、そんな姿をしている魔物であった。

大きさはスライムとさして変わらない。あづさの両手に乗せられるくらいである。到底、『地獄の』根っこではない。

「……本来はもう少し、大きいんだがなあ……魔力が足りてないんだろうな」

「栄養不足なの?」

「まあ、そんなところだ」

人参や大根にしてはよく太って美味しそうに見えるのだが、そもそもこれは野菜ではない。一応は知能を持った動物なのである。

「他の四天王のところでは、四天王の下に就く中級上級の魔物が居る。風のところの例のハーピィのようにな。彼らのような存在があれば大地に魔力が行き渡って、こういう魔物も大きく育てるんだろうが……」

「ああ、そういうこと」

この魔物の姿も、原因は貧乏故、ということらしい。世知辛い。

「俺がここに住んでいてもいいんだが、そうすると今度は荒れ地が広がる一方だろうし……そうなると今度は、鉱山が危ない」

「にっちもさっちも、なのね」

あづさはヘルルートと呼ばれた魔物……どう見ても丸っこい大根と人参にしか見えないそれらを摘み上げた。彼らは短い手足をばたばたと動かして抵抗していたが、少しすると諦めたようにくったりと大人しくなってしまった。

……強そうには、見えない。

成程。兵力には、なりそうにない。




それからあづさはギルヴァスに連れられて、数種類の魔物を見た。

「これがコットンボールだ」

「綿ね」

ふわふわと宙を舞うだけの、いかにも柔らかそうな綿毛の塊も、どうやら魔物であるらしい。

一応は意思があるぞ、という抗議なのか、コットンボール達はふわふわとあづさの元に集まってきた。

あづさはふわふわとくすぐられたが、そこまでだ。彼らにはくすぐる以上の能力は無いらしい。


「そっちがスピアビー。一応、毒がある。それから普通の蜂のように、刺したら自分も死んでしまう、というようなことはない」

「大きさが随分頼りないけどね」

ただの蜂のように見えるそれも、一応は魔物であるらしい。

あづさの近くに寄ってきたのでそっと避けると、スピアビーは落ち込んだようにふらふらと帰っていった。


「アーマーワームは見てのとおりだ。鎧を纏っている。丸まってしまえば、大抵の攻撃は通らないぞ。この姿の時の俺が噛んだら歯が欠けるくらいには固い」

「大きい魔物だったら噛まなくても丸呑みできるんじゃない?」

ダンゴムシのような虫は、あづさの手の上にすっぽりと収まってしまっている。大きさはさしずめ、小ぶりなミカン程度だろうか。

アーマーワームはあづさの手の上で全く開こうとしない。警戒心が強いらしい。

「……大丈夫よ。食べないわよ」

あづさがそう言って撫でてやると、やがて、躊躇いがちにアーマーワームは体を開き……また閉じた。


「それからこいつがアイアンスパイダー。鉄のように強い糸を吐く。……が、最近は普通の糸しか吐かないなあ」

「こっちも栄養不足なんじゃないの!?」

「あと、臆病だ」

「それは見れば分かるわ……」

あづさの視界の端で、手のひらサイズの蜘蛛がカサカサと消えていく。あづさに驚いたらしい。

よくよく見れば、木の影から何匹もの蜘蛛があづさの方を見ている。

……揃いも揃って臆病らしい。


「……それから、こいつだ」

「木?」

「ああ。トレントだ」

あづさはギルヴァスが手を突いた木を見上げる。ひょろり、と細い木は、ただの木に見える。

「ただ、見ての通り、動かん。面倒なんだそうだ」

「……こいつ魔物やる気あんの?」

「やる気のある木……やる木は無いな。ははは」

「やかましいわよ」




あづさは頭を抱えた。

まさか、魔物達がここまで弱いとは。




森林地帯の一角、ただの花が咲き、穏やかな木漏れ日の落ちる小さな広場の切り株に座って、あづさは話し始める。

「まず、確認だけど。今回、鳥を焼き鳥にしてやるために必要な事は、この森林地区だけで鳥共を迎撃できるようにすることね」


3日後、例のハーピィがもう一度、城にやってくる。

そしてそこでハーピィを捕らえてしまう……というのは、得策ではない。

もしハーピィを捕らえてしまったなら、次に出てくるのはハーピィ率いる風鳥隊ではなく、風の四天王本人だろう。

……この戦いは、できれば、ハーピィ本人を狙うのではなく……『風鳥隊』を狙いたい。そうすれば被害者側の責任者はハーピィだ。彼と話をつければ講和もできる。無論、その後で風の四天王が出てくる可能性は高い。だが、直接出てこられるよりはマシだろう。

さて。そうなると、ギルヴァスとあづさが城で戦う訳にはいかない。何故なら、そんな状況でハーピィが戦うことを選ぶわけがないのだ。

ハーピィがこの森林地帯を人質にとってギルヴァスを脅しているのは、ギルヴァスを直接どうこうできないと分かっているからだ。ハーピィや風鳥隊の方から攻めてこさせるには、『勝てそうな相手』が相手でなければならない。


以上を踏まえて、ハーピィ率いる『風鳥隊』を、この森林地区で、森林地区の戦力だけで撃退できるのが望ましい、のだが……。

「まあ、それができれば、それがいいな。できれば……だが」

だが、ギルヴァスの言う通り……この森林地帯の魔物達は、弱すぎる。

「まあいいわ。考えていきましょう。いい案が出るかもしれないし」

それでも諦めてしまう、という選択肢は、あづさには無いのだ。

考えねばならない。この地区をこの地区の力で防衛する手段を。




「最初はね、クロスボウを考えてたのよ」

「くろすぼう?なんだそれは」

「力がない人でも1発だけは確実に撃てる、超強力な矢だと思ってくれればいいわ。片手で撃てる弓、とも言えるかしら」

「弓を片手で?それはすごいな!」

ギルヴァスが感嘆のため息を吐く一方、あづさは憂鬱のため息を吐いた。

「けど、この子達、どう考えてもまともに弓矢なんて扱えないでしょ」

「……そう、だなあ……手が短い」

「ね?道具を扱うのに向いてないのよ、この子達」

手近に居たヘルルートを一匹摘み上げて膝に乗せ、手慰みに撫でつつ、あづさは論じる。

「毒も考えたんだけどね。ここの環境を壊さなくて、虫の子達をやっちゃわない毒、それも、今手に入れられそうな奴で……かつ、近づいて注射したり飲ませたりする必要のない奴、って、つまり吸うか浴びるかだけで効く奴だけど。そんなの、そうそう無いじゃない?それとも、ある?」

「いや、俺には思いつかないな……こいつらも植物だ、毒を持つものは分かるだろうが、そんな毒は知らんと言っている」

そう、とあづさは表情を曇らせた。もしかしたら、異世界特有の素晴らしい毒でもあったりするのかと思ったが、そんなこともないらしい。

「虫の子達を全員ここから避難させられるんだったら、煙で燻したりガス流したり大麻焚いたりもできるんだけど……広範囲に毒なんて流しちゃったら制御できないし。濃度ミスって色々殺しちゃいました、っていうんじゃシャレにならないし」

毒殺は、守るべきものが多い戦いには向かない。特定の誰かだけを殺したい時か、はたまた、全てを顧みずその地域一体の生命を根こそぎ殺す時には有効なのだが。




「アイアンスパイダーの糸で鳥を捕まえておいて、そこをスピアビーが刺す、っていうのも考えたんだけど……あの子達には荷が重すぎるわね……アーマーワームが引き付けとく、っていうのも難しそうだし……うーん、どうしようかしら」

あづさは悩む。

……力のない者が力のある者を倒そうとした例は、あづさの世界の歴史にもたくさんある。

例えば、銃。腕力に関わらず、一定の殺傷力を保証される。

さらに例えば、毒。毒殺は昔から、力なき者の攻撃手段だった。

だが……それらが使えない、となると、どうにも、手の打ちようが無い。


「ねえ。他にここに魔物は居ないの?或いは、3日以内にここに連れてこられて、ここに馴染めそうな魔物とか……」

「他の魔物も似たり寄ったりの強さだ。それに、この地域の性質が合わないからこそ、他所に住んでいる訳で……」

ギルヴァスの答えに、あづさはがっかりする。

持っているカードで勝負するしかない、とはいえ、カードが何とも弱すぎる。

これは、どうしたものか。




その時だった。

「……ねえ、何か、聞こえない?」

あづさの耳には、遠く、妙な音が聞こえてきていた。

ぴゃー、と。何かの鳴き声めいた音が。

「……ああ、忘れていた」

ギルヴァスは頭痛を堪えるような顔をして、言った。

「マンドラゴラが居た」


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