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1ー5 盤上遊戯(カルデリィウスゲーム)

人であった時の大神カズヤは死んだのだ。


『さてカズヤよ、本題じゃ。』

『命ある者にはそれぞれ使命がある、与えられた命の役割じゃ』

少女(アンリ・マンユ)はこちらを向いて語りかけてくる。



「与える側は神である貴女か?」

感情が状況に、追いつかないまま、理解してしまう。

知力が高いせいで、感情と思考が、まるで別人格のようだ。



『話が早くて助かるが、少し可愛げがないの、まぁよい。』

少しため息をこぼしつつ、つまらなそうに少女(アンリ・マンユ)は答える。


『妾達は、ある盤上遊戯(ボードゲーム)をしておる。』

そう言うと、少女(アンリ・マンユ)は指をたて、宙に円弧を描いた。


描いた場所から、眩しい光と同時に、見たことのない風景が、変わるがわる映し出される。


西洋のような町並み、美しい湖畔、どこまでも続く壮大な森、深く暗い渓谷。


少女(アンリ・マンユ)が口をひらく。

『盤の名はカルデリィウス、ヌシのいた地球と同等か、それ以上の知的生命体のいる星じゃ、

ただし、地球のように切り離された世界でなく、接続された世界になるがの。』




(切り離された?接続?)



『ようはカルデリィウスには神達が干渉しておるということ。』

こちらの心中を読みとってか、少女(アンリ・マンユ)が続け様に答えた。



「……では切り離された、接続されていない地球に神はいないと?」


『おらぬ、というより(・・)は存在できぬ。現地球は魔素(マナ)が薄すぎるゆえにな。』


(これは衝撃事実だ…

理由はどうであれ、地球に神がいない。しかし、今の会話から考えると昔は存在していた?)


まるで感情がおかしい。

カズヤの感情までも、思考に影響されてか冷静を即座に取り戻そうとする。




『まぁそれはどうでもよい。今は遊戯(ゲーム)の話じゃ』


『カルデリィウスは400年ほど停滞しておる、このままでは遊戯が成り立たん、ゆえに何かしらの干渉が必要なのじゃ』

『妾達がへたに直接干渉すれば世界がどうなるかわからん、他の神は異界より【召喚】という手を使って干渉しておるようじゃが…』


『妾にはそれが出来ぬ。』

少女(アンリ・マンユ)は指の爪先を少しかじりながら悔しそうな表情をこぼす。



『そこでカズヤ、ヌシの出番じゃ』

『妾は幸運(・・)にも拾ったヌシで世界(カルデリィウス)に影響を与えるのじゃ』

『この場からなら【召喚】を使えぬ妾でも、ヌシをカルデリィウスに移せる』


(移せる?)

「ちょっと待って!戻すことができるなら地球に、元いた場所へ返してほしい!」



『なぜ?』

カズヤの言葉に、アンリ・マンユが目を丸くして答えた。

まるで理解できない、そんな表情だ。



「なぜって…元々地球から来たんだ、当たり前じゃないか!」

その表情に動揺しながらも、カズヤは返す。



『わからぬ。ヌシは何を言ってる?ヌシの身体は妾の物じゃ』



「わからないってそんな…勝手すぎる。僕は望んできたわけじゃないし、ましてや貴女に頼んだわけでもない!」



『しかし、ヌシは望んだではないか?』



『器を変えた時、変化の最中にヌシは強い思いを持って生を

望んだはず、でなければヌシの身体は今ごろ肉塊と化しておる。』

『カズヤ、ヌシは与えられることを選んだではないか。』


『過程はどうであれ、ヌシは受けとったのじゃ、命を。』


「そんな…」

(まるで悪徳商法だ……)

まるで話にならない少女(アンリ・マンユ)にカズヤは顔を歪まし、肩をおとす。



『悪意なる妾らしかろう?少しばかり高くなった知力で理解せよ、妾という存在をな。』

まるで思考を読んだかの少女の言葉にカズヤは驚いた。

そして先ほどから感じた疑問をぶつける。


「アンリ・マンユ……様、貴女は心を、思考が読めるのですか?」


言葉を選びながら質問するカズヤに対し少女(アンリ・マンユ)は軽く答える。


『まさか、読むなど。凄まじく高い知力を持つ妾達からすれば個たる者達の思考など読まずとも解る。

まぁ、そういう(スキル)もあるにはあるが、妾達、神のそれには遠く及ばんが。』



『だからこその盤上遊戯(カルデリィウスゲーム)なのじゃ、

星の数程ある命で紡がれる運命、それは妾達、神にも予測がつかん』

目を輝かせながらそう語ると、少女(アンリ・マンユ)はこちらを向きなおした。



『今のつまらん世界(カルデリィウス)の停滞を解くには、ヌシに役割を果たしてもらう必要がある』



『その為の力を授けようではないか』



『どうじゃ、今の言葉。何とも人が敬い、尊敬し、信仰する存在、まさに神らしい言葉であろう?』

満足そうな笑みを浮かべながら少女(アンリ・マンユ)はそう言った。


『スキル発動』

言葉と同時に少女(アンリ・マンユ)はこちらに手のひらを向けると手から極彩色の光が溢れだす、そしてカズヤの身体を包みこんでいく。


「な、なんだ!」

驚くカズヤの頭の中に声が響き渡る。



〈【切断 万能】が贈与されました〉

〈【王法エル・マギナ】が贈与されました〉

〈【全ステータス増加xxx倍】が贈与されました〉

〈【アルテマ】が贈与されました〉

〈【経験値取得xxx倍】が贈与されました〉

〈【限界突破(オーバーブースト)】が贈与されました〉

〈【ティタノマキア】が贈与されました〉

〈【完全なる静寂】が贈与されました〉

〈【アーキカルマ】が贈与されました〉

〈【与えられし者】を取得しました〉



「!!?」

カズヤの身体に凄まじい力が駆け巡る。

それは純粋に「力」だった。


〈【切断 万能】は【完全切断】へ下位変換されました〉

〈【王法エル・マギナ】は【マギナ】へ下位変換されました〉

〈【全ステータス増加30倍】へ下位変換されました〉

〈【アルテマ】取得に失敗しました〉

〈【経験値取得30倍】に下位変換されました〉

〈【限界突破(オーバーブースト)】を取得しました〉

〈【ティタノマキア】取得に失敗しました〉

〈【完全なる静寂】取得に失敗しました〉

〈【アーキカルマ】を取得しました〉




『ほとんどが下位変換されておるか、取得失敗ではないか、

神人族(ゴッズヒューマン)と言えど、低Lvではこれが限界か』

少女(アンリ・マンユ)は向けた手のひらを下に下ろし、つまらなそうに呟く。


『しかし、能力値(ステータス)的にはあの世界(カルデリィウス)では敵なし、干渉をあたえるには十分。』



『最後の仕上げじゃ』

すると、少女(アンリ・マンユ)の瞳が赤黒く変わり、カズヤに向けて最後のスキルが発動された。



〈神格スキル【死亡遊戯(セブン・ス・デス)】が発動されました〉

対象は7回目の日の出とともにLvに応じた魔素を放出し存在を消滅します。


(存在を消滅だと…結局は殺すんじゃないか!)

怒りにも憎しみにも似た何かがカズヤの中に渦巻いた。


(殺されるくらいなら――)

「うああぁあー!!」

怒声とともに、カズヤは少女(アンリ・マンユ)に手をのばす。



『【ゲート】発動、カルデリィウス』

その声とともに、穴が足元に開かれ、カズヤは吸い込まれた。



『ヌシの命は最後に世界(カルデリィウス)に爆発的に干渉を与える。』


『さぁ、己が身を、命を燃やし尽くしておくれ』


『カズヤ』

空しく宙をかいたカズヤの手の奥で少女(アンリ・マンユ)は優しく名前を呼んだ。

それはまさしく出逢ってから初めて向けるであろう深い愛情のように感じる。

たとえそうでなくとも、カズヤにはそう感じたのだ。


「必ず……必ず還ってみせる!僕は必ず地球に―――」


虚しく響いた声とともにカズヤは少女(アンリ・マンユ)視界から、深い闇に飲み込まれ、消えていった。





この日、「大神カズヤ」という存在は地球から消え、



異世界(カルデリィウス)召喚(とば)されたのだ。






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