第2話
「ふぅ...やっと着いた。」
少女はそう言って家のドアを開けた。花畑を出てからまた更に歩いたためレアの体力は限界に近かった。そのうえスノウを抱えながらの徒歩は少女にとって厳しかった。
部屋のドアを閉めたレアは暖炉に向かって小さく呟いた。
゛スモールファイア ゛
そう呟いたレアの横に小さな火の玉が現れ暖炉に向かって火をつけた。少女はスノウを暖炉の傍のソファに寝かせ寝室のタンスからタオルを持ってきた。少女がスノウの体を拭き終え別のタオルでスノウを包んだ。
「疲れた...」
少女はビショビショのハット帽とローブを脱ぎ暖炉の近くの紐に吊るした。スノウを見るとスヤスヤと寝ていた。
「育てるとは言ったもののどう育てればいいんだろ...」
少女の頭はその考えでいっぱいだった。数百年生きてきて少女が今まで育てたのは弟子1人のみなのだ。そんな少女が赤子を育てる...いやそもそも魔法使いの中で赤子を育てたなんて話は聞いたことがない。レアは頭を抱えた。
「あっ!...いやでもこれは...」
レアは何か閃いたが直ぐに暗くなったあとまた悩みだした。
「んー...どうしよ相談...相談はダメだよね...あっ!師匠からの頼みという事にしとけばいいんだ!そうだ!私は決して頼ってなんてない!そうと決まれば...」
レアは部屋の机に置いてある水晶玉の前に立ち手をかざし呟いた。
―ドロシーを呼んで―
水晶玉はその一言でさっきまでの透明な色から一気に黒色に変わりそこに1人の少女を映した。
「はいはい!師匠どうしました?」
そこに映っていたのは金色の髪を二つ結びにしレアより少し大人びていた少女が映っていた。
「実は...あかちゃん拾ったんだけど。」
「...はい?」
ドロシーという少女は何を言ってるのか分からないという顔をした。
「いやだからあかちゃんを拾ったんだけど...」
「師匠...疲れてるんですか?だからさっき送って行くって言ったのに。」
「違うのー!さっき帰っている途中にあかちゃんを拾ったの!」
レアは白骨化死体の事、その横にスノウがいた事などを話さず帰りの廃屋で拾ったと伝えた。
「そういう事ですね!分かりました。でもあかちゃん...えとスノウくんのお母さんはどこに行ったんでしょう?やっぱりすてられちゃったのかな...?」
その言葉を聞いたレアの顔はとても暗かった。
「師匠...?」
「どこに行ったか分からないけど私が育てると決めたの!ただ育て方がその...分からなくて...」
「へぇ~じゃあ私が今からそちらに行きますね!」
そう言いながらドロシーの顔は何故かニヤニヤしていた。レアはすぐにしまったと気づいた。
「ち、違うわよ!頼っているんじゃなくて頼んでいるの!」
「はいはい!分かりましたよー!とりあえず今から行きますね!」
そう言って水晶玉からドロシーの顔が消えさっきまでの透明な水晶玉に戻った。しかしレアの顔は絶望に変わっていた。レアの頭の中は師匠としての威厳が無くなった...その事でいっぱいだった。