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勿忘草の魔女  作者: いのり
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第1話

 光の方へ進んでいくと微かに声が聞こえた。いや声と言うよりも鳴き声に近かった。



「誰かいるの...?」



 レアは腰の革ベルトからホルダーに刺さっていた青い杖を取り出し警戒しながらゆっくりと光の方へ進む。吹雪の中、前方の照らされている部分がだんだんハッキリ見えたレアは歩みを止め写っているものに釘付けになった。そこには辺り一面に咲いた勿忘草の花畑が映っていたのだ。この吹雪の中勿忘草の花畑だけは吹雪の影響を受けず逞しく咲いている。もし彼女以外の人間がこの光景を見たらきっと幻想的に見えるだろう。しかしレアは何故ここだけ吹雪の影響を受けていないのかと思いつつも花畑を見たレアの心は懐かしさと悲しみ...2つの感情が渦巻いていたのだ。



「おぎゃあ、おぎゃあ」



 花畑の中央から聞こえる鳴き声に我に返ったレアは声のする方へ進んだ。声の正体が近くなるにつれ悪い予感が頭をよぎった。心臓はドクッ...ドクッと速さを増す。



「まさかあかちゃんじゃないよね?」




 しかし悪い予感というものは当たりやすい。着いた先には布に包まれた赤子が泣きながらモゾモゾ動いていた。



「嘘でしょ...?どうしてこんな所にあかちゃんがいるの...?」



 私の頭の中は???でいっぱいだ。いや誰だってそうなるだろう。それに...

 私は赤ちゃんの横にある白骨化死体を見た。こんな所にあかちゃんと白骨化死体。どう考えてもありえない。見たところあかちゃんはまだ生まれてまもない。その赤ちゃんが何故こんな所にいるの?

 どうやってここまで来た?

 母親はどこにいるの?

 横にある白骨化死体は?

 私の頭は既にパンク寸前だった。

 ただ1つ言えるのはこの赤ちゃんを放っておいたらダメだという事だ。何故と聞かれたら答えられないけど...でもとにかく放っておいたらダメだと思った私は赤ちゃんを抱えると布から1枚の紙がヒラヒラと落ちたのに気づいた。



「何かしら。」




 紙を拾い中を見た私は瞳から涙を流した。そこに書いてあったのはあかちゃんの事、白骨化死体の事、そして自分がずっと探し求めていた事が全て書かれていたからだ。私は大声で泣いた。どれくらい泣いたか覚えてないけどとにかく涙が枯れるまで泣いたと思う。しかし抱き抱えていた赤ちゃんは私を慰めるかのようにとても小さな手で頬を撫でた。あぁ...この子はなんて優しいんだろう。私は赤ちゃんを優しく抱きしめた。何百年ぶりかに泣いた後私は白骨化死体を土に埋めその上に勿忘草を添えた。



 私は赤ちゃんを抱き合えこう言った。




「あなたの名前は今日からスノウよ。」




 レアはスノウを育てるという決意と共にスノウと一緒に花畑から消えた。

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