始まり
「こうも長く雪が降ってると気が滅入るな。」
青いとんがり帽子を被った少女がぼそっと呟いた。それもそのはず今はもう桜が咲く暖かい時期なのにも関わらず今年の雪は例年にも増して溶けるどころか積もる一方なのだから。
ブツブツと文句を言いつつ少女は歩く。
「よりによって私の作ったサンダーバードが故障で飛べなくなるとは今日は運が悪いな...」
サンダーバード...彼女が作った特別な箒だ。柄には千年樹の枝を使用し毛の部分はわざわざ雷鳥の巣から取ってきた雷鳥の羽を使用したお手製のものだった。
そんな魔法の箒がよりによっていつもより酷い雪が吹雪く中故障してしまったのだ。魔法使い達の間で箒は移動手段の1つなため歩いて移動する魔法使い等今はあまり見かけない。彼女からしてみれば家から箒で20分の所を2時間も歩いているのだ。しかも迷ってしまったというおまけ付きだ。気が滅入るのも無理はない。
「新しい弟子が欲しい...」
彼女の頭の中は楽をしたいという事だけだった。弟子がいればこんなふうに吹雪の中歩かなくて済むのだ。しかし彼女には最近自分の元から離れた弟子がいる。今日はその弟子の様子を見に行っていたのだが帰りにこんなに酷い吹雪になると思わなかったため弟子には`送って行きましょうか?`と言われたが弟子に送られるほど私のプライドは低くない。むしろ弟子には自分の事は自分で何とかしろと何度も口酸っぱく言ってきた為送ってほしいなんて言えるわけない。しかしそんな小さいプライドのせいで結局歩かなければならず自分を恨んだ。
「...ん?あそこだけ妙に明るい。」
彼女が歩いていると吹雪の中、空から指す光を見つけた。まるで神が道を示しているかのようにわかりやすくそこだけ照らされていた。
「...神様は信じないけど道に迷っちゃったし...しょうがないあそこ目指すか。」
彼女はそう言い光の方へ向かった。
それが彼女...レアの人生を変えることとも知らずに...