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簡単に言ってしまうと、いきなりのピンチだった。
盗人と間違えられてしまい、自警団に襲われたということだった。
自警団はNPC。盗人は別のプレイヤーだ。
自警団は町を防衛するという思考回路を持っているため、盗人や暴力を許さない。盗人となぜ間違えられたのかはわからない。バグではないかとも思うのだが、狙われてしまったものは仕方ない。逃げながら戦うか、戦いながら死ぬか。
どうすればコートマシンは動いていくれるのかはなんとなくわかる。脳に染みついたシミのように操作方法はわかった。
武器は銃が二丁。何の変哲もないシンプルな形をした銃だ。名前はウッドガン。なんてシンプルな名前だろうか。
撃ってみる。
「くらえ」
バン、バン。弾は直線上に飛翔し、自警団のロボットに当たった。そして足止め程度の効果くらいは発揮してくれたらしく、一機が遅れた。
自警団は四機。四体一だ。
追いつかれないように撃ちながら逃げる。地形は森だった。足場が悪いせいでうまく逃げることができないのだが、ジャンプを試みてみる。
そして、飛びながらもう一機に銃撃を浴びせた。これで二機が遅れた。
着陸してコートマシンに名前をつけなくちゃなとふと閃いたが、今はそんなことを考えている場合ではない。
どうにかして、勝たなければならない。
ここを切り抜ければならない。
コートマシンの足がひっかかる。蔦だった。
派手にすっころんでしまう。せっかく遠ざけた間合いがその蔦のせいで台無しになった。四体一。
囲まれた。
「いきなりやられてなるものかって」
叫んでからもう一度跳んでみる。飛べればいいのにと思ったが、今の装備ではこれが限界なのだろう。すぐに墜落して、地上からお見舞いされたのは剣撃の嵐だった。いじめのように、ぼこぼこにされた。
「ちょっと、やめて、やめてってば」
最悪の気分だった。
悲しみのせいで世界は閉鎖された闇のようだった。絶望のせいでどこに逃げても逃げ場はないのだと思い知らされるかのようだった。実際にはまだ生きていたが、たしかに逃げ場はなかった。たこなぐりだった。
そして今にもコートマシンが破壊されようかというその時、光が見えた。
その光は赤色と青色をしていて、自警団に降り注ぐ。炎だった。そして氷だった。
『大丈夫かな?』
通信が入った。
『私はクロスディアという者だが、君と同様のプレイヤーだ。助けがほしいのではないかと思ったが、どうだろう』
「助けてくれるなら何でもいい」
『いいだろう。わが魔法、特と味わえ』
「私も巻き込まれてるんだけど」
『気にするな』
「気にする! おおいに!」
炎と氷が降り注ぐ。自警団たちはそれを直撃したらしく、それぞれが損傷した。
クロスディアと名乗るもののおかげで難を逃れたのは事実だった。
そして彼女は提案する。
「私と、チームを組まないか」