表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

美少年のマッサージ

作者: HAL model

日常の中にほんの少しのファンタジー

そんなバランスが好きです。

現代を舞台にしたおとぎ話です。



ついについについに買ってしまった。


人の手を追求した大型のもみ玉

自動コース15

電動リクライニング

もちろんフットレスト付き

ロボット工学の技術が注ぎ込まれた最新シリーズ

人間の暖かい手で揉まれているような究極の心地よさ


236,800円(税込)タケエ!!!


でも買っちゃったわよ買っちゃったわよ20回払い!大丈夫!大丈夫!金利は当社負担で!って言ってたし!


これでずっと悩まされてきた肩こりと首からくる頭痛を解消できるんだから 安いものよ。

誰も揉んでくれないし。


配送は明日着な筈なのに何故か今日の朝には届いていた。動画では室内に設置するところまで業者さんがやってくれるって言ってたのに玄関前に置きっ放し。


なんだよもう。28歳一人暮らしのデザイナー。

か弱い女の子に、無理だって!

いや見た目 か弱くはないけどさ。


何キロあるのこれ⋯⋯ デブだからってチカラがあると思うなよ!いやデブじゃないけどさ。



でもやり遂げました、やり遂げたわワタクシ!

リビングの真ん中、モニターの真ん前にセッティング完了!


さぁ 座って ⋯⋯ あらキツイわね⋯⋯

無理矢理にても ぎゅっとお尻をねじ込んで⋯⋯

入らないない。お肉が邪魔してる


あーーー

こ、呼吸よ、呼吸!こんな時はちゃんと呼吸してリラックス、チカラ抜かないとね、歯を食いしばって身体固くしてたら入るものも入らないわよ。

ささ呼吸を、ヒッヒッ・フー よ ヒッヒッ・フー。



ヒッヒッ・フー


このままお尻を尻を⋯⋯ 尻をしりしりしり

なんで私連呼してるんだーヒッヒッ・フーよ!!

あれ?これ産まれるヤツだっけ?


入った!



思わず叫んだ

「I got my Siri!!!」

ワタシなぜ英語!!



お尻の勢いでそのまま 身体全体がチェアーにガッチリと合体した。物凄いホールド感。

気功を使って園児の服を着た気功師より

ピッチリとハマってる!

「キュウ」

なんかどこかで変な音がした。



どうしよう、座れたけど⋯⋯


う、動けない⋯⋯


完全にハマった⋯⋯ 。

身体を包み込むようなデザインだから

両腕も 腰回りも 当然お尻も がっちりハマって身動き取れない。


えーーー!!!!これヤバくなーい?

誰も助けに来ないよ!

ケータイにだって手が伸びないよ!


このまま

マッサージチェアにハマったまま死ぬのは嫌。

そんな孤独死おもしろすぎ。


と、とりあえず座れたし スイッチスイッチ。

左手のところにスイッチがあった。

マッサージしてチカラが抜けたら 椅子、脱げるかも。


ポチ。


お!


おお!


おおお!!


めっちゃ気持ちいい。

「⋯⋯ うべぁ」ヤバい変な声もれた。


このホールド感と 人の手を追求したもみ玉の触感。

すごい! あまりの気持ち良さになんか漏れそう。


やっぱりお高いだけあるわ

ロボット工学の技術を使って

人の手を追求したもみ玉、もみ玉?


もみだまっていうか もう完全に手で揉まれてる感じ。首から肩にかけてのツボの辺り、優しく、でも心地いい強さで ギュッと揉んでくれてる。


去年行った1番高かったサロンのアロママッサージに匹敵するわこれ すごい!

なんか身体中の穴という穴が緩むわぁ〜。


「はぁぁん」変な声出たわ まいっか1人だし。




「強さは大丈夫ですか?」


うんうん 丁度いいよー最高だよー!

チョー気持ちいい〜〜


って誰ーーーーーーーーーーーーー!!!!!


「え?え?」「誰の声??」


「お嬢様 揉み加減はいかがでしょう?」


もみ玉の辺りから声がした。


人の手を追求したもみ玉


人の手を ついきゅ う?





両手がハマって動かせないから

視線だけ動かして 肩の辺りを見てみる


肩から鎖骨の辺りに 綺麗な手が見えた。


手じゃん。 これ手で揉んでるじゃん!



えええええええーー!!!

何、どういう事?


「おまちください」


と声がしたかと思うと プシュっと音がして

身体のホールドが消えた。


身体を起こしてチェアから降り

振り返ってチェアをみると

もみ玉のところの綺麗な手が中に引っ込んだ。


息を止めて見つめると

中から 小さい美少年が出てきた。


「はぅぁ⋯⋯ 」また変な声がでてしまった。


50センチくらいかな。

なんでマッサージチェアの中に小さい美少年が入ってるの。


色白でミルクティみたいな髪の色

グリーンの瞳で 北欧の美少年、いや王子様って感じ。


人間椅子?江戸川乱歩なのこれ?



あ、

⋯⋯ ロボット工学の技術が注ぎ込まれた⋯⋯


「あなたマッサージチェアなの?」


「はい お嬢様」


マッサージチェアの中に美少年型ロボット仕込むってどんな最新モデルですかーーー!


美少年型マッサージロボ内蔵チェア


ああ口の端がゆるむ。

可愛いすぎだ50センチの王子。


王子は最新技術の賜物か ものすごいテクニシャンだった。


え、いやなんか そーゆー意味じゃないよ!ってワタシ誰に言ってるんだ。


王子はチェアの外に出ると非力なんだけど

チェアの中でチェアと一体化してマッサージすると

超一流のエステシャンがマッサージするような加圧と

なめらかさ、120個のセンサーがツボを的確にサーチして加圧と弛緩を繰り返す。

メイド イン ジャパンすごい!

技術者の皆さんありがとう。

肩こりのツボっていうか

萌えのツボもおさえまくりですよ!


しかも2次元から出てきたような超美形の造形。

センス良すぎ!


マッサージが終わると 王子はチェアの中から出てきてお辞儀をした。


萌え死ぬかと思った。



王子の音声は マッサージに関する事だけ。


チカラの加減とか 揉み位置とか

おまちください とかそんな類の単語のみ。



でも良かったかも

これで 完璧なAIが搭載されてて

アンドロイドのように会話できたら

私、おかしくなってたかも。

きっと家から一歩も外に出なくなるだろう。



しかもなんでマッサージチェアが

小さなタキシード着てるのよ


グリーンの瞳がくりくりと私を見つめてる。


電源スイッチをOFFにしたら

王子はゆっくり目を閉じて止まった。


なんだろう この衝撃。めっちゃドキドキしてる。


ちょっと

王子 よく考えたらそこで止まらないでよ。

チェアの中に戻って充電しなくていいの?


取説を読んだら 外に出て止まって

チェアに座らせて充電するんだって。


こうして私と美少年の生活は始まっゴホゴホ

違うじゃん。私は一人暮らし!

これはマッサージチェア!



誘拐犯じゃないわ私は無罪よ!!

ああ口の端がゆるむぅ〜〜



「よろしくね 王子」


やだな もう私、マッサージチェアに話しかけてる。


でも この人型の美少年はどう見ても

ロボには見えなかった。


誰かこの部屋を訪ねて来たら

誘拐事件かと通報されかねないわ。



気がついたら

充電中の王子に ずっと話しかけていた。


目をそっと閉じて 耳を傾けているみたい。


しばらく話してから もう一度起動してみた。

やっぱり動いてる方がいいわ。


「おまたせいたしました お嬢様」


マッサージのコースを選択して

チェアモードを回避

エステモードを選択すると

王子がチェアの中に入らず

椅子に乗った位置で揉んでくれる。


私は王子を潰さないように浅く腰掛けた。

このモードだとパワー不足なんだけど

王子と話したかったから これでお願いする。





ああなんなんだ私、王子と話したいって⋯⋯

マッサージ機なのに。


私は徒然に思いつくままに王子に話しかけた。



正直 私は、男の子とまともに会話した事が無かった

彼氏居ない歴=年齢 の干物女だ。




王子の手が暖かい。




お尻が大きくてコンプレックス。


「コンプレックスなんですね」



王子の手で固く滞った血流が

流れて行く感じ。



何度かは いい感じになった人や

連絡先を聞いてくれた人がいた。




あはは

「もうちょっとチカラ入れてよ王子、

くすぐったいよ」


「くすぐったいですか」


王子のAIは こちらの言葉を繰り返す事で

擬似的に会話っぽく聞かせているようだ。




でもみーんな断っちゃった。


干物女、とか言ってるけど

本当は人一倍恋に憧れてるのが私。


偶然 先週幼馴染の男の子に会って

連絡先を教えて貰ってた。


嘘 。ホントは偶然じゃなくて

私 SNSで 調べて知ってた。



「わぁ偶然!何年ぶりー?」とか言って。


勇気出して連絡先まで貰ったのに

そのまま放置してる。





一人暮らしの部屋で

マッサージ機に話しかけてる。


「バカみたいね」


「バカみたいですね」


もう、そこは否定しろよ王子。





バカみたいだけど


私は泣いていた。


王子の手が優しくて暖かいや。


「王子、私 どうしよう?」


「どうしましょうか」



「電話した方がいいかな」

「電話した方がいいですね」


「やっぱりそうかな」

「やっぱりそうですね」



ああ 勇気が出ない


「バカみたいね」

「バカみたいですね」






王子は手を止めて

私の背中に ギュっとしてくれた。








うん がんばってみるよ 王子。







王子に背中を押されて 電話出来たかなぁ?

王子の暖かい手が 勇気をもたらしてくれるといいな


読んでいただきありがとうございました。

マッサージ行きたいです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ