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ゴールデンブーツ

お久しぶりです。ペースは遅いですがなんとか完結目指して頑張りたいです。。

 ……て、……だよ、お兄……ん


 どことなく心地が良い。夢でも見ているのだろうか。


「おはよう、やっと起きた」


 瞳を開けるとそこには愛しの妹、莉奈が俺をかがんで覗き込んでいて安堵したような笑顔を浮かべていた。


 時計を見ると時刻は10時を回ったところだ。


「りな、好きだよ」


 とにかく思いの丈を素直に打ち明けた。


「はぁ、うるさい」


 莉奈はぐっと拳を振り上げる。少し飛ばしすぎたか……


 ぽんっ


 勢いよく殴られるのかと思われたが、俺の肩口を襲ったのは拍子抜けしてしまうほど優しい鉄拳だった。いや、むしろ優しくタッチされたぐらい。いつもなら普通に殴られるはずだけどな……いや、期待してたわけじゃないから、うん、Mではないはず。

 そもそも起こしてくれるのも珍しいよな。まぁ莉奈より俺のほうが早起きしてるからっていうのはあるだろうけど。


「どうして起こしてくれたんだ?」


「そろそろ起きたほうがいいからでしょ」


 目覚ましをセットしなくても普段の休日は8時頃には起きているが今日は寝すぎたみたいだった。なぜだろう。


「ほら、はやく顔洗いなさいよね」


 リビングで待ってるから、と莉奈は部屋からスタスタと出て行った。

 

 よく考えると妹に起こされるという素晴らしいシチュエーションだった。全国のシスコン兄貴及び妹を愛する男達であれば間違いなく体験したいイベントの一つだろう。そんな皆の夢を俺は手に入れたのだ。欲を言うと馬乗りになって起こしてくれれば100点だった……適度に莉奈の重さを感じながら目覚めを迎えるなんて昇天してしまうかもしれない。いや、贅沢は言ってはいけない。最近はツンツンして俺の言うことなんか軽く一蹴されていたことを思えば大きな進歩だった。


 とにかく最高の休日の始まりだった。


 今日はsc東京のリーグ戦を観戦する。しかもただの試合ではない。あのワールドクラスのストライカー、長瀬仁の日本移籍後初出場となるであろうsc東京vsの試合だ。


 みなみにチケットはアンリが俺たち兄妹の分まで用意してくれている。自分の父親である長瀬仁の権力によって確保してくれたものだ。ホントにアンリにはなにかお返ししないとな。

 頭も覚醒したところでベッドから起きあがって顔を洗いに洗面所へ向かった。





 リビングへ入るとバニラの華やかな香りが鼻腔をくすぐる。この香りは最近買ったバニラマカダミアのフレーバーコーヒーだ。でも莉奈が淹れるのは珍しい。


「ほら、冷めないうちに食べなよ」


 なんと食卓にはコーヒーだけじゃなくてトーストとスクランブルエッグ、ソーセージが盛り付けられたお皿が用意されていた。


 ご飯の準備は俺の仕事でこれまでにはこんなことは一度もなかった。


「莉奈が作ってくれたのか?」


 一応確認を。


「他に誰がいるのよ」


 そりゃそうだよね。うん。


「莉奈の手料理かぁ……食べるのがもったいないし保存したいぐらいだ」


「ばかなこと言ってないで早く食べて」


 妹に起こされた次は手料理を作ってくれるなんて……今日はどういうつもりなんだ。莉奈はじーっとこっちを見つめている。

 これで莉奈が食べさせてくれたら最高に可愛いブラコン妹だけどそのサービスはないことを察したところでスクランブルエッグを一口。うん、バターの香りに塩胡椒で味付けされたふんわり卵で普通においしい。料理できない属性みたいなのってあるけど莉奈はそれではないんだな。


「どう、おいしい?」


「もちろん、おいしいよ」


 まぁまずいスクランブルエッグなんてないかもね。黒焦げにするとか塩入れすぎるとかしないとそうならないか。

 それに料理は全部温かくて作りたてって感じだ。莉奈が起こしてくれたのはこれを食べさせるためだったのか。まったく、可愛い妹だよ莉奈は。


「私だってやればできるんだからね」


 えっへん、と自慢げに胸をはる莉奈。その仕草もたまりません。


「やっぱり莉奈好きだ」


「うるさい」


 ぷいとそっぽを向く莉奈。恥ずかしがらなくてもいいのに。


「今日めちゃくちゃ優しいけどどうかしたのか?」


 ちょっと不気味なぐらいに。


「別にいつも通りだよ。でもたまには私がやったらお兄ちゃん喜ぶかなって思っただけ」


「よくわかってるじゃん、嬉しいに決まってるだろ」


 莉奈の頭をくしゃくしゃと撫でる。


「ちょっと、髪の毛ぐしゃぐしゃになっちゃうじゃん」


 満更でもなさそうだけど調子に乗って続けたら殴られるパターンだ。ここらへんで止めるのが正解だろう。


「よかったら試合までどこか出かけるか?」


「んー、どうしてもっていうなら行ってあげてもいいけど」

 

 相変わらずツンツンしてるけどそれも悪くない。


「ほら、またu-16代表に選ばれたんだし新しいスパイクでも買わない?」


「え、いいの? 買いたい!」


 莉奈の表情がわかりやすくパッと明るくなる。ホントにサッカー好きだよな。

 莉奈は8月に日本で行われるu-16アジア大会のメンバーに選ばれたのだ。この大会の上位3チームに来年のu-17女子ワールドカップの出場権が与えられる。この前の静岡での強化合宿とは違って大会のメンバーとして代表に選ばれたのは莉奈としても俺としても嬉しい限りだ。もちろんアンリも選ばれている。これは言うまでもないけど。





「これかっこいいな〜、でもこっちもいいよね」


 よく行く近所のサッカーショップへ。

 いろんなチームのレプリユニフォームから練習のウェア、スパイクやヘアバンドの小物までサッカーに関するものならなんでも揃っている。サッカーか好きなら見てるだけでも楽しめると思う。たぶんこれは俺だけじゃないはず。


「またアデダスにするのか? Mikeもかっこいいの多いけど」


 壁にはたくさんのシューズがメーカーごとに並べられている。


「もちろん。アデダスとは契約してるも同然だからね」


 莉奈はスパイク、トレシューからスポーツウェア全てをアデダスで揃えているヘビーユーザーだ。自分が身につけることで宣伝しているらしい。


「さすがにこれはやりすぎかな?」


 手に取ったのは金色のスパイク。おそらく最近発売されたカラーだ。


「いいんじゃない? 加川真司も履いてたし」


「ホントにそう思ってる? でもこのモデルの金か白にしよっかな」


 莉奈の選んだモデルは軽量のスパイクでスピードを持ってゴールに迫ることをコンセプトとしているスパイクだ。このモデルを着用しているトッププレイヤーはストライカーや攻撃的なポジションの選手が多い。


「決めた。やっぱり直感が大事だよね、これなら点が取れそう」


 莉奈はぐいっと金色のスパイクを掲げた。決断までにかかった時間はおよそ10分程度。早い。


「いいじゃん、かっこいいよ、まさにゴールデンブーツだな」


「でしょ? やっぱりストライカーはシュートを決めないとね、シンデレラガールズの頑張り屋さんもそう歌ってたし」


「ああ、笑顔が素敵なあのアイドルね」


 というかこれってあの曲の2番のサビの歌詞だから知ってる人少なそうだけど。確かに主役になるにはチャンスで決めないとな。


「ちなみにお兄ちゃんならどれにする?」


 正直こだわりはないけどできるだけ軽いのがいいぐらいか。重いスパイクは余計に疲れる気する。


「これとかかな」


 銀色で足首までサポートのあるスパイクを手に取る。


「ちょっと、なんでMikeのやつ選んでるの? アデダスの中からにしてよね!」

 

 はい、すごい剣幕で叱られました。

 めっちゃ怒るやん、人のスパイク選びにそんなガタガタ言わんでええがな。


「はあ」


「ごめんね、でも莉奈の好きなアデダスをお兄ちゃんにも使って欲しいだけだよ……?」


 やりすぎちゃった、というような様子の莉奈。これがまた可愛いんだよ。こんな感じで結局アデダスのスパイクしか買ったことないからな。


「じゃあ莉奈とおんなじモデルの白いやつにかな」


「うん、いいと思う! お兄ちゃんも買っちゃう?」


 でもさすがに使わないだろうな。自分がまたプレーできるとは思えない。それなら莉奈のスパイクをもう一つ買ったほうが有意義だろう。


「んー、せっかく買っても使うことないよ」


「そっか」


 あからさまにしゅんとして残念そうにする莉奈。ちょっと前に河川敷でも言ってたけどやっぱり俺にもう一度プレーさせたいんだなと感じる。

 莉奈の感情がわかりやすく表に出るのはいつもだけど(素直じゃないけど)莉奈の期待に答えてあげられないのは心が痛かった。



最後までお読みいただきありがとうございます。最近はデレステはやってません。

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