アナーキーなストライカー
初めて書きました。力量不足、不備等たくさんあるかと思いますが読んでいただけると嬉しいです。
「ねえ、お兄ちゃん」
「どうした、莉奈」
「あのね……いつものやらない?」
「莉奈…もうやらないってこの前言っただろ。それにこれは俺たちだけの問題じゃないんだから」
「ねえ、ちょっとだけだから。ちょっとだけ。それにお兄ちゃんもやりたいんじゃないの?」
「そんなことはない、こんな反社会的なこと…」
「さきっぽだけでいいから…ねえ、いいでしょ?」
「お前のさきっぽってなんだよそれ」
「かわいい妹のお願いだよ、聞いてくれないの?」
「お兄ちゃん、ちょっと小さすぎ、それじゃ届かないよ」
艶のある綺麗な黒髪が飛び上がった拍子に宙になびく。
「ごめんごめん。次は大きくしてみる」
「ちゃんと私を見て、私の動きに合わせて出してね」
いつになく真剣なまなざし。本能的な欲望に従うように俺に声をかける。
「やった、今のとっても良かったよ! こんなの誰にも止められないよ!」
少しあどけなさの残る端正な顔に今にもとろけそうな甘い表情を浮かべて喜ぶ莉奈。我が妹ながら控えめに言ってもめちゃくちゃかわいい。
「そうだな……俺は風呂入ってくるわ。もうやめとけよ」
「…わかったよ、またやろうね!」
はぁ、また今日もやってしまった。なんで中3と高1にもなってこんなことをしてるのかと考えると情けないし近所には申し訳ない。
そう、俺たち兄妹はサッカーをしていたのだ。
厳密に言うと、リビングの端から俺が浮き玉を蹴り入れ、妹がそれに合わせて簡易ゴールにシュートしていた。
しかも我が家はマンション、集合住宅だ。なんて社会性の低い兄妹なんだと思われても仕方ない。それなら一緒にやらずに止めたらいいと思われるかもしれない。しかし、本当に情けない話、かわいい妹のお願いには逆らえないんだ……
莉奈は家でもサッカーをやろうとする困った妹だ。それに断りきれずに付き合う俺もダメなんだろうが……今日もクラブチームの練習に行ってたわけでまったくサッカーをしてないわけじゃないのに。
ピンポーン
湯船に浸かりながらもやもやと考えを巡らせているとインターホンが鳴るのが小さく聞こえた。いったいこんな時間に誰だろうか。まあ莉奈が出てくれるだろう。
今まで大倉家の日常が展開されていたわけだが、さすがにこのままではまずいよなあ。こんな歳にもなって家の中でサッカーなんてやっていいわけないし。
よし、次は絶対に断ろう。ぜったいに。確かに愛しい莉奈のお願いは聞いてやりたい…でもいくら妹が可愛いからってそれは社会では通用しない。
アナーキーなストライカーを止めるのは俺の役割だ。頑張れシスコン兄貴、大倉洸。