ざまぁ系ヒロインはダンジョンマスターに裁かれる
「公爵令嬢はダンジョンマスターに拾われる」のざまぁ系ヒロインマリア視点です。先に上記の短編を読む事を推奨します。
なお、設定の変更により、前作までの"美貌のネックレス"のネックレスの名前を"色欲のネックレス"に変更しました。
私の名前はマリア・ルクセリア。
ルクセリア男爵家の庶子でもうすぐこのラビリンス王国の王太子妃になる者よ。
それにしても、ふふふ。
こんなにうまくいくなんてね。
塔に放り込まれようとしている彼女、エイラを見る。
その信じられないような絶望したかのような顔を見ると思わず笑みを浮かべてしまった。
ふふ、ふふふふ。
これで邪魔者は消え去った。
全て順調だ。
やっぱり私はこの世界のヒロインなのよね!!
ー▽ー
記憶が戻ったのは10歳の時。
一瞬舞い上がったけれどすぐに鎮火した。
なぜなら、私は貴族の令嬢でもないし、何よりも私の容姿は非常に平凡であった。
なんでよ!!
普通、転生といったらヒロインか悪役令嬢でしょ!!
何よこの村人Cみたいな顔は!!
せっかく転生したのに。
王子様とか高貴な方々との恋愛をするはずだったのに。
これじゃあ無理よ。
そう、思っていた。
転機が訪れたのは記憶が戻ってからひと月後。
夢を見た。
『このネックレスは"色欲のネックレス"。持ち主に誰もが羨む美貌を与えます。周囲には装着した際の容姿が元からの容姿だと認識されます。ただし、装着した時間が長ければ長いほど、装着者の本来の容姿が醜くなっていきます。何かを得るには何かの対価が必要という事です。まあ、ずっと付けていればいいんですけどね。これは貴女に差し上げましょう。使うも使わないも貴女の自由です』
夢では神様みたいな人が現れてそう言った。
そして、目が覚めると、枕元にネックレスが置いてあった。
アレは神様みたいな人じゃなくて、本当に神様なのね!!
せっかく転生したのにこんな平凡な顔に生まれた事を不憫に思った優しい神様なのね。
きっと、私にかっこいい王子様達と恋愛しろと言っているんだわ。
さっそくネックレスを身につけて鏡の前に立ってみた。
するとそこには、村人Cみたいな少女ではなく、花のような可愛らしい女の子が立っていた。
ありがとう神様。
そこからはトントン拍子だった。
お母さんや周りの人もみんな私を愛してくれた。
あれが欲しいと言えば何でも貰ってあれやってと言えば何でもやってくれた。
母子家庭で、ある時、お母さんが死んでしまったけれど、私のお父さんだというルクセリア男爵が私を引き取ってくれた。
多くの貴族が通う学園に通う事になった。
そして、そこで運命の出会いを果たす事になった。
セラフィス公爵家の長男で腹黒系のコスト。
オケナイト侯爵家の次男で熱血系のバーン。
イディコライト伯爵家の双子の兄弟のイラルとコラル。
ウェルネライト子爵家の三男でワンコ系のポーティ。
みんなすっごいイケメンなの!!
みんな、優しくて私をチヤホヤしてくれるし。
そして、何より素敵なのが、このラビリンス王国の第二王子のハルディオン様。
THE王子様って感じで爽やかでイケメンで優しくて、ちょっと俺様な所が凄くキュンとくる。
そんな彼らと嬉し恥ずかしのドキドキスクールライフを送っている時、私は気づいた。
もしかしたら、この世界は私が知らない乙女ゲームの世界なのでは? と。
そう考えるといろいろと辻褄が合うのだ。
いくら私が可愛いからって物事には限度がある。
こんなイケメン達に囲まれてチヤホヤされるのは普通ありえない。
普通じゃなければ?
そう。
例えば、私がこの世界のヒロインだったら?
そう思えば辻褄が合うのだ。
これは平凡な少女が神様によって可愛くなって、彼らと恋愛する乙女ゲームなのだ。
そして、私はこの世界のヒロインなのだ!!
と言っても、彼ら攻略対象は既に攻略していると言ってもいい。
私を好きだと言ってくれるし、高いプレゼントもくれるし。
もう既に逆ハー状態だ。
やっぱりこの逆ハーを維持したまま、ハル様と結婚するのが一番いいよね。
なんて言ったて彼は第二王子だけど王妃はら
兄に第一王子がいるけれど彼は側妃腹だ。
つまり、順当に考えてハル様が王様になるはず。
そして、結婚すれば私が王妃様。
もう、ハル様一択でしょ!!
ー▽ー
さて、ここで邪魔者が出てくる。
エイラ・セラフィス。
コストの義姉でハル様の婚約者だ。
私がハル様と結婚するにはこいつが邪魔。
しかし、問題はないわ。
あの人、悪役令嬢だもの。
そろそろ、私をいじめに来るはず。
そこからお約束の展開からの婚約破棄。
そして、私がハル様の婚約者となるのよ!!
……。
…………。
………………。
あれぇ?
全然いじめに来ないわよ?
階段から突き落とすどころかドレス破いたり、嫌味言ったりすらしない。
ま、まさか!?
彼女も転生者!?
そう、きっとそう。
だって彼女は悪役令嬢。
なのに私をいじめに来ない。
それが意味するところは彼女も私と同じ転生者。
それもおそらくこの世界の原作を知っているんだわ。
どうする?
どうすればいい?
彼女がいじめに来ないとそれを理由に婚約破棄は出来ない。
……そっか。
こうすればいいんだ。
大丈夫。
私はヒロイン。
何をやっても許されるのよ。
それが正しい行いなのよ。
ー▽ー
ふふっ。
うまくいったわ。
もともとハル様はエイラを疎ましく思っていた。
彼女がいる限り私と婚約者になれらないから。
その事を常々私に言っていた。
だから、ちょっと背中を押すだけ。
お約束通りに。
虐められたフリをしてそれをエイラの仕業にする。
そしたら簡単に憤慨してくれた。
ハル様と同様にエイラを疎ましく思っていたコストだけでなく他のみんなも。
そして、ハル様達はエイラを婚約者の座から外す動きに移った。
エイラはコストを除いたセラフィス公爵家が溺愛する娘。
そんな娘にいくらハル様が私を虐めたとか言っても中途半端に処理される可能性がある。
だったら徹底的に排除すればいい。
そして、みんなで考えて着いたのは、王都の外れにある塔のダンジョンにエイラを放り込む事だ。
名前は忘れたが、あのダンジョンは生きて帰った人が皆無。
一度立ち入れば二度と出られない事で有名なダンジョンだ。
そこでエイラを排除し、公的にはエイラはハル様を守って死んだ事にすればいい。
そして、次の婚約者に私がなるという手筈だ。
ダンジョンに放り込むだけだから物的証拠は残らない。
完璧だ。
ー▽ー
そして、迎えた実行日。
ハル様はエイラを連れて王都の外へ。
そして、私達は後ろからこっそりとついていく。
そして、塔のダンジョン前でエイラが外に出される。
「えっと、ハルディオン様? 隣町に行くのでは?」
エイラはとても混乱している。
そりゃそうよね。
でも、混乱するのはここからよ。
「エイラ・セラフィス!! 貴様との婚約を破棄する!!」
はい、婚約破棄宣言いただきました!!
このタイミングで私達はエイラの前に姿を表す。
「貴様には失望した。貴様のした所業は我が愛しきマリアより聞いた。そのような者を我が妃にする事はできん!!」
「わ、私が彼女に何をしたというのですか!?」
「貴様は己の罪すら認めないというのか!?」
まあ、罪も何もないんだけどね。
強いて言えば悪役令嬢らしく私を虐めなかった罰かしら。
このヒロインたる私の踏み台にならないなんて神罰が下ってもおかしくないわ。
代わりに私たちが罰するんだけど。
次々エイラのありもしない罪を話すハル様。
それにいちいち反応すると心底みんなが心配してくれてとても気持ちがいい。
「という事だ。そのような所業をする者など我が妃にする事はできない!! よって貴様との婚約を破棄し、新たにマリア・ルクセリアと婚約を交わす!! 受けてくれるねマリア?」
「はぃ〜、マリア、嬉しいですぅ〜」
バカみたいな言い方だが、彼らにはこのぶりっ子な話し方が一番いいのだ。
「待ってください!」
エイラも食いさがるが、無駄無駄。
もう、貴女の言葉は誰も聞かないわ。
「安心しろ。貴様はここで突如現れた異常モンスターに襲われ、私達を守り死んだ事にする」
「義姉上、ご心配なく。お父上にもそのように伝えておきます」
「貴様は未来の王妃を害した罪では無く、私達を守った名誉ある死として逝ける事を光栄に思うがいい」
ああもう。
余計な事は言わないでさっさとあいつを塔に放り込みなさいよ。
と思ったら、護衛達がエイラを捕まえる。
もちろん彼らも私の息がかかっている。
ハル様の護衛ではあるが、既に私の傀儡だ。
この美貌でイチコロよ。
「まあ、元とはいえ我が婚約者だったのだ。貴様にチャンスをやろう。知っているだろうが、この塔は難攻不落のダンジョンとして知られている。もし、攻略に成功したのなら貴様の所業を許してやっても良い」
またしても余計な事を言う。
と言ってもそれは無理ね。
ハル様だって分かってて言ってるんだから。
エイラが塔に放り込まれ扉が閉まり始める。
その時彼女と目があった。
私は思わず嗤ってしまった。
ー▽ー
あー、やっとエイラの排除が終わったわ。
悪役令嬢の癖にヒロインを虐めないなんて。
転生者だからって役割を果たさないからこうなるのよ。
エイラを塔に放り込こんだ後は、そのまま別の町にいってみんなで遊んだ。
彼らはイケメンだし、優しいし、お金持ちだし。
もう大好き!!
るんるん気分で何日か過ごしていたが、私が幸せになるにはどうやらまだ障害があるようだ。
ハル様の婚約者が決まった。
私じゃない。
私がじゃない!!
せっかくエイラを排除したのに!!
これじゃあ徒労じゃない!!
ハル様の新しい婚約者はフォルモンド伯爵家のユーリとかいう奴らしい。
確か天才魔導師だとか。
興味はなかったけど。
なんで、そんなポッと出の奴に私の婚約者の座を取られるのよ!!
まあ、どの道結果は変わらないわ。
ヒロインの邪魔者は婚約破棄されて地獄に堕ちるだけよ。
自作自演で虐められ、ハル様達に報告する。
やはり彼らは見事に食いついてくれた。
何の疑いもなく。
そして、今度は確実に私を婚約者にする為にみんなの前で宣言する事にした。
近いうちにハル様の兄の第一王子の誕生パーティーがあるそうだ。
そこで婚約破棄をする。
そして、今度こそエンディングを迎えるのよ!!
ー▽ー
「ユーリ・フォルモンド!!」
パーティーが中盤に差し掛かった時、ハル様が声を張り上げる。
「なにか?」
それに対してユーリは煩わしそうにしている。
何よ余裕ぶっちゃって。
天才魔導師だか何だか知らないけどあんたはここで終わりなんだからね。
「ユーリ・フォルモンド、貴様のような悪女を我が妃にする事は出来ない!! よって貴様との婚約を破棄し、新たにマリア・ルクセリアとの婚約を宣言する!!」
はい、言質はいただきました。
この場にいる全員が証人。
誰もこの言葉を覆す事は出来ない。
これで私がハル様の婚約者よ!!
「「「我らもマリアを支える事を誓います!!」」」」
そして、他の攻略対象達に跪かれる。
「きゃー、ハル様ぁ〜、みんなぁ〜!!」
ああいいわ。
気分がいいわ。
こんないい男達が必死に私を愛してくれて。
ヒロインの特権よね。
ハル様の断罪の言葉を聞きながら快感に耽っていると第一王子がやって来た。
第一王子オラクル。
私、この人嫌いだ。
イケメンだし、王子様だし。
狙っていたんだけどどうも上手くいかない。
私の美貌に靡かない。
だから嫌い。
多分、攻略対象じゃないのよね。
だから嫌いだけどどうでもいい存在でもあった。
そんな彼らがハル様に正論を告げる。
私自身全くの正論だと思う。
だからこそ煩わしい。
そう思っていると、彼は爆弾を落としてきた。
「ユーリ嬢はね、ここ数ヶ月学園に行かずに王城で宮廷魔術師として働いていたのだよ、」
え?
何それ?
まさか。
彼女も転生者?
ありえる。
転生者特権の魔術チートなら天才魔術師と呼ばれてもおかしくない。
くそっ、転生者はエイラだけと思っていたわ。
ま、まだ大丈夫。
私、虐めてきたのはユーリかもとしか言っていない。
ユーリ本人じゃない可能性がある事もハル様達は分かっており、取り巻き達がやったと告げるハル様。
しかし、徐々に不穏な空気になっていく。
何で!?
どうして!?
ヒロインにこんなに不安にさせないでよ!!
「ふ、ふ、ふ、ふはははははははは!!」
突如響き渡る笑い声。
その方向を見るとそこには奇跡がいた。
黒目黒髪の男性。
一瞬日本人に見えたがそうじゃない。
そんなものを超越している。
はっきり言ってハル様なんか目じゃないくらいかっこいい。
思わずポーと彼を見てしまう。
「あーあ、久しぶりに笑った。もう少し見ていたかったけど我慢出来なかった。本当にお前達は愚かだな」
やだっ!
クールな感じがまたかっこいい!!
誰よこの人は!?
何で今まで登場していなかったの!?
そしたら私、絶対に彼を攻略するのに!!
「貴様! この方が誰なのか分かっているのか!!」
「知っているよ。この国の第二王子でエイラ・セラフィスの元婚約者。そして、彼女を『練武の塔』に放り込んで殺そうとした者の一人」
えっ?
な、何で知っているの?
うっとりと赤らめていた顔から血の気が引くのを感じる。
「デ、デタラメを!!」
「デタラメなんかじゃないさ。なあ、エイラ」
え?
エイラ?
彼がパチンと指を鳴らすと、今まで意識すらしていなかった存在がハッキリと確認できた。
その存在は紛れもなくエイラ・セラフィスだった。
「な、エイラ……死んだはずじゃ!?」
「ごきげんよう。お久しぶりですねハルディオン様」
うそ、何で生きているの?
こいつにあの塔から生きて戻ってくるのは不可能のはず。
ま、まさか。
ゆゆゆゆ、幽霊!?
「まあ、ハルディオン様、それに皆様、そんな幽霊を見たような顔をしないでください。私はこの通り生きていますよ」
違う!
幽霊なんかじゃない!
本当に生きて……。
彼女は語る。
私達に殺されかけた事を。
なんで。
なんで!!
「なんで、なんで、あんたが生きているのよ!!」
我慢しきれずエイラを攻め寄せる。
「それは俺が助けたからだ」
彼はそう言った。
あの奇跡の男性がそう言った。
そう、かの存在は奇跡なのだ。
神々しく浮かび上がる男性。
その姿は奇跡存在である神のよう。
なに、この人は?
「我が名はメイズ・ラビリンス。フィロキセラの盟友にして、この国を守護する者」
目が離せずに彼を見ていると王様がいつの間にか近くまで来ていた。
そして、
「今をもって第一王子オラクルを王太子とする!! そして、ハルディオンの王位継承権を破棄し、廃嫡とする!! エイラ嬢及びユーリ嬢を害そうと共謀した者達には追って沙汰を言い渡す!! 衛兵、罪人達を捕らえよ!!」
え、なにそれ?
困惑する前に取り押さえられる私。
その衝撃が私を現実に引き戻す。
なんで、なんでなんでなんでなんで!?
なんでこんな事に!?
私はヒロインなのよ!!
こんな事して許されると思っているの!?
「くっ!! やめろ!! 父上、どうしてその様な得体の知れない者の言う事を聞くのです!?」
「この方が仰ったではないか。この方は初代国王フィロキセラ様と盟約を交わしたこの地に住まう神である」
神……様?
違う。
私が昔会った神様はこんな人じゃない。
女の人の声だった。
そう、この人は神様じゃない。
そして、私は神様に認められたヒロイン。
だったらする事は一つ。
「最初にエイラを殺そうとしたのはお前達だろう?」
「違うのですっ!! 私、エイラ様に虐められてて。それを、みんなに相談したらこんな、事に。私は悪くないのです。メイズ様なら分かっていただけますよね?」
私の美貌をフル活用してメイズ様に助けを求める。
そう、この人は隠しキャラよ!!
だってこんなにかっこいいんだもん。
ご褒美要素として完璧じゃない!!
そして私はヒロイン!!
ここからこのメイズ様が私を助けてくれるの!!
周りから何か聞こえるけれど関係ないわ。
私はヒロイン。
ヒロインである為に神様から美貌を貰った存在。
私はヒロイン私はヒロイン私はヒロイン私はヒロイン私はヒロイン。
だから大丈夫。
「……ああそうか。それか」
地に降り私に近づいてくるメイズ様。
ああ、近くで見れば見るほどかっこいい。
うっとりする。
ここから彼と私の甘い物語が始まる。
だってほら。
救いの手を差し伸べてくれて、
ーーブチリ
「「「え?」」」
突如光に包まれる私。
それは一瞬で消え去った。
そして、その瞬間なんだか体がとても重く感じるようになった。
何が起きたの?
メイズ様が救いの手を差し伸べてくれて……違う。
取られたのだ。
私の、私の。
私のネックレスが!!
「"色欲のネックレス"。身につけた者の容姿を美しく、あるいは可愛らしくするネックレス。どこで手に入れたかは知らないけれどそれが、お前の正体というわけか」
正体って何?
私はヒロインなのよ?
花のように儚げで可愛いヒロインなのよ?
何で、何でみんなそんな化け物を見る目で私を見るの?
いや、いやよ!!
そんな目で見ないで!!
そして思い出した。
『このネックレスは"色欲のネックレス"。持ち主に誰もが羨む美貌を与えます。周囲には装着した際の容姿が元からの容姿だと認識されます。ただし、装着した時間が長ければ長いほど、装着者の本来の容姿が醜くなっていきます。』
私の与えられた美貌はネックレスによるもの。
それが取られた私の容姿は村人C。
いや、ネックレスの効果を考えると……。
あの日からずっと付けっぱなしだった。
肌身離さず身につけていた。
それが当然の事になっていた。
あの姿が私の当然の姿になっていた。
それを取られた私は……。
絶望が押し寄せてくる。
私はヒロインのはず。
イケメン達と恋をして幸せに暮らす存在。
なのに何でこんな事になっているの?
私はヒロインなのよ?
そして、目の前に奴が現れた。
「エイラ・セラフィス!!」
奴を見ると、どうしようもない怒りが湧き上がってくる。
どうしてこうなったのか?
決まっている!!
あいつが死ななかったからだ!!
「私ね、貴女に感謝しているんですよ。貴女のお陰でメイズ様に出会えましたから」
そこで、一拍置き、そして、
「貴女のお陰で私は今幸せです」
とてもいい笑顔で彼女はそう言った。
それは私を蔑む行為である。
私の感情を逆撫でする行為である。
怒りが、憎しみが沸き起こってくる。
「エイラ・セラフィスぅぅぅ!!」
くそっ、くそっ、くそぉ!!
何でお前なそこにいる!!
何でお前が幸せそうにしている!!
そこは私の立ち位置よ!!
悪役令嬢の癖に!!
転生者だからって調子に乗って!!
まさか、隠しキャラのメイズ様に会う為に私を逆に誘導したというの!?
ありえる!!
なんでなんでなんで!!
人を踏み台にして!!
そんな事して人として恥ずかしくないの!?
お前のせいで私はこんな目にあっているというのに!!
どうしてお前は幸せそうにしている!!
ズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルい!!
荒れ狂う私にエイラはトドメの言葉を放つ。
「ざまぁ」
彼女再びとてもいい笑顔でそう言った。
そこから先の事は覚えていない。
目の前が真っ赤になったのだ。
そして、気がつけば牢屋に閉じ込められていた。
マリア:冷静なようで都合のいい事だけを信じる電波。神様のせいで自分はこの世界のヒロインだと信じる事に。ある意味被害者だが自業自得でもある。勝手に乙女ゲームの世界と思い込んだりしている。
第二王子:アホだけどマリアの被害者その1。
取り巻き達:アホだけどマリアの被害者その23456。やっと名前と系統が出来た。しかし、あとがきでは取り巻きの一括り。ある意味作者の被害者。
色欲のネックレス:使用者に美貌を与えると同時に、時とともに使用者を醜くするネックレス。隠し効果として使用者が意識した異性に対して強い隠蔽性の魅了を放つ神の道具。使用者はだいたい破滅する。
神様:邪神。マジで邪神。マリアの強い欲望を感知して色欲のネックレスを渡した。メイズとは旧知の仲。