日向さんは幼馴染み
「そう言えばさあえいちゃんのクラスに火打原幽香ってコいるでしょ?」
「ああ、いるな」
すると日向は感心するように
「凄く綺麗よねあの人。もうなんか人形みたいに整った顔してて怖いんだけど。クラスの男子が騒いでるから見に行ったけどさ、もう言葉を失ったよ。しかも帰国子女でしょ?瞳が赤いの初めてみたんだけど。家もお金持ちらしいし」
ああ、そうらしいなと俺は生返事。
「男子がほっとくはずもなく、もう告白されまくりだって」
へー、と興味無さそうにまたもや生返事。
「……もしかしてホモなの?えいちゃん」
「何でそうなるんだよ!」
「だって興味無さそうだからさ思春期の男子のくせに」
「お前思春期の男子が欲にまみれているからってぼくも一緒にしないでくれ」
美人というか綺麗すぎて怖いというかコスプレさせたらかなりクオリティの高い物ができそうだとしか思わなかったな。
それとなんだか、得体のしれないものを持ってそうな気がしてならないんだよね、腹の中が見えないとか底が知れないとかそんな感じだろうか、火打原幽香を見て率直に思ったことだ。
「まああんまり興味はないかな、火打原は」
「……そう」
くるりと背中を見せてなにやらガッツポーズをとる日向。何してんだあいつ。
「やっぱり肉じゃが美味しいねえいちゃん」
「今さっき片付けてなかったか?お前いつのまに俺の背後から皿をとってよそったんだよ」
「細かいことは気にしないの」
なにやら御機嫌の日向。そんなに肉じゃがが美味しかったか、まあ俺が作った料理に間違いはない。
ドヤ顔で決めながら食器を片付ける。
日向は月子さんの部屋から大量の漫画を持ってくるとソファに寝転んで読み始めた。
月子さんは何かの編集者らしいが詳しいことはあまり教えてくれなかったな。まあ分かることは月子さんもマンガやアニメが大好きだということぐらいだろうか。
『おっすおっす!エイキは高校生活に慣れたかなー?女の子とチョメチョメするなら私がいない時にするんだよー』
『えー?まだ日向ちゃんとくっついてないのー?幼馴染みとか鉄板中の鉄板ネタじゃん何やっての?』
『やっぱりエイキはもっとガっといくべきだよ!「俺の子猫ちゃんになりな」とか言ったらいけるって!絶対』
月子さんとろくな会話してねえな、まあほとんど適当に聞き流しているが。
そのせいか資料用としてだろうか。大量の少女漫画や少年漫画もそしてラノベが山のようにある。
それを読み漁るのが最近の日向の日課となっている。
「お茶ここに置いとくぞ」
「ん……」
マンガに没頭している。やはり少女漫画に手を出していたか、確かに結構面白いものも多いもんな少女漫画。
甘甘な少女漫画はあまり得意じゃないがギャグ要素多めのやつなら読める。俺物語最高でした。
それにしても熱心に読んでるな。
「あう……」
箱からテッシュをむしって、目頭を押さえて鼻をかんでいる。
ぐずぐずと鼻をすすって、
「いいな……私もこんな恋がしたいよ」
「こんな恋って?」
「ん、これ」
「ほうほう」
日向から受け取った漫画を手に取り、パラパラとめくっていく。
幼馴染みの女の子に恋する男が、彼氏のいる幼馴染みの幼馴染の女の子をどうにかして振り向かせようとするコメディよりの少女漫画だが最終巻になるにつれてシリアスな展開が多くなり泣ける場面もある僕もお気に入りの漫画だが……
「まあ、ありふれた設定だけど面白いよなこれ」
と言った。
確かに面白いのだが陳腐なストーリーなんだよな。
「でもよく考えてもみろ、ほぼ家族と変わらない幼馴染みに恋を抱く時点で少し疑問を抱いてもおかしくない」
「……そ、そうなの?でも定番だと思うんだけど」
「ストーリーの中だけだからこいうのは引きたってくるんだよ。僕と日向を見ても、有り得ないってなるだろ?」
「………………」
ん?
ここは、だよねー、マジわかる、みたいな返事が返ってくるはずなのだが……
沈黙とはどいうことだ。
「そ、そうだよな、ありえないな!」
おお、そうそうそれ。その反応を待ってたよ。
疲れてるのか?
「で、でもよ、その熱愛っていうか、ラブラブっていうか恋愛も悪くはないかなっーて」
モジモジと照れくさそうに頬を染める日向。
なるほど恋か……
「なんだ日向にも好きな人ができたのか?」
「そ、そうだな、少し馬鹿で鈍感だけど優しくていつも世話になってる奴なんだ」
遂に日向にも春が来たのか。付き合いの長い僕からするとなんだか感慨深いものがあるな。
「で、そいつに告白したのか?」
「え!?いや……まだだけど……というかアピールしてんのに鈍感すぎるんだよ」
どうやらまだらしい、日向の性格からしてグイグイ行くタイプと思っていたが違うのか。意外と奥手とはな。
最後にゴニョゴニョと言って聞き取れなかったがまあ関係ないことだろう。
「何でしないんだよ、知ってるぞこいうのは先手必勝というヤツなんだろ?」
「う、うるさいな。私だって頑張ってるですーソイツが鈍感すぎるのがいけないのよ」
「……なんでそんなやつ好きになったんだ?」
バッサリと本音を告げる。
「……ばか」
ぷるぷると日向が震えだし下を向く日向。
「え?」
「えいちゃんのバカああああああああああああ!」
あらあらキレちゃった。
「えいちゃんのバカ!クズ!童貞!性犯罪者!好きになったんだからそんなこと言えるわけないでしょ!?私がどんだけ苦労してるか知らないくせに!アニメや漫画の見すぎなんだよこのチンカス野郎!少しは現実の女の子にも興味持ちなさいよ!」
ソファに仰向けになって暴れる日向。
そんなこと言われてもな……今が楽しいから恋愛に興味が持てないんだよな。
でもちょっと悪いこと言ってしまったか。
「今日はもう私帰る」
ガバッとソファから立ち上がり涙目でズカズカと玄関へ歩く日向を呆れた表情で僕は見る。
「そうか、気をつけて帰れよ。まあすぐ隣だけど」
「もう絶対に会話なんてしてやんないから!」
「はいはい」
「いい!?絶対に話しかけないでよね」
これは振りだろうか?ダチョウ倶楽部で言うところの押すなよ!絶対に押すなよ!のノリと一緒なのか?
「うんうんわかったわかった。話しかけないよまたな日向」
「……じゃあね!また明日」
ちゃんと帰りの挨拶はして帰るんだな……
「明日も食べに来いよ、多めに作っといてやるから」
「……うんわかった」
相変わらず食事でつれるちょろいヤツである。




