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水上くんのオタク事情  作者: さな
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木下日向は揺るがない

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俺はオタクらしい。

らしいと言うのはそれまで自身の行動が常人とは異なっていることに気づかなかったためだ。

気づいたのは中学二年の春、当時から野球部に所属していた俺は練習が終わり次第、いつも自転車を必死こいてアニメイト、とらのあな、メロンブックスを徘徊しては好きなアニメやラノベ、同人誌を月少ないの小遣いを使って買っていたものだ。

ある日グッズがそのままバックに入っていたことに気づかずにいた俺は野球の練習をいざ始めようとしたとき、バックから同人誌があることに気づき、何気に手に取って部室で読んでいたときそれを見たメンバーの一人が『うわ、俺こいうの知ってるぜオタクって言うんだろマジか英紀お前オタクだったのかお前マジキモすぎだろ』そこから僕がオタクだと学校中に広まり、仲の良かった女子は前まで呼び名が『英紀くん』だったのが『水上くん』になった時は心の距離がひらきすぎだろと叫びたかったぐらいだ。

毎回のようにオタクだと弄られお前こいうの好きなんだろとどこかから拾ってきたエロ本の紙切れを机に貼られたり、『うおー!オタ菌が俺の手に!』『はいターッチ』『バリア!』『ざんねーんオタ菌はバリアききませーん』なんてやり取りとかな。

オタ菌最強かよバリアきかねえとかチートじゃねえか。

しかし今は違う。

俺は過去の教訓を踏まえオタクだとバレないように努力をした。

高校は誰も行かないようなところに受かるために野球が終わった夏以降、猛勉強をし見事誰も行くことのない私立の高校に受かり、インターネットで見つけた外見でオタクだと決めつけられるという記事を参考にメガネからコンタクトにして、ボサボサだった髪も美容院に行きカタログに載っているものにしてもらい、地毛だと誤魔化せる程度に染めて眉毛も整え、普段の服にも気を配りファッション雑誌をあさくった。そして最近の流行りもののチェックなどなど……

そのおかげか高校ではたくさんの友達?ができた。

気づいたら女の子に告白されてたりクラスのまとめ役になっていたり文化祭でおこなわれる男子イケメンコンテストでも優勝と青春をしていた。…勿論、オタクだと知られずにだ。部活はやらない趣味費やす時間が惜しいだから女子の告白も断った。

『私、水上君のことが好きです付き合ってください!』『ごめん……僕にはもう好きな人がいるんだ(画面の中だけど)だから君の告白は受け取れない』

…余計な一言のせいで翌日クラスメイトから好きな異性は誰かとしつこく聞かれたな。なんとか誤魔化すことはできてよかった、もう二度と中学時代のようなヘマはしない。そう俺は……オタクを隠しつつ充実した平穏を手に入れるんだ!

いきなりだが俺には家族がいない。俺を生んだ両親は共に事故で他界している。

現保護者は親父の姉、つまりおばにあたる人の月子さんに家ごと俺を引き取ってくれた恩人だ。思い出の詰まっている家を離したくはないだろうと言ってくれた時は大泣きした。

だから将来はしっかりと就職して月子さんに恩返しをするときめている。

趣味も勉強もしっかりとするそれが今の俺の目標だ。



「おい行くぞえいちゃん」


玄関近くから俺を呼ぶ声が聞こえる。

しかしこんなオタクな俺にでも切っても切れない縁がある。

ではまずその幼馴染の話から始めよう。


ーーーーーーーーーーーーー


「ねぇ今日の晩飯なに?」

「んあ?ああそうだな……」


衣替えも終えた五月のある日。

仕事でほとんど家に帰ってこない月子さんの代わりに俺が家事の全てを引き受けている。おかげで料理、洗濯、掃除のスキルがメキメキ上がっている。『料理?いつもコンビニで済ませてるから大丈夫だよ』と聞いた時は頭を悩ませた。タダでさえ帰ってくるのが遅い月子さんだ、絶対何食か食事をしていないはずだ、せめて食事だけでもまともなものを食べて元気で仕事をして貰いたい。

そう思い気づいたらインターネットで料理レシピを見たり本を買ってきてはチャレンジしていた。

料理は基本が大事だ。勿論、味も大切だが健康面にも意識を向けないといけない。

失敗の繰り返しから段々と上手くなっていき最近になって月子さんが『美味しい』と言ってくれるほどまでなった。やはり家事は役に立つな。

そして今の時刻は五時半。洗濯を終わらせ乾燥機に回している時だった。


「何がいいんだ?日向」


スマホを両手で扱いながら俺の後ろに立っていた木下日向に聞いた。


「んー?私は何でもいい、えいちゃんの料理全部うめえし」


ラフな格好でスマホをいじる日向を見下ろしながら返答に困る。


「何でもいいが一番困るんだが……」

「じゃあオムライス」

「それ昨日食ったじゃないか……」

「なんでもいいのが困るって言ったから言ってあげたんだからさっさと作って私の腹を満たせ」


ビシッと俺の顔に指を指して命令。

胸がプルプルと揺れ思わずそっちに目がいきそうだ。

身長が低いが態度と胸がでかくなってしまった幼馴染みの日向はほぼ毎日のように晩飯を一緒にとっている。日向の両親も共働きで昔から僕の家で食べることが多かったため違和感は特にない。もう家族と同じようなものだ。


「肉じゃがでいいか……」

「私の意見は無視か。まあ腹に入ればみんな同じだしまあいっか」


こいつ身も蓋もないこと言いやがって。


「米といで炊飯器にセットしといてくれ、俺は材料切っておくから」

「……ねええいちゃん」

「なんだよ」

「パンツ見る?」

「ぶほぉ!?…ッ!お、おまあ!?」

「冗談に決まってるじゃん顔真っ赤にしてなに期待してんだよウケる」

「この野郎……」


くるりと半回転してタッタッタッとリビングへ向かう日向、スラリと伸びた健康的な太ももが実にけしからん。

……くそっ。

こんなことで動揺する自分に少し情けないと感じてしまう。

本当に生意気なガキというか、胸だけ育ちやがってまったく俺のような大人の男性とは大違いだな!


「もういい。お前の大嫌いなシイタケ入れてやる」

「あ、待って待ってさっきはごめん!」

「駄目だ。そのセリフ聞き飽きたもっとボキャブラリー増やしてから謝りにきな」

「お願いもうからかわないって、約束します!」


絶対嘘だ……

この前だってそう言ってからかってきたじゃないか。

まあどうせ許しても許さなくてもこいつはからかってくるんだ、こいつは。


「……じゃあ許してやる」

「ありがとね〜えいちゃん大好きだよ」

「はいはい俺も大好きだよ」


まったく。

あんな小さな体の癖になんで態度はいっちょ前にでかいだ。あああと胸も。

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