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あした天気になれ

 最寄り駅まで自転車で15分。

 最寄りって言葉の意味知ってる?呆れてそう言った雪子の顔を思い出すと、自然と笑みがこぼれた。

 都会で暮らしていた子には、ここの環境はなかなか驚きらしい。


 電車が2両編成と聞いた時の顔はすごかっし、ワンマン電車の意味は何度説明しても理解してくれなかった。

 ワンマン電車は先頭車両のドアしか開かない電車の事です。


 むしろ10両台の電車がゴロゴロしてる東京の方がおかしいと思う。

 東京には新幹線しか走っていないのかと思わず聞いてしまったものだ。


 ぼんやりと考えて事をしていた加奈子は、腕時計を見ると、自転車を漕ぐ力を強めた。


 次の電車は1時間後だ。

 乗り遅れる訳には行かない。


 自転車を駐輪所に停めると、加奈子は踏み切りからそのまま駅に入って行った。

 どうせ改札は無人だ。

 こんな横着は誰もがやっている。


 電車が来ると、窓に映った自分の姿を確認する。

 自転車で髪が乱れていた。

 手櫛で軽く整え、加奈子は自分の腰近くまで伸びた髪の端をつまんだ。

 そろそろ切ろうか。

 加奈子の頭の中では、色々な髪型が浮かぶが、いつも切ってもらっている床屋さんでは厳しいかと思い直す。

 雪子に聞いて見ればいいか。そう思うと加奈子はなんともシブい顔をした。


 雪子が来てからならこの手の知識が増えて困る。

 服も髪も、今までのように手元にあるもので済ませられなくなった。

 今日のようにわざわざ電車に乗って、大きい街まで出向かなくてはならないのだ。


 買い物はとても楽しいが、出費が嵩んで苦しい。

 今日の財布の中身を思うと、今日の買い物はかなりシビアに行かないと行けない。


 電車に乗り込んだ加奈子は、車内を見渡す。

 日曜だとほとんど利用者はいない。

 いるのはお年寄り数人と、同じように買い物に行くのだろうか、同世代くらいの子が数人だけだ。

 電車に乗るのは学生や旅行者、お年寄りなど車を運転出来ない人が多いからこれもいつものことだ。


 雪子は2人掛けのイスに座り、スマホをイジっている。

 中学のくせにスマホとはなまいきな。


 と最初は思ったりしたが、東京では小学生でも持ってると言われた時のショックは未だに尾を引いている。


「雪子、おはよう」


 言いながら雪子の隣に腰をおろす。


「ん、おはよ」


 雪子もスマホをカバンにしまうと、こちらに顔を向けた。


「今日晴れて良かったねぇ、予報では曇りだったから心配してたんだけど」


「少しは曇って欲しいよ、暑すぎ」


 雪子はそう言ってうんざりとした顔でそとを眺めた。


 窓の外では青々とした稲が太陽の光を受けて、キラキラと輝いている。


「それで、今日はどこに行くの?」


「んー、いつも通り2〜3件回って、お茶してって感じかな」


「新しいの何か入ったの?」


「へへ、これみてみ」


 雪子はスマホの画面を見ててくる。

 画面には服を着た女性が映っている。


「これ、このスカート欲しいんだよね」


 目的の駅まであと1時間と少し。

 その間、2人の会話が途切れることはない

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